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幼馴染みと大陸横断鉄道  作者: ルト
第14章
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第197話 ノワールグラード攻防戦~最終決戦~

 敗走を続けるアダムの部下たちと、それを追い詰めようとAK47を撃ち続ける銀狼族。


「こっちへ逃げたぞ!」

「逃してなるものか! 徹底的に追い詰めろ!」


 今や銀狼族たちの中に、怯えた表情をしている者はほとんどいなかった。

 次々に弾丸の餌食となっていくアダムの部下と、奮闘を続けるビートとその仲間たちを見て、自信を取り戻していた。


「助けてくれぇ!」


 対するアダムの部下は、士気も失っていた。

 大半の者が射殺され、残りは傷を負っていて、まともに戦えるものは少なくなっていた。中には恐怖心に支配され、銃を捨てて逃げ出そうとしている者までいる。


「なんていうことだ……」


 そんな部下たちの様子を見つめ、アダムは愕然としていた。

 黒い銃で徹底的に銀狼族を追い詰め、奴隷にするつもりだったが、逆に自分たちが追い詰められる結果になるとは。


 しかし、すぐにアダムは愕然としていた表情を元に戻す。

 こうなることは、ある程度予測はしていた。


「導きの使徒がやられたとしても、この私は殺せないさ!」


 高笑いをするアダム。


「いたぞ! アダムだ!!」


 1人の少年が叫ぶ。

 RPKを手にしたビートが、アダムを見つけたのだった。




 オレはアダムを見つけた直後、周りを確認した。

 護衛についているアダムの部下はいない。今なら、アダムを倒せるかもしれない。


 ここから銃で撃つのは簡単だ。

 しかし、それはできないような気がする。理由は分からなかったが、オレの心に対して、誰かがそう云っているような気がした。


 ならば、直接対決だ!


「いたぞ! アダムだ!!」


 オレは叫び、アダムに向かって駆け寄る。

 そしてアダムの前に躍り出た。


「アダム! 観念しろ! 大人しく降参するんだ!」

「ビートか。お前はよくも、私の大切な導きの使徒たちをここまで破滅に追いやってくれたな……!」


 アダムはそう淡々と話す。

 怒りが込められているとは思えない話し方だ。もしかしたら部下たちのことを、単なる駒くらいにしか見ていないのかもしれない。


 だが、そんなことは今はどうでもいい。

 オレのやることはただ1つだけなのだから。


「今すぐに死にかけの部下を引き連れて、ここを去れ! そして2度と銀狼族に手を出すんじゃない!」


 オレはRPKを手に、要求を告げる。

 可能なら、もうこれ以上血を流すのは避けたかった。いつ仲間が撃たれるか分からないし、後になってこれが尾を引いてどんな結果をもたらすのか分からない。


「残念だが……それはできんな」


 アダムがそう放った言葉に、オレは心を決めた。

 もうこれはどうしようもない。アダムは何が何でも、銀狼族から手を引こうとはしないつもりでいる。覚悟はしていたが、本当にそうなると少し嫌な気分になる。

 だが、もう後戻りはできない。


「ならば、皆殺しにするまでだ!」


 オレはそう宣言し、アダムにRPKの銃口を向ける。


「ほう、結構なものをもっているじゃないか」

「これで最後だ、アダム!」


 オレはRPKの引き金を引き、アダムを弾丸の餌食にしていく。

 アダムは次々にその身にRPKの弾丸を受けていき、吹っ飛ばされた。


 オレはこのとき、確信した。

 もうこれで、アダムは起き上がれないだろう。

 いくらなんでも、殺傷力の高いRPKの弾丸をモロに食らって、生きていられるはずがない。それはアダムの部下たちが証明してくれた。


「……」


 吹っ飛んだアダムを、オレは見下ろす。

 アダムは身体中に弾丸を受けていた。ピクリとも動かない。完全に絶命したと、オレは思った。


「……これで、終わった」


 なんだかあっけない終わり方だったなと、オレは少しパッとしない気分になる。


 だが、何はともあれこれでアダムの野望は潰えた。

 もう銀狼族が、アダムという奴隷商人に狙われることは無くなった。

 アダムほどの奴隷商人は、そうそういるもんじゃない。ましてや、あの吹雪の山をトロッコを使わずに抜けたり、私設軍隊を持っているような奴隷商人などいやしないのだ。


 これで、全て終わった。

 みんなに報告してこよう。


 オレはアダムの死体に背を向け、ゆっくりと歩き出そうとした。


 そのときだった。




「はっはっは~」

「!?」


 背後から聞こえた嫌な笑い声に、オレは振り返る。

 そこには、弾丸を受けて死んだはずのアダムが立ち上がっていた。


 おかしい。あり得ない。どういうことだ!?

 オレは疑問と恐怖に支配され、目を見開く。


「これで死ねると思ったが……またしてもダメだったなぁ……!」

「な!?」


 死んでいない!?

 オレはもう1度、RPKを構えた。

 そして引き金を引き、アダムを撃つ。


「……!!」


 オレは再び、目を見張った。

 今度は倒れるどころか、全ての弾丸をその身に受け、倒れることなく受け止めた。


「どうした小僧!? もうそれまでか?」

「ひいっ!」


 オレはRPKの引き金を引いたが、カチンという金属音がしただけで弾は出なかった。

 弾切れになってしまった!


「もう終わりか? では、こちらからいくぞっ!」

「うわっ!!」


 アダムが、オレに素手で攻撃をしてくる。

 しかし、単なる攻撃などではなかった。


 アダムの腕から、衝撃波のようなものが、放たれたのだ!


 オレは辛うじてそれを避けることができたが、衝撃波を食らったレンガの壁が、ボロボロと崩れ落ちた。

 まともに食らったら、どうなるのか。想像したくもない。


 こいつはヤバい。

 オレは前に、シャインから聞いた言葉を思い出す。


「アダムはきっと人族じゃない。人族でも獣人族でもない。まるで人の生き血をすすって私腹を肥やしているように見えることから、アダムには『ドラキュラ』というあだ名が与えられている」


 弾丸を受けても、死ななかった。

 シャインの云っていたことは、正しかったんだ!


 シャインさん、確かにアダムは人族でも獣人族でもなかったです。

 想像を超越した、何かでした。


 これは逃げるしかない。

 今はなんとかして逃げて距離を取ったほうがいい。

 オレは必死になって体勢を立て直し、逃げようとした。




「ハッハッハ! なかなかうまいダンスじゃないか!」


 逃げるオレを、アダムは挑発してくる。

 そのとき、オレの前にダイスとジムシィが躍り出た。


「ビート!」

「ダイスにジムシィ!」

「ここは俺たちに任せて、ビートは先に!」

「わかった、ありがとう!」


 ダイスとジムシィにお礼を云い、オレは逃げる。

 すぐに2人は、アダムにAK47の銃口を向けて引き金を引いた。


 ドガガガガッ!!

 AK47から弾丸が飛び出し、アダムに向かって飛んでいく。


 しかし、アダムはそれを全てかわしてしまった。


「なっ!?」

「にっ!?」


 弾丸をかわされたことに、ダイスとジムシィは驚く。


「そんなものでは、私は殺せんぞぉっ!」

「うわっ!」

「ぎゃあっ!」


 アダムが繰り出した衝撃波を食らい、吹っ飛ばされるダイスとジムシィ。

 壁に打ちつけられ、その場で気を失う。


 見ると、AK47が破壊されていた。

 銃身が途中で折れて、機関部が露出している。もう使い物にならない。


 オレは必死になって逃げたが、アダムはそれ以上のスピードでオレを追いかけてきた。




「捕まえた!」

「ぐっ!」


 そしてオレは、アダムに捕まった。


「これで、お前も終わり……とはさせないぞ」

「!?」


 アダムの云うことが分からず、オレはアダムの手から逃れようとしてもがく。

 しかし、アダムはオレを放すようなことはしなかった。


「私の部下を殺しまくったその対価を、これから支払ってもらおう」

「はっ、放せっ!」

「放すわけないさ」


 アダムはそう云うと、オレを放り投げた。

 ものすごい力で投げられ、オレはRPKと共に宙を舞った。


 そして廃墟の壁に打ちつけられてしまう。


「ぐぅっ……!」


 オレの身体中に激痛が走る。気を失いそうになったが、気を失ったら命が無くなる!

 そう思ってオレは必死に痛みに耐えた。


 こうなったら、反撃だ。


 オレがそう思ってRPKを構え直そうとしたときだった。

 手元に違和感を覚えたオレは、すぐに自分の手元を見た。


「!?」


 RPKが、無残なまでに破壊されていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘、評価等お待ちしております!

次回更新は12月10日21時更新予定です!

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