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幼馴染みと大陸横断鉄道  作者: ルト
第3章
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第30話 ヴァルツ出発

 オレとライラは、城壁のすぐ近くを歩いていた。

 ヴァルツの城壁は、列車からも迫力(はくりよく)のある姿を見せていたが、近くまで来るとさらにすごい迫力があった。50メートルはある城壁が見下ろしてくる。


「すごいな……」


 オレは城壁を見上げて、(つぶや)く。

 ヴァルツ(きよう)は、とんでもない資金を持っていたらしい。しかもこれが居城(きよじよう)の一部だったとは――。

 普通なら、税金の無駄遣(むだづか)いと(ののし)られそうだが、ヴァルツ卿の亡き後は、街を守るための城壁としての役割を果たしている。さらに観光名所としても有名だ。ヴァルツ卿の名前を街の名前にして、永遠に功績を残そうと人々が決めたほどだ。よほど人望があったのだろう。


「近くで見ると、迫力あるわね」

「これなら、巨人族(きよじんぞく)が来ても大丈夫そうだな」

「ビートくんったら、南大陸に巨人族はいないわよ」


 ライラがころころと笑う。

 それにつられたのか、オレも自然と笑みがこぼれた。



 オレとライラは、午後になると多めにドライソーセージを購入した。

 ライラの希望で旅の間、少しずつ食べる予定だ。


「少し買いすぎちゃったかしら?」

「大丈夫じゃないかな。ドライソーセージは、長持ちするからな」


 オレとライラは、ドライソーセージを2等車の個室に運び込む。


「携帯食料もあるし、これで夜食(やしよく)には困らないわね」

「そんなに夜食を食べることって、あるかな?」

「あるじゃない。遅くまで、起きていた時とか……」


 ライラはそう云って、顔を(あか)くする。

 考えていることがすぐにわかり、オレも顔を紅くする。

 もしかしたら、今夜は眠れなくなるかもしれない……。



 夕方(ゆうがた)5時になった。

 汽笛(きてき)がヴァルツの駅に(とどろ)き、アークティク・ターン号がゆっくりと動き出す。3等車には入れ替わった乗客が乗り、貨物車の荷物も一部が入れ替わる。

 城壁を出ていくアークティク・ターン号を、駅のホームから見ている男がいた。


「……次の停車駅で、必ず会おう。ビート」


 ロングコートに身を包んだ男は、アークティク・ターン号が走り去ると、歩き出した。



「……はっ!?」


 オレは嫌な予感がして、目を覚ます。

 時計に目をやると、眠り始めてからあまり時間が経っていない。

 たまにどういうわけか、こうして目が覚めてしまう。


「ん……ビートくん?」


 隣で眠っていたライラが、目を覚ました。


「ごめん、起こしちゃった?」

「もしかして、眠れないの?」

「なぜか……目が覚めたんだ」


 するとライラが、白い肌を布団(ふとん)からさらけ出した。


「大丈夫? ビートくんが望むなら、今からでも私――」

「ありがとうライラ。でも、大丈夫だよ」


 ライラも疲れているはずだ。

 オレはそっとライラの肌に手を()わせる。

 そしてそのまま横になった。


「もう1回横になれば、今度は朝までぐっすり眠れるよ」

「じゃあ、これでどう?」


 するとライラが抱き着いてきた。

 オレの身体(からだ)にライラの胸や太ももが、直接(ちよくせつ)包み込むように()れてくる。


「あぅう……」


 オレは顔を真っ赤にして、声を()らす。

 これじゃあ、逆に眠れなくなりそうだ。

 しかし、嫌な予感は消えて行った。


 いつしかオレは、ライラに抱き着かれながら深い眠りへと落ちて行った。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘等お待ちしております!

次回更新は5月17日21時更新予定です!

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