第19話 15歳の誕生日
ライラの両親を探すための旅費が、目標金額まで貯まる少し前の事――。
オレとライラは、キャンドルに火を灯した。
机の上にはキャンドルの他、わずかながらいつもより豪華な料理を並べてある。
そのほとんどは、夕市で安くなっていたものを買って来たものだ。
「ライラ」
「ビートくん」
「「お誕生日、おめでとう!」」
オレとライラは同時にお互いの誕生日を祝い、ジュースが入ったグラスを打ち鳴らす。
実はオレとライラは、自分たちの誕生日がいつなのか、正確な月日は知らない。
知っているのは、オレたちは同じ月の同じ日にグレーザー孤児院に引き取られ、同じ12歳で卒業したことだ。
孤児院にいた頃から、毎月ささやかながら誕生日パーティはやっていた。孤児院は子どもの数がそこそこいるため、1人1人誕生日パーティをやるわけにはいかない。
だから毎月、同じ月に生まれた子どもの誕生日パーティを、まとめてやっていた。
孤児院を卒業した今も、オレとライラはその時の名残で、引き取られた孤児院に引き取られた日を2人の誕生日とみなして、2人だけで誕生日パーティを行っている。
ジュースを飲み干し、オレたちはキャンドルの灯りの中で笑い合う。
「もう孤児院を卒業してから、3年が経ったのね」
「ということは、オレたちはもう15歳か」
「一応、1人前と認められる年齢になったということね」
ライラが自らのグラスにジュースを注ぎ、オレのグラスにも注いでくれる。
「ありがとう。……1度、グレーザー孤児院に顔を出してみてもいいかもしれないな」
「ビートくん、孤児院が恋しくなったの?」
「いや、ただハズク先生に、15歳になって元気にやってるってこと、報告しておきたいなと思ってさ」
グレーザー孤児院を卒業してから、オレたちは1度もハズク先生と再会していない。
今までライラの両親を探すための旅費を稼ぐために、クエストを請け負って報酬を稼ぐことに精いっぱいになってきた。
ちゃんと自立して生活して、オレたちは15歳になりました。
そのことを、お世話になったハズク先生にちゃんと知らせておきたいと思っていた。
「ハズク先生にはお世話になったし……」
オレの言葉に、ライラは頷いた。
「そうね。わたしもハズク先生のおかげで、グレーザー孤児院に迎え入れられて、ビートくんと出会えた。ハズク先生がいなかったら、わたしはきっと今頃死んでいたかもしれない」
「オレたちにとって、ハズク先生は育ての親だな」
「ビートくんの考えに賛成! 1度、ハズク先生に会って報告したいわ!」
「じゃあ、旅費が貯まってアークティク・ターン号でグレーザーを旅立つ前に、1度会いに行こうか」
オレはそう云って、ジュースを飲んだ。
オレとライラは、少し冷えかけた料理を口に運んだ。
少し温かさは無くなっているが、料理としての出来は一級品だ。
どれも問題なく美味しい。
ついつい、食が進んでしまう。
なお、オレとライラがジュースしか飲んでいないのは、お酒が禁じられているわけではない。
オレとライラは、酒に弱い。
前に1度だけ、買ってみて飲んだことがあった。とても美味しかったのだが、オレとライラは共にダウンしてしまい、翌日は激しい頭痛に悩まされ、結局その日はクエストをキャンセルしなければならなくなってしまった。
どうやらオレたちは、お酒にあまり強くないらしい。
それ以降、お酒には手を出さないようにしている。
「ビートくん、このお肉美味しいよ!」
ライラがローストビーフを頬張りながら、嬉しそうな表情を見せる。
「どれどれ、俺も一口……」
オレもローストビーフを取り、口に運ぶ。
うん、確かに美味しい。少し冷めているが、全く気にならないほど美味しい!
「うん、美味い!」
ふと見ると、ライラはすでに次の料理へと手を伸ばしていた。
こうしてオレとライラは、ささやかな誕生日パーティを楽しんだ。
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