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幼馴染みと大陸横断鉄道  作者: ルト
エピローグ
211/214

第209話 ハズク先生への手紙(2)

 親愛なるわたしたちの恩師、ハズク先生。


 わたしの両親は、北大陸の奥地にある銀狼族の村に暮らしていました。

 両親と再会できて、わたしの幼いころからの夢が叶いました。

 すべて、銀狼族のことを教えてくれたハズク先生と、わたしをお嫁さんとして迎え入れてくれたビートくんのおかげです。

 ハズク先生、本当にありがとうございました。


 銀狼族の村に到着してから、わたしはすぐに両親と再会することができました。

 わたしの両親が、どうしてわたしをグレーザー孤児院の前に置き去りにしていったのか。

 その理由も、知ることができました。


 わたしの両親は、かつて西大陸にあったトキオ国という国で、ミーケッド国王とコーゴー女王に仕えていました。

 驚いたことに、ビートくんのお父さんとお母さんは、トキオ国のミーケッド国王とコーゴー女王だったのです!

 そしてトキオ国に滞在していたその時に、わたしを産んだそうです。

 しかし、その後トキオ国がアダムという奴隷商人が率いる軍隊によって滅ぼされてしまいました。わたしの両親は、幼いわたしとビートくんを連れ、ミーケッド国王とコーゴー女王の手助けでグレーザーまで逃げ延びてきました。そしてやむを得ず、わたしをグレーザー孤児院の前に置き去りにし、ビートくんはアークティク・ターン号の貨物車に置いていったと聞きました。


 でも、わたしは両親を恨んではいません。

 ハズク先生のおかげで、わたしは今、こうして生きていられます。

 そして何より、ビートくんと出会えました!

 わたしにとって、それは何物にも代えがたいことです。


 それからしばらくは、銀狼族の村でビートくんと平和な日々を過ごしました。

 でも、アダムがやってきてしまいました。


 アダムは、銀狼族を狙ってきたそうです。

 銀狼族が、全員奴隷にされてしまうかもしれない。そんな状況に、ビートくんは立ち上がって、わたしと銀狼族を守るために戦ってくれました。


 ビートくんは、これまでに出会った人に応援を頼んで、駆けつけてくれた人にAK-47という強力な銃を配り、廃墟の街ノワールグラードでアダムと戦いました。

 お父さんを始めとした銀狼族の連絡員(銀狼族の生活を支えるために働いている銀狼族です)が劣勢になっていたところに駆けつけて、駆けつけてくれた人たちと共にアダムの部下を倒していきました。

 わたしはビートくんによって、安全な場所で眠らされていたので、それを知ったのはノワールグラードの戦いが終わってからでした。


 ビートくんはアダムを倒してくれましたが、そのときに、重傷を負ってしまいました。

 そのときのことは、今思い出しても辛いです。


 もう死んでしまったのではないかと思ってしまうほど、ビートくんはひどい有様になってしまいました。

 全身が血まみれで、息もしていないとそのときは思いました。

 わたしはこれまでの人生で一番泣いたと思います。

 わたしもこのまま死んで、ビートくんと一緒にあの世に行こうと思ってしまったりしました。


 でも、その必要はありませんでした。

 ビートくんは、生きていたのです。

 ビートくんは、こう言ってくれました。


『決してライラを1人残して、どこかに行ったりしません。なぜならライラは、かけがえのない最愛の女性だからです』


 わたしは本当に、ビートくんと結婚できて良かったと、心の底から思いました。

 嬉しくてたまらなくなり、ついビートくんを強く抱きしめたりしました。


 ビートくんは緊急治療をお医者さんから施してもらい、一命をとりとめました。

 お医者さんからは「生きているのが不思議なくらいだ」と、何度も云われていました。


 わたしは重傷を負って血が足りなくなったビートくんに、自分の血を差し出して支えました。

 そのおかげか、ビートくんは完全に回復して、元気になってくれました。

 グレーザー孤児院での強盗事件のときも、わたしを救ってくれたビートくんは、今回もわたしを救ってくれました。

 ビートくんは、わたしのヒーローです。


 それから、わたしの両親もビートくんを認めてくれました。

 わたしの両親は最初、わたしがビートくんと結婚したことに、あまりいい気持ちを抱いていませんでした。でも、今ではビートくんをわたしと同じように受け入れてくれます。

 わたしは、それがすごく嬉しいです。


 そして、ハズク先生にご報告があります。

 わたしは、ビートくんと結婚式を挙げました。


 ハズク先生を立会人に迎えて、ビートくんと婚姻のネックレスを交換するのは、すでにグレーザーを旅立つ前にしていました。

 でも、結婚式を挙げたのはこれが最初で最後です。


 実はわたし、ずっとウェディングドレスを着るのが夢でした。

 幼いころに読んだ絵本や、グレーザーに居たころに結婚式のパレードで見た、ウェディングドレス姿の花嫁さん。とても幸せそうなその姿に、わたしはずっと憧れを抱いていました。

 わたしもいつか、あんな素敵なウェディングドレスを着て祝福されたい。

 ビートくんにも話したことが無かった、わたしのひそかな夢でした。


 でも、ウェディングドレスはとても高いものです。わたしの両親を探すために、一緒に頑張ってくれたビートくんに、そんな高いものをおねだりすることなんて、わたしにはできませんでした。

 だから、ウェディングドレスを着ることはきっと無いと、諦めていたのです。


 でも、その夢も叶えることができました。

 ビートくんと銀狼族の村で挙げた結婚式で、わたしはついにウェディングドレスを着ることができました!


 純白のウェディングドレス姿は、わたしが云うのもどうかとは思いますが、すごく神々しいものだったと思います。

 ビートくんも、その姿に見とれていました。

 いえ、ビートくんだけではありません。結婚式に来た招待客の人全員が、わたしに見とれていました。

 ハズク先生にも、その姿をお見せしたかったです。


 なので、写真を同封して送ります。

 わたしとビートくんの、晴れの舞台を映した写真です。


 わたしは、世界で一番幸せな女性です。

 ビートくんと結婚できて、一緒に暮らしています。両親と再会もでき、ウェディングドレスも着ることができました。

 今度は、ビートくんの子供を産みたいです。


 またいつか、グレーザーに行ったら、グレーザー孤児院を訪ねたいです。

 そのときはハズク先生にも会いたいと思います。


 ハズク先生、お体に気を付けて、日々を過ごしてください。

 それでは、またいつかお会いできる日まで。


 ライラより

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘、評価等お待ちしております!

次回更新は12月22日21時更新予定です!

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