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幼馴染みと大陸横断鉄道  作者: ルト
第1章
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第2話 居残り授業

 テストの結果、ライラは見事(みごと)に居残り授業となった。

 そして、オレも居残りさせられている。


 オレはテストの結果、平均点(へいきんてん)を上回っていた。

 それなのに、なぜ居残りになってしまったのか。

 全ては、ハズク先生の一声だった。


「ビートくんは、ライラちゃんの勉強を見てあげてくださいね。幼馴染(おさななじ)みですから」


 それだけ云って、ハズク先生は教室を出て行った。


「うう……ゴメンね、わたしのせいで……」


 ライラが、申し訳なさそうに謝る。

 しかし、オレはそこで怒ったりするほど、心が(せま)い人間ではない。


「早く終わらせて、談話室(だんわしつ)に行こうよ。消灯(しようとう)までの遊び時間も、少なくなっちゃうよ」

「うん……」

大丈夫(だいじようぶ)だって、ライラならできるから」


 オレはそう励まして、ライラの居残りに付き合う。

 ライラは、計算が苦手だ。

 足し算はまだいいが、引き算でさえ間違(まちが)うことがある。

 オレは割り算までちゃんとできるのに……。



 最初、居残りをしている子どもたちは、オレとライラの(ほか)に10人ほどいた。

 しかし、1人、また1人……と順番に居残りを終えて教室を出て行き、最後に残ったのは、オレとライラだけになった。

 その頃には、夕陽が教室の中に()()むようになっていた。


 今、何時(なんじ)だろうか。

 オレはふと、時計を見た。

 もう夕方の5時に近い。

 そしてようやく、ライラの居残りが終わった。


「うぅ……ゴメンね、ビートくん」


 ライラが、涙声(なみだごえ)(あやま)る。


「こんな時間まで……遊びたかったかもしれないのに」

「いやそんな……謝られても困るよ」


 オレはそう云って、ライラの頭に手を置いた。


「ライラは十分(じゆうぶん)頑張って、ちゃんと分からなかったところを理解した。オレが居残りに(ささ)げた時間は、無駄じゃなかったってことだ」


 オレは優しく、ライラの頭を()でる。

 実はこれ、オレのちょっとした楽しみの1つだ。

 ライラの髪の毛は(さわ)心地(ごこち)がよく、()でているとライラは決まって嬉しそうな表情(ひようじよう)を見せてくれる。


「……ありがとう。ビートくん」


 ライラは、もう涙声じゃなくなっていた。


「さ、そろそろ夕食の時間だな」

「今日の夕食、気になるね」


 オレはライラと一緒に、まずは談話室に向かい、そこから食堂へと向かった。



 消灯の時間になると、オレはベッドにもぐりこんだ。


「よっこいせっと……」


 オレがベッドに入ると同時に、孤児院を手伝っているオバちゃんが部屋の灯りを消していく。

 薄い掛布団(かけぶとん)をかぶり、オレはゆっくりとため息をつく。


「明日もテストがあるんだっけ。また居残りさせられるかもなぁ……」


 オレはそう云って、慌てて口を(ふさ)ぐ。

 確かこういうのって、フラグっていうんじゃなかったっけ?


 フラグが立っていないことを祈り続けるうちに、オレは深い眠りへと落ちて行った。



 翌日。

 オレはフラグを立ててしまったことを、後悔(こうかい)していた。


「ビートくんは、ライラちゃんの勉強を見てあげてくださいね。幼馴染みですから」


 昨日も聞いたぞ、そのセリフ!

 オレは教室を去っていくハズク先生を、軽くにらんだ。


「うう……ゴメンね、わたしのせいで……」


 ライラが、申し訳なさそうに謝る。

 そのセリフも、昨日聞いた。


「早く終わらせて、談話室に行こうよ。消灯までの遊び時間も、少なくなっちゃうよ」


 オレも、昨日と全く同じ言葉を口に出す。

 なにこのデジャブ……。


 オレはその日も、ライラができるようになるまで、居残りに付き合うことになった。



 しかし、この日の居残りは、少し違った。


「終わったよー!」


 ライラがそう云った時、オレは時計を見て、目を見張(みは)った。


 時計の針が、1時間しか進んでいない!

 昨日は夕方までかかったのに、今日は1時間しかかかっていない。


「うぅ……ゴメンね、ビートくん。2日連続で、居残りになっちゃって……」

「すごいぞ! ライラ!」


 オレはライラを()める。

 ライラは何が起きたのか分からず、首をかしげていた。


「昨日は夕方まで掛かったのに、今日は1時間で終わらせた!」

「それが、どうかしたの……?」


 ライラが()くと、オレはライラの頭に手を置き、ライラを撫でる。


大幅(おおはば)な時間短縮だ。ライラはやっぱり、やればできるんだ!」


 オレから()められてうれしかったのか、ライラは笑顔を見せた。


「ありがとう……ビートくん」


 ライラはそっと、(つぶや)くようにお礼を口にした。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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