第198話 神との対決
「そんな……!」
オレは破壊されたRPKを見て愕然とする。
AK47と同じ威力を持つ、オレの主力武器のRPKが破壊されてしまった。
これでもう、オレはRPKを使えなくなってしまった。
RPKが役に立たなくなった。
こうなったら、他の武器を使うしかない。
オレは痛みを堪えながら立ち上がり、壊れたRPKを捨てる。
そしてナイフを取り出した。
「まだ、オレにはナイフがあるんだ!」
「ほう……!」
それを見たアダムが、感心したように口を開いた。
「食らえっ!」
オレはアダムにナイフを振りかざす。
当然、かわされてしまった。
「このナイフの持ち方! そしてこのナイフの使い方!」
「それが、どうかしたかよ!!」
オレは再びナイフを振りかざすが、避けられた。
「まさしく、ミーケッド国王そのものだ! しかし、ミーケッド国王の方が、実力は上だったな!」
「!?」
オレはその言葉に驚き、目を見張った。
もしかしたらこいつは、ミーケッド国王のことを知っているのか!?
だとしたら、アダムとは本当に何者なんだ!?
「トキオ国……? どうしてお前が、トキオ国のことを知っているんだ!? 答えろ!!」
「……本当は教える義理など無いが……まぁいい。これも冥途の土産に教えてやる」
アダムはニヤリと笑うと、口を開いた。
「トキオ国を滅ぼしたのは……この私と導きの使徒だ」
「……!!」
アダムの言葉に、オレは耳を疑った。
「今からもう15年以上も前だ。私は導きの使徒を率い、黒い銃で武装してトキオ国を襲撃した。そして滅ぼしたのだ!」
「トキオ国を襲撃した謎の軍隊っていうのは……もしかして!」
「いかにも、導きの使徒のことだ」
アダムの答えは、オレが予想した通りのものだった。
「どうして、トキオ国を滅ぼしたんだ!?」
「……私の正体を、知ってしまったからだ。そして私を滅ぼそうと、ミーケッド国王はトキオ国の民と共に準備をしていたからだ。私の崇高な目的を邪魔するものは、誰であろうと放っておくわけにはいかんのだ」
「お前の正体……?」
「前にも云っただろう? 私は古より神と呼ばれてきた存在だ。その神を滅ぼそうとし、抗う者には死をもって償ってもらわないといけない。全ての人族と獣人族を支配するために、最も邪魔な存在だったのが、ミーケッド国王とコーゴー女王、そしてトキオ国だったのだ」
「ミーケッド国王とコーゴー女王を殺害したのも……お前なのか!?」
「いかにもだよ、ビート王子」
オレがミーケッド国王とコーゴー女王の子供だということも、こいつは知っていたのか!
親の仇が、目の前にいるなんて!
オレは強い衝動を抑えながら、アダムの話を聴き続ける。
「お前の父親と母親は、最後の最後まで国と民を守ろうとして抵抗してくれたよ。あそこまで強固なまでに抵抗されるとは思わなかったから、正直ちょっと驚いたがな。それに、まだ赤ん坊だったお前を銀狼族の男女に託して逃したのも、想定外だった。しかし、最後はあっけなかったものだ」
アダムは再び、いやらしい笑みを浮かべた。
「強固な抵抗をしてくれたことに敬意を示して、私自ら直々にミーケッド国王とコーゴー女王を始末したよ。最後はトキオ国と共に瓦礫の山の中へと消えていった。そしてお前も両親に似て、強固なまでに抵抗する意思があるみたいだな」
「お前が……よくもオレの父さんと母さんを……!」
こいつのせいで、オレは孤児になってしまった。
そして両親の顔を知らないまま、オレは育った。
「そしてビート王子、お前がトキオ国の最後の生き残りだ。お前を殺せば、もう私に対して抵抗する者はいなくなる。銀狼族を奴隷にすることも、もう誰にも止められない。私の崇高なる目的への第一歩が、これから始まるのだ!」
オレの中では、怒りがマグマのように湧き上がっていた。
もうこれ以上、オレはオレを抑えることができない。
アダム、お前だけは絶対に、生かしてはおけない!!
オレの両親を殺し、オレの祖国を滅ぼし、オレを身寄りのない孤児にしたこと。
そしてオレの妻で最愛の女性のライラと、銀狼族を奴隷として自らの理想のために利用しようと企てていること。
オレは絶対に許さない!
「お前だけは……」
「どうした?」
「お前だけは……絶対に許さない!」
オレはナイフを構え直す。
「誰が何と云おうと、絶対に許さない! 許さない!!」
「この私を殺す気なのか。面白い」
「両親の仇だ!」
オレはナイフを手に、アダムへと突撃した。
しかしすぐにアダムにはかわされ、ナイフの刃は宙を切った。
「なかなかのナイフ捌きじゃないか! さぞかしミーケッド国王もお喜びだろうな!」
「うるさい!」
オレは叫び、再びナイフを振りかざす。
結果は同じだった。
オレは怒りに駆られて、とにかくアダムを殺そうという考えに支配されていた。
アダムを殺そうとオレがナイフを振りかざし、それをアダムが余裕な表情で避ける。
そんな硬直状態が、1時間ほど続いただろうか。
「くっそう!」
オレはナイフをしまった。
このままじゃ、埒が明かない。
「おや? もう終わりか?」
アダムがそう云うが、そんなことはない。
オレは足元に落ちていた、黒い銃を拾い上げる。
「ほう、武器を切り替えたのか。確かにそれなら、ナイフよりも勝率は上がるな」
バカにしたようなアダムの言葉を無視し、オレは黒い銃の引き金を引いた。
RPKよりも強力な反動に、オレは驚いたがすぐに慣れた。
弾丸が切れるまで、オレは黒い銃を撃ち続け、全ての弾丸をアダムの身体にぶち込んでいった。
「……やったか?」
黒い銃の弾丸が無くなり、オレは黒い銃を捨てる。替えの弾倉は、見つからなかったからだ。
「……云っただろう?」
全ての弾丸を受けたアダムは、ゆっくりと顔を上げて、オレを見つめる。
「私は神だと。その程度のものでは……」
「!?」
「殺せぬのだぁ!!」
アダムが叫ぶと同時に、撃ちこまれていたはずの弾丸が、飛び散った。
弾丸はすべて地面に落ちていき、金属音を立てる。
「ば、化け物だ!!」
オレは叫ぶ。
「こいつは本物の、化け物だ!!」
「私は神だ。こんな程度のもので殺すことなど、できるわけがない!」
オレは再び、辺りを見回して銃を探す。
しかし、転がっているのは弾が切れた黒い銃しか見当たらなかった。
絶体絶命だった。
「こうなったら……!」
オレは再び、ナイフを取り出す。
「甘いぞ!」
しかしオレがナイフを取り出すと同時に、アダムがオレの手からナイフを奪った。
「都合のいい展開など、存在しないのだ!!」
「!!」
バキン!
アダムは素手で、オレのナイフをへし折ってしまった。
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