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幼馴染みと大陸横断鉄道  作者: ルト
第14章
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第196話 ノワールグラード攻防戦~2~

「ハハハハハハ!!」


 ドガガガガッ!!


 ナッツ氏が高笑いをしながら、AK47でアダムの部下たちを撃っていく。

 近づいて接近戦に持ち込もうとする者に対しては、その鍛え抜かれた筋肉に物を云わせ、まるでチリを払うかのように倒していく。

 それに恐れを感じつつも、追随して戦うダイスとジムシィ。


 これが、あの有名なクラウド茶会のオーナーことナッツ・ミッシェル・クラウド氏なのか?

 想像していたのと、ずいぶんと違うような……。


「若者よ!」


 突然、振り返って声をかけられ、驚くダイスとジムシィ。


「はっ、はいっ!」

「うむ! いい返事だ!」


 ナッツ氏はそう云いながら、AK47の銃底でアダムの部下を殴り殺す。


「気に入ったぞ! 戦いを終えたら、紅茶をご馳走しよう!」

「あ……ありがとうございます……」


 戦場だというのに、どうしてそんなにも余裕でいられるのだろうか。

 こっちは撃たれたらどうしようかと、気が気でないというのに。


「ジムシィ、大物ってすごいな……」

「あぁ、俺もそう思うぜ」


 ダイスの言葉に、ジムシィはそう返事をした。




 オールは自慢の剣を使い、次々にアダムの部下たちを切り捨てていく。接近戦では、圧倒的な破壊力を持つ黒い銃も、全くといっていいほど役に立たなかった。その長い銃身が、接近戦に向いていなかったのだ。さらに槍として使うにしては、長さが足りない。一定の距離が保ててこそ、真価を発揮する武器であるということは、アダムの部下たちも分かっていなかったようだ。

 そしてオールは、接近戦では剣の方が強いことを、これまでに経験した任務からよく知っていた。


「えいっ! やあっ!!」


 重い鎧をものともせず、オールはサーベルを振り回す。オールのサーベルは黒い銃も断ち切った。


「……よしっ!」


 オールが動きを止めて辺りを見回す。

 そこには、倒されたアダムの部下が転がっていた。


「あなた、すごいですね!」


 近くで戦っていた、ヨハンが駆けつけてくる。


「これほどまでの剣裁き、久々に見ました!」

「いえいえ、大したことではありません。僕にとっては朝飯前なんです」


 オールは謙遜しながら、サーベルを鞘に納めた。


「あなたもすごいじゃないですか。どこの騎士団に所属しているんですか?」


 オールからの問いかけに、ヨハンは戸惑いつつも答えた。


「私は、騎士団に所属の騎士ではありません。アルト・フォルテッシモ楽団の団長なんです」

「えっ!?」


 ヨハンの答えに、オールは目を丸くした。


「あ、あの有名なアルト・フォルテッシモ楽団の団長さんなんですか!?」

「はい!」


 ヨハンは嬉しそうに答える。


「あなたのような騎士の方も、よくアマデウスホールにお客様として来ていただいております!」

「是非とも、アルトに行った際にはお立ち寄りさせていただき……んっ?」


 オールはそっと、サーベルを抜いた。


「ヨハンさん、そのまま動かないでくださいっ!」

「えっ?」


 そう云うと、オールはヨハンに向かって、サーベルを突き出した。


「ぐああっ!」


 ヨハンの背後で、断末魔の悲鳴が上がる。

 振り返ると、そこにはアダムの部下がいた。


「ひえっ!?」


 驚いたヨハンがオールの背後まで後ずさりする。それを確認したオールは、そっとアダムの部下に突き立てていたサーベルを引き抜く。


「あ……が……」


 サーベルが突き立てられていた場所から血が噴き出し、周囲に血の海を作って、アダムの部下は絶命した。


「……危ないところでした」


 オールが血の付いたサーベルを拭って、鞘に納める。


「ありがとうございました!」

「いえ、騎士として当然のことをしたまでです」


 ヨハンのお礼に、オールはそう答えた。




 カラビナは、ノワールグラードで最も高いビルの廃墟に上り、そこから自慢のライフル銃でアダムの部下を狙撃していた。

 慣れた手つきでライフル銃から放たれる弾丸は、アダムの部下を決して逃さない。

 カラビナは伏せながら風の動きなどを肌で感じ取り、黒い銃を手に逃げ惑うアダムの部下を確実に仕留めていく。


「……ふぅ」


 一通りアダムの部下を撃ったカラビナは、ライフル銃に新しい弾丸を装填していく。


「実に見事じゃ!」

「ありがとうございます」


 ガルがカラビナの腕前を称賛し、カラビナは嬉しそうにお礼の言葉を述べる。

 ガルはカラビナとは反対の向きを向いていて、カラビナを仕留めようとするアダムの部下を返り討ちにする役をしていた。細身だが、がっしりとした骨格を持つガルは、AK47の反動をちゃんと抑えられていた。


「こちらもひと段落したぞ!」

「油断はできませんが、ちょっとだけ休憩しましょうか」

「うむ! それはいいのう!」


 ガルとカラビナは、銃の射程に入らない場所に腰を下ろし、壁にもたれかかった。


「それにしても、見事な腕前じゃった」


 ガルが再び、カラビナの銃の腕前を褒める。


「ありがとうございます」

「どうしたら、そんなに銃の腕前を上げることができるのじゃ?」

「そうですねぇ……。やっぱり、練習あるのみですね」


 カラビナは、そう答える。

 幼いころから、射撃コンテストで優勝経験のある祖父から銃の腕前を磨いてきた。祖父の口癖は「銃の腕前を上げるためには、毎日練習を欠かさずに行うこと。それが1番の近道だ」と教わってきたカラビナは、それが正しいと信じてきた。祖父の云うことは、いつだって正しかったからだ。


「なるほど。何事も、継続は力じゃのう」


 ガルは納得したように頷く。


「ワシの若いころと、変わらない部分もあるんじゃのう」


 すると、再び銃声が聞こえるようになってきた。

 ガルとカラビナは、視線を交わす。


「またしても、お客さんが来たのう……!」

「これは、お出迎えしないといけませんね……!」


 頷き合うと、ガルとカラビナは銃を手に、再びアダムの部下たちを撃ち始める。




「うわあああ!」


 ケイロン博士は、廃墟へと逃げ込んだ。

 先ほどまでは優勢だったが、アダムの部下たちに反撃の機会を与えてしまった。

 これを待ち望んでいたとばかりに、アダムの部下たちは黒い銃でケイロン博士を追い詰めていく。


 今のケイロン博士にできることは、逃げることだけだった。


「はぁ……はぁ……」


 廃墟の奥へと逃げ延びたケイロン博士だったが、これで終わったわけではなかった。


「こっちへ消えたぞ!」

「必ず見つけ出して仕留めてやる!!」


 アダムの部下たちは、まだ追いかけてくる。

 ケイロン博士はさらに逃げないといけなくなった。


 しかし、これ以上どこへ逃げればいいのだろう?


 ケイロン博士がそう思った時だった。


「ケイロン博士!」


 突如聞こえた若い声に振り向くと、スパナがいた。

 スパナは手に、棒状のものを持っている。


「スパナくん!」

「ケイロン博士、こっちへ!」


 スパナからそう云われて、ケイロン博士は廃墟から脱出した。

 すると、スパナは棒状のものから伸びた線に、ライターで火をつけた。火がつくと、棒状のものを廃墟の中へと投げ込む。


「スパナくん、あれは――」

「ケイロン博士、こっちへ来てください!!」


 スパナが叫び、ケイロン博士は慌ててスパナの後に続き、別の廃墟へと駆けこんだ。

 その直後、背後から轟音が聞こえてきた。


「わあっ!?」


 驚いて耳を塞ぎ、後ろを見る。

 先ほどまでいた廃墟が、瓦礫の山になっていた。


 きっと、自分を追ってきたアダムの部下たちは、あの瓦礫の下敷きになってしまっただろう。

 ケイロン博士は、そっと胸を撫で下ろす。


「上手くいきました!」


 スパナが、嬉しそうに云う。


「スパナくん、もしかして今のは……」

「はいっ! これです!」


 スパナが、1本の棒状のものを取り出す。

 ダイナマイトだった。


「こいつが役に立ちました!」

「ダイナマイトか。いや、助かったよ。ありがとう」


 ケイロン博士はお礼の言葉を述べ、AK47を持ち直す。


「さて、これまでのお返しと行こうか」

「オレも同行させてください。邪魔な奴らは、全部吹っ飛ばしてやりますよ!」

「頼もしいな」


 スパナの言葉に、ケイロン博士はほほ笑んだ。




 アダムの部下たちは、次々に倒れていった。

 戦力が削られていく中で、士気も落ちていき、導きの使徒は崩壊状態へと突き進んでいった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘、評価等お待ちしております!

次回更新は12月9日21時更新予定です!

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