第204話 再び銀狼族の村へ
オレはライラと、ライラの両親と共に銀狼族の村へと戻って来た。
オレたちが戻って来ると同時に、村にいた銀狼族の目の色が変わった。
「……も、戻って来た!」
「俺たちのヒーローが、帰ってきた!!」
「ビート兄ちゃんだー!」
「あの若人が、元気になって返ってきたわよ!」
銀狼族の老若男女が、一斉にオレたちへ向かって駆けだす。
そしてあっという間に、オレたちは銀狼族に囲まれた。
「皆の者、わしに代表して、勇者にお礼を云わせておくれ」
聞き覚えのある声が聞こえ、オレたちを取り囲んでいた銀狼族が一斉に道を開ける。
アルゲンだった。
「わしら銀狼族を命がけで救ってくれたこと、感謝してもしきれるものではないが、お礼の言葉を伝えたい!」
そう云うと、アルゲンはオレに向かって、五体投地をした。
突然、五体投地をされたオレは驚いたが、それを見ていた他の銀狼族もかなり驚いていた。
「銀狼族を守り抜いてくれて、本当にありがとうございました!!」
どこからそんな声が出せるのかと思うほどの声量で、アルゲンがお礼の言葉を叫ぶ。
「「「「「本当にありがとうございました!!!!!」」」」」
大慌てで、周りにいた銀狼族たちがアルゲンに続いてお礼の言葉を叫ぶ。
オレはどうしていいか分からず、戸惑うことしかできない。
「え……えと……あの……その……」
「勇者ビートよ! わしら銀狼族は、ビートという勇者の名を永遠に忘れはしない!」
アルゲンが再び叫ぶ。
嫌というほど、称賛されていることだけはよく分かった。
「あの……アルゲンさん……」
オレは戸惑いつつも、アルゲンに声をかける。
「とりあえず……顔を上げてください。それに、立ってください」
五体投地をしたままでは、対応がしにくい。
オレの言葉に、アルゲンはすぐに立ち上がった。
「オレ、久々に仲間たちに会いたいんですが……」
「はいっ! すぐにお連れ致します!!」
「えっ……わっ!? ちょっと!!」
オレは突然アルゲンに手を取られ、歩き出す。
「あっ、待ってよ!」
ライラがすぐに片方の手を掴んできて、オレと共に歩き出す。
「おっ、ビート!」
「ビートが戻ってきたぞ!!」
オレがアルゲンに連れてこられた先にあったログハウスでは、共に戦った仲間たちが休んでいた。
ログハウスは大きく、空き家になっていた場所を提供したことをアルゲンから聞かされた。
「みんな!」
「ビート、よく元気になって帰ってきたな!」
スパナが、オレを見て目を丸くしていた。
「あんなに血を流していたから、もう助からないだろうと……みんなが」
そこまで云って、スパナは涙声になる。
「……すっげぇ、心配してたんだからな!!」
「スパナ……」
スパナはオレの目の前で、ポロポロと大粒の涙を流していく。
すると、それまでオレを見ていた仲間たちが、一斉にオレに駆け寄ってきた。
「ビート!」
「ビートくん!」
「ビート氏!」
オレは老若男女に囲まれる。みんながみんな、オレを見て安心した表情になっていく。
「無事でよかったです。本当に……」
「ビート氏よ、ライラ婦人をこれ以上悲しませてはならんぞ!」
「ビートさん、一時はどうなるかと思いました」
グレイシアやナッツ氏、カラビナがオレにそう云ってくる。
「……それで、これからどうしようか?」
「そんなこと、決まっているわよ!」
オレの問いに、グレイシアが答えた。
「この村で、アダムに勝利したことを祝う祝賀パーティーを行うのよ!」
グレイシアの言葉に、ライラが頷いた。
「いいと思うわ! わたしたち銀狼族のために戦ってくれたから、何か恩返ししたい!」
「銀狼族は、受けた恩は必ず返す種族なの。長老も、祝賀パーティーを開く気でいると思うわ」
「それは、ありがたいけどさ……」
ダイスが、口を開いた。
「本当にいいのか? 負担になったりしないのか?」
「全然! こういうときだからこそ、パーッといかなきゃ!」
グレイシアはそう云うと「長老に相談してくる!」とログハウスを飛び出していった。
「……忙しいな、グレイシアは」
オレがそうつぶやいて横を見ると、そこにいたはずのライラがいなくなっていた。
辺りを見回してライラを探すと、ライラはカップにショコラトルを淹れて、ログハウスの中にいる仲間たちに配っていた。
「みなさん、ありがとうございました!」
ライラはそう労いの言葉をかけながら、ショコラトルを配っていく。
感謝に満ちたライラから笑顔を向けられると、男女関係なく表情を紅くしていく。
やっぱりライラは、最高だ。
オレがライラを見つめていると、ライラはオレにもショコラトルを手渡してきた。
「ビートくんの分!」
「あっ、ありがとう」
オレは受け取り、ショコラトルを飲む。
甘いショコラトルが身体に流れ込んできて、疲れを取り除いてくれるような感じがした。
仲間たちとショコラトルを楽しんだ後、オレとライラはログハウスを出た。
「お父さんとお母さんが呼んでるって、何があったのかしら!?」
「とにかく、行ってみないと分からないな」
オレとライラは、戻ってきたグレイシアから、シャインとシルヴィがオレたちを呼んでいると伝えられた。
何か、オレたちに話したいことがあるらしい。
オレたちには、何の心当たりも無かった。
話したいと云うことは、何だろう?
「もしかして、また……!」
「ライラ、それはあり得ないよ」
オレはライラを見て云う。
「ライラのお父さんとお母さんが、オレが病院から出てきたときに云っていた言葉を思い出して。絶対に、別れてほしいとは云わないはず」
「ビートくん……」
「大丈夫。ライラ、信じようよ」
「……うん!」
ライラの表情から、心配の色が消える。
オレはそっと、ライラの手を取った。
そうだ。きっと、大丈夫。
そしてオレとライラは、シャインとシルヴィが待つログハウスへと、辿り着いた。
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