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幼馴染みと大陸横断鉄道  作者: ルト
第3章
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第34話 南大陸の大鏡

「ビートくん、起きて起きて!」

「んー……もうちょっと寝かせて」

「大変よ、大変!」


 ライラがしつこく起こそうとしてきた。オレはもう少し寝たかったが、根負(ねま)けしてベッドから起き上がった。

 ブラインドがいつの間にか上げられ、外が見えている。

 どういうわけか、外は一面真っ青だ。


「外を見て!」

「外がどうし……うわっ!?」


 オレの眠気は、一気に吹き飛んだ。


 アークティク・ターン号が、水の上を走っていた。車輪(しやりん)が水面を切りながら、どこまでも広がる水面の上を走り抜けていく。

 水面(すいめん)には列車が起こす波以外の波はなく、空に浮かぶ雲が鏡のように(うつ)っていた。


「な、なんだこりゃあ!?」

「すごくきれいね!」


 驚くオレと、絶景(ぜつけい)に感動するライラ。

 オレは個室を出て、通路の窓からも外を眺めた。全く同じ光景が、どこまでも広がっている。

 こんな光景を見たのは、初めてだった。

 水の上を走るアークティク・ターン号。

 南大陸(みなみたいりく)に、こんな場所があったなんて……。




「すごいですよね。綺麗(きれい)な南大陸の大鏡(おおかがみ)が出現しました」


 景色に夢中(むちゆう)になっていると、聞き覚えのある声がした。

 振り向くと、ブルカニロ車掌(しやしよう)がいた。


「お客さん、ラッキーですよ」

「何がですか?」

「先日の大雨で、南大陸の大鏡が出現する条件が整ったんです。これは大陸横断(たいりくおうだん)鉄道(てつどう)に乗っていても、滅多(めつた)に見られない光景ですよ」


 ブルカニロ車掌も、外の景色を見た。


「ここら一帯は、(たい)らで水がたまりやすい土で(おお)われているので、雨が降るとこのように冠水(かんすい)してしまうんです。もちろん、列車の走行に支障(ししよう)はありません。列車がこの地域(エリア)を抜けるまで、この光景は広がっているはずです。今のうちに、目に焼き付けておくことをオススメします」


 そう云うと、ブルカニロ車掌は去って行った。

 辺りを見回すと、他の乗客も、この南大陸の大鏡に夢中になっている。

 確かに、こんな光景を見られる機会はそうそう滅多(めつた)にないだろう。


「うわぁー。こっちもすごいわね! まるで空を飛んでいるみたい!」


 ライラが目を輝かせながら、窓の外を見る。


「こんな絶景が見れるとは、思わなかったな」

「できることなら、1度列車から降りて、水面に立ってみたい!」

「ライラは美人だから、絵になりそうだな」


 オレがそう云うと、ライラは尻尾(しつぽ)を振りながら「えへへ……」と顔を(あか)くした。


「次の駅は――」


 そのとき、ブルカニロ車掌が戻って来た。


「まもなく、ソルトレイクです。臨時停車(りんじていしや)となります。出発は4時間後ですので、お気を付け下さい」

「臨時停車ですか!?」

「ええ。南大陸の大鏡はめったに見られるものじゃありませんので、この先のソルトレイクという小さな町に臨時停車することになりました。4時間停車しますので、心行くまで南大陸の大鏡をお楽しみください」


 オレとライラにそう云うと、ブルカニロ車掌は去って行った。

 臨時停車なんて、初めてのことだ。

 しかし、小さい街に、この120両もある大陸横断鉄道が停車できるのか?

 オレは少し不安に思いながら、列車に揺られながらソルトレイクへと向かって行った。




 ソルトレイクは、水上の街だった。

 南大陸の大鏡がある場所は、低地であるため、地面に建物を立ててしまうと、雨が降った時に水没してしまうらしい。限られたスペースを効率的に使って、人々は生活を営んでいる。

 駅にアークティク・ターン号の車両全てが停車できるスペースなどあるはずがなく、一部の車両しかホームに入ることができなかった。

 幸運なことに、オレとライラが乗った2等車がホームに入ったところで、アークティク・ターン号が停車した。


「少し降りてみようか」

「うん!」


 オレとライラは、ホームに降り立ち、改札を抜けてソルトレイクに降り立った。


「わぁ、綺麗(きれい)……」


 ライラが云う。建物(たてもの)(かべ)が白、屋根(やね)が青で統一(とういつ)されていて、足場(あしば)となる歩道は白い石で作られている。

 絵にかいたような街並みと、背景に広がる南大陸の大鏡に、オレは別世界に来てしまったのではないかと錯覚(さつかく)しそうになった。


「こんな場所があったなんて、知らなかったな」

「ビートくん、わたし南大陸の大鏡に()りてみたい!」


 ライラは、どうしても南大陸の大鏡に降りてみたいらしい。


「でも、降りている人っているか?」


 辺りを見回してみるが、南大陸の水鏡に降りている人は見当(みあ)たらない。

 もしかしたら、降りてはいけないのかもしれないな。


「そういえば、見当たらないね……」


 ライラもそのことに気づいたらしく、辺りを見回して南大陸の大鏡に降りている人を探す。


「もしかしたら、降りることはできないのかもしれないな」

「そんなぁ……せっかくの機会だから、降りてみたかったのに」


 ライラは残念そうに、獣耳(けものみみ)と尻尾を力なく下げる。

 オレも正直、残念に思った。

 ライラが南大陸の大鏡に降りれば、絶対に絵になるはずなのに。


「大丈夫よ。大鏡に降りたいのなら、私が手伝(てつだ)うわ」


 突然、オレたちの背後(はいご)で女性の声がした。

 オレたちが振り返ると、そこには青い髪の人族の女性が立っていた。


「あなたは?」

「私は、大鏡の魔女(まじよ)よ」


 青い髪の女性は、そう云った。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘等お待ちしております!

次回更新は5月21日21時更新予定です!



600アクセス突破しました!

読んでいただいた皆様、ありがとうございます!

まだまだ続きますので、今後ともどうぞよろしくお願いします!!

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