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幼馴染みと大陸横断鉄道  作者: ルト
第13章
179/214

第177話 銀狼族の村

 ノワールグラードを離れたオレたちは、グレイシアの馬車で道を進んで行く。




 この辺りは、ノワールグラードの周辺と違い、ちゃんと道が作られている。

 明らかに、人の手が入っているようだ。


「まだ、続くのか?」


 手綱を握るグレイシアに、オレが尋ねた。


「もう少しよ。私達の村は、もう少し進んだところにあるわ」

「本当に、すっごい奥地なのね……」


 ライラは、馬車から周りを見ながら云う。


 それにしても、いくら進んでも銀狼族の村は見えてこない。

 いくら奥地に暮らしているとはいえ、いくらなんでも限度ってものがあるはずだ。

 もう最寄り駅と云われているサンタグラードから、もうどれくらいの距離を進んできただろうか?

 ここまで離れているとは聞いていない。


 いや、もしかしたら――。

 オレは一つの可能性を考えた。


 この先には、銀狼族の村なんて無いのでは――!?


 オレがグレイシアを疑ったその時、グレイシアが叫んだ。


「見えた! あそこよ」


 指さす先に、オレとライラは視線を向けた。

 そこには確かに、村があった。

 木でできたログハウスのような建物が、いくつも立っている。

 建物はどれも大きく、ちょっとした倉庫くらいの大きさがあった。


 そして遠目からでも分かる、白銀の髪の毛と獣耳に尻尾を持った獣人たち。

 間違いなく、ライラやグレイシアと同じ銀狼族だ。

 銀狼族ばかりで、人族はもちろんのこと、銀狼族以外の獣人の姿は全く見えない。


 確かに、銀狼族の村だ!

 オレはグレイシアを疑ってしまったことを後悔した。

 申し訳ない気持ちに、包まれる。


「ビートくん、どうかした?」


 ライラから声を掛けられ、オレは現実に引き戻される。


「――な、なんでもないよ!」


 オレはそう云って、誤魔化した。


「初めて、銀狼族ばかりいるのを見て……つい見とれちゃったんだ」

「ビートくん、もしかしてわたしより他の銀狼族の方が気になるの?」

「ち、違うよ!!」


 ライラの言葉に、オレは慌てて否定する。


「フフフ、初めて来た銀狼族以外の者は、みんなそう云うのよ」


 グレイシアはそう笑う。


「さ、行くわよ。もうすぐお昼だし」

「うん、ビートくん、行こう!」

「お、おう……」


 オレたちは、前方に見える銀狼族の村に向かって、進んで行った。




 グレイシアが銀狼族の村の入り口に到着して馬車を停めると、すぐに村に居た銀狼族の村人が気がついた。


「あっ、グレイシアちゃんが戻って来た!」

「連絡員のグレイシアが、戻って来たぞ!」


 すぐに近くに居た銀狼族が、次々に集まってくる。

 オレはそこで、初めて銀狼族の男性を見た。これまで見てきた銀狼族は、ライラとグレイシアだけ。そして2人とも、女性だ。銀狼族は女性しか見たことが無かったオレにとって、銀狼族の男性は女性のイメージしかなかった銀狼族のイメージを壊してくれた。

 なるほど、銀狼族の女性がライラのように美女揃いなら、銀狼族の男性はイケメン揃いだ。女性なら誰もが夢中になりそうな甘いマスクを持った者しか、銀狼族の男にはいない。


 オレは自分の顔を、こっそり手鏡で確認する。

 とても、銀狼族の男には顔で敵わない。


「さ、降りて降りて」


 グレイシアから云われ、オレとライラは馬車から降りた。


「……ん、おぉっ!?」


 突然、1人の男がライラを見て目を丸くする。


「グレイシアちゃん、この女の子は!?」

「ライラという、私達と同じ銀狼族です」

「む、村にはこんな美人はいなかったぞ!? どこから連れてきたんだ!?」


 どうやら、ライラは美男美女揃いの銀狼族の中でも、かなりの美女らしい。

 オレにはライラが他の銀狼族の女とどう違うのか、よく分からなかったが。


 よく見ると、銀狼族の男たちは皆、ライラに視線が釘付けになっている。

 ライラに魅力を伝えようとしているのか、その甘いフェイスをフルに使って、男たちはアピールをしてくる。

 オレとしては面白くなかったが、オレはその気持ちを顔に出すことはしなかった。

 なぜなら、この男たちは絶対にライラに手を出すことができないからだ。


「サンタグラードからです。自らの両親を探して、南大陸のグレーザーから来たと云っています。ちなみに、横に居る人族のビートの妻です」


 グレイシアが澄ました表情のままそう云うと、男たちの顔に緊張が走った。


「なっ、なんだと!?」

「そんな、嘘だろう!?」

「ま、まさかその首の婚姻のネックレスは!!」


 男たちはライラの首に婚姻のネックレスがあるのを見て、オレの首元へと視線を移した。

 そして愕然とした表情を見せる。

 イケメンが心底ガッカリした表情を見せるのは、オレとしてはなかなかに面白かった。


「わたしはビートくんの奥さんなので、そんな顔されても困りますよぉ」


 ライラが照れながら云う。

 グレイシアは澄ました顔のまま、再び口を開いた。


「そういうことです」


 男たちが、オレに嫉妬の混じったあからさまな視線を投げつけてくる。

 どうだ、よく分かっただろう!

 手を出したりしたら、たとえライラの同族でも、容赦しないからな。


「さ、行きましょう。通してください」


 グレイシアがそう云うと、オレたちに群がっていた銀狼族が、スッと道を譲った。

 その真ん中を、グレイシアは歩いていき、オレとライラはそれに続いた。




 オレたちが案内されたのは、遠目からでも良く見えた、大きなログハウスだった。

 銀狼族の村の建物は、ほとんどがこの大きな倉庫のようなログハウスで、がっしりとしたつくりになっているらしい。ログハウスを構成している木は太く、どうやって切り倒してきたのか気になるほどだ。


「これは、集会場か何かなのか?」

「まさか、これが一般的な家よ?」


 オレの問いに、グレイシアは当たり前じゃないかとでもいうように、答える。

 これが一般的な家だと!?

 どうやって建てたんだ!?


「銀狼族の村は冬になるとすごく冷え込むし、雪もたくさん降るから、それに耐えられるように大きな木を使っているのよ。家の中心には大きな囲炉裏があって、そこで暖を取るのよ。夏場は窓を開ければ、風通しが良くて涼しいの」


 グレイシアは、得意げになって説明した。


「それにしても、すごく大きいのね」

「えっ、まさか他の大陸では、これより小さい家が普通なの?」


 グレイシアは信じられないといった様子で、オレたちに訊いた。

 グレイシアよ、お前はサンタグラードで連絡員をしているのに、一度も「私たちの家って、もしかして大きいんじゃない?」と疑問に思わなかったのか?


「これより大きい家もあるけど、個人の家でここまで大きいのは、そうそうないよ。ねぇ、ビートくん?」

「うん。ここまで大きいと、何家族も住めそうだな」

「当たり前よ。昔はだいたい3世代くらいで同居するのが、当たり前だったんだから。これくらい大きくないと、狭すぎてやってけないじゃない」

「へぇっ、3世代ってことは……お祖父さんの代と一緒に暮らしているのか!?」


 オレとライラは、目を丸くした。

 両親の顔さえ知らないのに、お祖父さんやお祖母さんとも一緒に暮らす事なんて、どうやっても想像できなかった。


「まぁ、今は3世代くらいで同居している人は、そんなに多くないわ。今は結婚したら、自分の家を建てて暮らす人が多いわね」

「へぇ~……」

「さ、ずっと外に居るのも何だから、中に入るわよ!」


 グレイシアはそう云うと、大きな木の扉を開いた。

 そしてグレイシアに促され、オレたちは家の中へと入って行った。




 家の中に入ると、通路の先に、グレイシアが云ったように、中心に囲炉裏が作られていた。

 囲炉裏のあるこの部屋を中心にして、いくつかの部屋がくっついているような作りになっているらしく、いくつかのドアが見える。

 囲炉裏の上には、開いた魚や薄く切られた肉が吊り下げられていて、囲炉裏の煙で燻されている。どうやらこうして、燻製を作っているらしい。ヤカンや鍋といった調理器具を吊り下げる道具もあり、実際に囲炉裏の火にはヤカンがかけられている。

 囲炉裏の近くには、数人が座れるスペースが作られていた。


「そこに座って、待っていて」


 グレイシアはそう云うと、玄関に向かって歩き出した。


「待って、どこにいくの!?」

「すぐに戻るわ。だから、ここで待ってて」


 グレイシアはそう云うと、オレたちをその場に残して、家を出て行った。


 オレたちは広い家の中で、しばらく待機することになってしまった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘、評価等お待ちしております!

次回更新は11月7日21時更新予定です!

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