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幼馴染みと大陸横断鉄道  作者: ルト
第2章
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第17話 休日

 オレとライラが、ライラの両親を見つけるために必要な旅費(りよひ)()めはじめてから2年が経った。


 2年前から貯めはじめた旅費は、順調(じゆんちよう)に貯まって行き、もう少し貯め続ければ、目標金額にまで届きそうな所まで貯まっていた。

 これまでの間、オレとライラは節約しながら毎日のようにクエストをこなし、報酬を得てはそこからある程度の金額を貯金してきた。一切(いつさい)手を付けることなく貯め続けてきて、もうすぐそれが(むく)われようとしている。


 そして今日は、久しぶりの休日だった。

 オレはライラと共に、クエストのことは忘れて穏やかな1日を過ごそうと思っていた。


 それなのに、どういうわけかライラよりも早く目が()めてしまった。

 普段は、ライラのほうが少し早いくらいなのに。

 ライラはまだ、オレの(となり)ですやすやと眠っている。


 オレとライラが同棲しているアパートの部屋に、ベッドは1つしかない。

 ここに来てからずっと、オレとライラは1つのベッドで眠ってきた。

 オレはゆっくりと、横で眠るライラを見た。

 ライラは時々、獣耳をピクリと動かしながら、寝息(ねいき)を立てて眠っている。


(ライラ……)


 この2年で、ライラの身体はさらに成長していた。

 抱き心地は最高だ。

 身体はもうすっかり魅力的な大人の女性になっていて、オレは悶々(もんもん)とする時が日に日に増えてきていた。

 それを知ってか知らずか、帰ってくるとスキンシップを求めてくるライラ。


(ちくしょう……なんて可愛(かわい)い寝顔なんだ!)


 この寝顔を独占できるのは、婚約者のオレだけ。

 オレは少しだけ、ライラの顔に自分の顔を近づける。


(もうちょっと、近くで見たい!)


 しかしそのとき、ライラが目を覚ましそうになった。


(ヤ、ヤバイ!)


 オレは慌てて、寝たふりをする。

 隣でライラが目を覚ましたらしく、ライラは起き上がった。


「ビートくん……? なんだか、いつもより近いような気がする」


 その言葉に、オレの心臓は高鳴(たかな)る。


「……まぁ、そんな日もあるよね」


 ライラはあまり気にすることなく、ベッドを出て台所に向かって行った。

 朝食を作る音が聞こえてきてから、オレもベッドを抜け出した。



「ねぇ、今日はお休みだけど、どうする?」


 朝食(ちようしよく)を終えた後、ライラがオレに聞いてくる。

 しかし、何をしようかと云われても、特に思いつくことが無い。

 ただ、クエストのことを忘れて、ライラと(おだ)やかな1日を過ごせるなら、それでオレは良いと思っている。


「どうしようかなぁ……」

「もしビートくんさえ良ければ、今日は旅に出るための準備を進めたいと思っているんだけど、どうかしら?」

「……そうか、そうだな!」


 ライラの云うことは、もっともだった。

 クエストをこなして旅費を貯めることばかりに気を取られていたが、旅費だけで旅ができるわけではない。

 これは確かに、早めに用意しておいた方がよさそうだ。

 携帯食料(けいたいしよくりよう)、衣類など、用意するものは多い。


「よし、行こうか!」

「うん!」


 オレとライラは、立ち上がった。




「へい、いらっしゃい!」


 店主(てんしゆ)の声が、オレたちに向かって飛んでくる。

 オレたちが足を踏み入れたのは、冒険者(ぼうけんしや)向けの商品を扱っている店だ。

 グレーザーの街にある冒険者協同組合(ブレイバーギルド)に登録し、クエストをこなしていく冒険者たちが登録を終えた後、まず向かう場所だ。レベルの低い新人冒険者からレベルの高いベテラン冒険者まで、利用する冒険者は後を絶たない。


「わぁ、すごい人」

「噂には聞いていたけど、すごいな……」


 店の中は、足の踏み場もないほど冒険者たちで埋め尽くされていた。

 冒険者たちは目当てのものを見つけると、すぐに銀貨(ぎんか)金貨(きんか)と交換していく。

 保存食や体力回復に効果がある薬草などは特に人気があるらしく、補充すると飛ぶように売れていく。


「なにから買う?」

「まずは、携帯食料からだな」

「でも、すごい人だかりね。はぐれたりしないかしら?」


 ライラの言葉に、オレは応えるようにライラの手を握った。


「これなら、はぐれないだろ?」

「ビートくん……」


 ライラが嬉しそうに微笑み、尻尾を振る。

 オレはライラと共に、冒険に必要な商品を求める冒険者たちの中に入って行った。




「まいどありっ! また来てくれよ!」


 店主から言葉を投げられる中、オレとライラは店から出てきた。

 おカネは、2人で貯めていた旅費の一部を切り(くず)して購入資金にした。

 思っていたよりも、必要なものは多く、つい買い過ぎてしまった。

 こんなことになるなら、配送サービスをつけてもらえば良かったなぁ……。


「明日からしばらくは、パンとスープだけの生活になりそうだな。……あ、でもライラはちゃんと食べてくれよ?」

「ありがとう。でもこれだけあれば、きっと大陸横断鉄道に乗った後は大丈夫じゃないかしら?」

「そうだな。これで旅に出た後の買い出しは、当分しなくてもよさそうだ」


 アパートに戻り、オレは机の上に買って来たものを置く。

 全身から力が抜け、オレはゆっくりとイスに腰掛ける。


「午後からは、ゆっくりしようか」

「さんせーい。わたしも、人ごみの中を歩き回ったせいか、少し疲れちゃった」

「オレも、昼寝(ひるね)をしたくなってきた」


 オレとライラは、午後の時間を休息に当てることにした。

 午前中にほとんど必要なものは(そろ)ったから、午後はゆっくりするのもいいだろう。

 昼食を終えると、オレはベッドに寝転がった。

 そのまま、オレは眠りの底へと落ちて行った。



「……ん?」


 昼寝から目覚めたオレは、ゆっくりと目を開ける。

 どういうわけか、オレは片手(かたて)に銃を握りしめていた。

 そして辺りに散らばっているのは、人族や獣人族の死体。

 それらを照らすのは、真っ赤な夕陽(ゆうひ)

 自分の身体(からだ)を見ると、オレは血まみれになっていた。


「ビートくん……ビートくん……!」


 自分のことを呼ぶ、聞き馴染(なじみ)のある声。

 頭上に視線を向けると、ライラがいた。

 大粒(おおつぶ)の涙を流しながら、何度もライラはオレの名前を呼ぶ。

 オレはライラに抱きかかえられていた。

 ライラはオレの血で自分の衣服が汚れるのも構わず、オレを抱きしめながらオレの名前を呼び続ける。


 ライラ、もう泣くな。

 オレはライラを慰めようと、手を伸ばしかけて、止めた。

 オレの手は、血まみれになっていた。

 こんな汚れた手で、ライラに触りたくない。ライラが(けが)されてしまいそうな気がした。


 まず、最低でも手に着いた血を拭き取ろう。

 オレはゆっくりと、手を引っ込める。

 しかし、どういうわけかそれを見ていたライラが余計に泣きだし、オレを強く抱きしめる。


「ビートくん! ビートくん!!」


 これは、なんだろう?

 夢なのか?

 それとも現実なのか?

 どうしてこんなところにオレはいるのか?

 オレは訳が分からないまま、ライラに抱かれていた。



「――うわあっ!?」


 オレが起き上がると、そこはいつものアパートの一室だった。

 隣では、ライラが眠っている。

 オレは慌てて、辺りを見回し、自分の身体(からだ)を見る。

 人族や獣人族の死体など、どこにもない。

 オレも血まみれなんかじゃない。


「……夢か」


 時計を見ると、昼寝を始めたときから、まだ2時間しか経っていない。

 オレは隣で眠るライラを起こさないように、そっと横になる。

 嫌な夢を見たもんだ。


 そういえば、昔読んだ本に、悪夢(あくむ)を見ることは疲れがかなり蓄積(ちくせき)されていて、ピークに達しているときだと書いてあったような気がする。

 自分では気づかなかったけど、どうやらかなり疲れが溜まっていたらしい。

 やっぱり、休日はゆっくりしたり、日頃の疲れを発散(はつさん)させるために使うのが正しいのかもしれない。

 ライラの両親を探しに行く前に、疲れが()まって倒れたりしたら、元も子もない。


 昼寝をしたせいか、オレの眠気はすっかり消えていた。


「……そうだ」


 オレはそっと起き上がり、ベッドを抜け出すと、ライラの寝顔(ねがお)が向いている方に移動する。

 そこには、寝息(ねいき)を立てて眠るライラがいた。


「はぁ~、いい寝顔……」


 オレはその場に座り込み、ライラの寝顔を鑑賞(かんしよう)する。

 これだけで、さっきの嫌な夢の内容さえ忘れていく。

 オレにとっての最大の(いや)し。

 それはライラの存在だ。


 そして自然と、オレの視線はライラの獣耳と尻尾(しつぽ)、お尻、そして胸の谷間へと移っていく。

 あぁ、ライラのこれらすべてに触りたい。

 他の誰にも触らせたくない。

 自分だけのものにしてしまいたい。


 オレは寝ているのをいいことに、ライラをこれでもかというほど、いやらしい視線で()めるように見続けた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


200PVを超えました!

ありがとうございます!

これからもどうぞよろしくお願いします!!

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