表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染みと大陸横断鉄道  作者: ルト
第12章
159/214

第157話 学園都市カルチェラタン

 オレたちは、カルチェラタンに到着した。



 東大陸最北端の地にある学園都市、カルチェラタン。

 北大陸を望む地にあるカルチェラタンは、大学や研究機関といった学術的な場所が集まっている学園都市の顔が強い。しかし同時に、東大陸最北端の街でもあり、東大陸から北大陸への玄関口にもなっている。当然、東大陸から北大陸へ移動する人は、間違いなくカルチェラタンを経由していく。そのため大きな駅もあり、列車の乗り入れも日夜盛んにおこなわれている。

 そしてカルチェラタンには、各国の領主の子息や上流貴族の子供たちも入学する難関有名学校のオウル・オールド・スクールがある。

 最も有名でこれまでに優秀な人材を数多く輩出してきた難関校であり、カルチェラタンに多くある学校の中でも、最も人気が高い学校だ。ここに入学することは、エリートとなるために必要なことであるとさえ云われ、領主や上流貴族たちにとっては、オウル・オールド・スクールを卒業することがステータスとなっている。


 カルチェラタンは、街の人口の大半が学生だ。

 学生以外には、学校に勤めている先生や事務員などの関係者、研究員、学校関係者の家族などがいる。そしてほかにも、文具店や食堂といった学生や学校関係者を相手に商売をしている人もいる。

 それゆえに「カルチェラタンで商売をするなら、まずは学生に売れるものを売れ」というのが鉄則になっている。学生から求められなければ、何を売っても商人は生きていけない。

 逆に学生に気に入られれば、商売は成功したも同然だ。

 カルチェラタンで商売をする商人たちは、今日も学生たちの声に耳を傾け、学生たちが求めるものを探し求めている。



 アークティク・ターン号が、ゆっくりとカルチェラタンの駅に入っていく。

 所定の位置まで進むと、ゆっくりと停車した。


 機関助士が停車位置を確認し、乗降の許可を出す。

 一斉に待機していた駅員が列車に駆け寄り、ドアを開けていった。


 そしてドアのすぐ近くで待っていた乗客たちが、次々にホームへと降り立っていく。


 駅員が「カルチェラタンに到着しました。停車時間は1週間です」と書かれたプレートを持ちながら、歩き回っている。

 次々にカルチェラタン駅の改札に向かっていく人たちを、オレはライラと共に個室から見ていた。


「すごい人だな……」

「ほとんどが学生みたいね。ほら、みんなあの黒いマントを着てる」


 ライラの云う通り、下りていく人の多くは黒いマントを着ていた。


「わたしたちも、そろそろ降りようよ」

「そうだな……あっ、ちょっと待って!!」


 個室を出ようとしたライラを、オレは呼び止める。


「どうしたの?」

「ライラ、武器は持ってる?」


 オレの問いに、ライラは首を傾げた。


「持っているけど、それがどうかしたの?」

「ライラ、カルチェラタンの街はいいけど、これからオレたちが公開授業を受けに行くオウル・オールド・スクールは、学内武器持ち込み禁止だ」


 オレは少し前に、ブルカニロ車掌から聞いていた。

 カルチェラタンの街は、武器を持ち歩いていても咎められることはない。


 しかし、学校や研究機関など学術機関の中となると話は別だ。


 特別な許可を得られない限り、武器は持ち込み禁止となっている。

 学生同士の喧嘩などが発生した場合、武器を持ちだされたりしたら、無関係な人にまで被害が及ぶかもしれないからだ。

 そのため、学術機関の中は武器を持ち込むことはできない。


 持ち込んだ場合、最悪退学処分が下される。


「あっ! そうだったわね!」

「ライラ、武器は全部ここに置いていこう。そして念のため、貨物車に預けておこう」


 オレがそう云って、ソードオフを取り出し、RPKとともに置く。

 それを見たライラは頷いた。


「そうね。貨物車なら盗まれる心配もないから、安心ね」


 ライラはスカートをたくし上げると、足に取り付けていたホルスターを外し始める。

 当然、ライラの美しい足がオレの目に飛び込んでくる。


 オレは自然と、ライラの足を舐めるように見つめてしまった。


「ビートくん、視線がいやらしいよ……」

「……ごめん」

「いいよ。ビートくんだから、許しちゃう! それに、毎晩のように見てるじゃない」

「なっ……!」


 オレが顔を紅くし、ライラはいたずらっ子のように笑いながらホルスターを外し、スカートを下した。


 その後、武器を預けたオレたちは、必要なものだけを手にしてカルチェラタン駅を後にした。




「ビートにライラ!!」


 カルチェラタンの街を歩いていると、オレたちは声をかけられた。


 おかしい。カルチェラタンに知り合いはいないはずだ。

 それなのに、なぜオレたちの名前を知っているんだ!?


 たまたま他の誰かと名前が被ったのか、聞き間違いかもしれない。

 しかし、それにしては奇妙だ。

 オレたちを読んだ声は、どこかで聞いた覚えがある。

 ずっと遠い昔ではない。少し前に、聞いたような気がする。


 オレたちが声がした方へ、慎重に顔を向ける。

 そこには、懐かしい顔があった。


「ダイスとジムシィ!!」


 オレが叫ぶと、人族の少年と獣人族の少年が満面の笑みで近づいてきた。

 2人とも、黒いアカデミックマントを着ている。


「また会えて嬉しいよ。ビートにライラ!」

「どうしてここに!? 確か、ミーヤミーヤにいたんじゃないの?」


 ライラの問いに、オレも頷いた。

 ダイスとジムシィは、西大陸のミーヤミーヤで出会った。人族と獣人族の対立を解決してくれる代わりに、銀狼族の情報を教えるという取引をして、オレたちは銀狼族の情報だけでなく、ダイスとジムシィという友達も手に入れた。

 文化人類学を学ぶために、オウル・オールド・スクールに進学するなんて云ってたっけ。


 ーーまさか!?


「ひょっとして……オウル・オールド・スクールに……?」


 オレが尋ねると、ダイスとジムシィは同時にうなずいた。


「その通りさ。俺たちはあの後、オウル・オールド・スクールに入学するために、アークティク・ターン号が通るルートとは別のルートを使って、カルチェラタンに向かったんだ。そして先日、オウル・オールド・スクールの入学式を終えて晴れてオウル・オールド・スクールの生徒になったんだ!」

「これから、毎日オウル・オールド・スクールで勉強していくんだぜ! すごいだろ!?」


 ジムシィはアカデミックマントを得意げに翻す。

 よく見ると、アカデミックマントの下は制服らしい衣服を着ていた。きっとあれが、オウル・オールド・スクールの制服だろう。


「すごいなぁ。オレはどう頑張っても、オウル・オールド・スクールには入学できないや」

「わたしも」


 オレとライラは、少しだけダイスとジムシィがうらやましく思えた。


「ところで、ビートとライラはこれからどうするんだ?」

「アークティク・ターン号が出発する1週間後まで、オウル・オールド・スクールで公開授業を受けようかと思っているんだ」

「ほ、本当か!?」


 オレの言葉に、ダイスとジムシィが目を輝かせた。

 どうしてそこまで喜ぶのかわからず、オレとライラは顔を見合わせる。


「オレたちと同じ学校に、1週間通うのか!?」

「そういうことになるな。でも、それが……?」

「なら、すぐに行こうぜ!」


 ジムシィが飛び跳ねる。


「俺たちが、手続きをサポートするよ。1週間だけだけど、オウル・オールド・スクールでの公開授業が一生の思い出になるよう、俺たちがビートとライラを手助けするから!」

「あ……ありがとう」


 オレがお礼を云うと、ダイスがオレの手を取った。


「じゃあ、これから俺とジムシィがオウル・オールド・スクールに案内するよ」

「お、お願い……」


 こうしてオレとライラは、久しぶりに再会した友人によって、オウル・オールド・スクールに連れていかれることとなった。




「……あれが?」

「そうさ」


 オレの問いかけに、ダイスが答える。

 オレたちの目の前に、巨大な古城が見えてきた。古城は領主の館よりも大きく、何も説明がないと、王族が暮らしている城なのではないかと勘違いしてしまいそうになる。しかし、この古城に暮らしているのは王族ではない。


 この古城こそ、領主の子息や上流貴族の子供たちが競って入学する、あのオウル・オールド・スクールだ。


 カルチェラタンで唯一の全寮制の学校で、通っている学生の数は最大。

 ありとあらゆる研究機関を持ち、街の人からは「カルチェラタンは、オウル・オールド・スクールで成り立っている」と云われるほどの影響力を持つ。難関校としても知られ、何度受験しても合格できない浪人も多い。ゆえに競争率は高く、入学できることはエリートの証でもある。入学できるだけで、すごい人として見られるのだ。


「あれが、オウル・オールド・スクール。カルチェラタンにある学校の中でも、名門中の名門と呼ばれる4つの大陸の中で最も有名な学校さ」

「これから……オレたちはあそこに入るのか……!」

「なんだか……ドキドキしてきちゃった」


 オレとライラは、緊張していた。

 オウル・オールド・スクールに入る。


 公開授業で入れることは分かっていたが、いざ入る段階となると緊張が止まらない。


「そんなに緊張することないよ。俺とジムシィも最初は緊張したけど、それも2~3日で終わった。学生が多いから色んな人がいるけど、楽しい学校さ」


 ダイスの言葉に、ジムシィも頷く。


「そうさ! 人族も獣人族も色んな人がいて、普通に授業を受けるだけでもかなり面白いぜ!」


 オレとライラは、ダイスとジムシィに続いて、オウル・オールド・スクールの敷地内に足を踏み入れた。


「……ビートくん、何か違った空気とか、感じる?」

「いや……カルチェラタンの街と、あんまり変わらないよ」


 オレは答える。

 しばらく進んでいくと、ダイスとジムシィ以外の学生がいた。黒いアカデミックマントを着て、数人で何かを話している。年齢はオレたちと大きく変わらないようだ。

 あの学生も、オレとは違ってエリートなんだろう。

 そう考えると、少しだけうらやましく思えた。


「さ、こっちだよこっち!」


 ジムシィに云われ、オレとライラはオウル・オールド・スクールの校舎こと、巨大な古城の中へと足を踏み入れた。




「まずは学生課に行って、公開授業を受講するための手続きをしなくちゃな」


 ダイスが云う。


「公開授業を受けるためには、申請が必要なことは知ってる?」

「あぁ。確かライラから聞いたよ」


 オレは列車の中での、ライラとのやり取りを思い出す。

 申請することで公開授業を受けられると、聞いた覚えがあった。


「実は、誰でも申請できるわけじゃないんだ」

「えっ、本当か!?」


 ダイスの言葉に、オレは思わず声が大きくなってしまう。

 オレの隣を歩くライラも、不安げな表情になる。


「もしかして……何か、試験とかあるのか?」


 オレが考えられる申請できない理由は、それだった。

 試験を受けて、それに受からないと申請する資格を得られない。オウル・オールド・スクールほどの難関名門校なら、そんなことがあってもおかしくはないだろう。


「いや、試験とかはないよ。必要なのは、現役の正課学生からの推薦だ!」

「!! ……そうか、じゃあ……!」

「もちろん、ビートとライラには俺たちがついている!」


 ジムシィが自信たっぷりに、自分の胸を叩いた。


「さぁ、こっちだ」


 ダイスが案内してくれたのは、学生課カウンターの最も奥にあるカウンターだった。


「すいませーん。公開授業の受講をお願いしたいのですが……」


 カウンターに向かって呼びかけると、メガネを掛けた獣人族白鼠族の男性がやってきた。


「はい、どちらの方が公開授業の受講を希望ですか?」

「えと……僕と……」

「わたしです!」


 オレとライラが、カウンターの前に進み出る。


「えーと、それでは推薦していただく正課の学生の方は……?」

「俺たちです!」


 ダイスとジムシィを見ると、白鼠族の男はメガネを掛けなおした。


「では、学生証をお願いします」

「はいっ!」

「見てくれっ!」


 白鼠族の男の要望に、ダイスとジムシィはすぐに従って学生証を出した。

 学生証は、オレたちが持っているアークティク・ターン号の乗車券と、ほぼ同じ大きさのカードだった。


 それを見た白鼠族の男は、頷いた。


「確かに拝見しました。それでは、書類を準備しますので、ご記入をお願いします」


 すぐにカウンターに書類が準備され、オレとライラは白鼠族の男の指示に従って書類に記入していき、記入が終わると書類を白鼠族の男に手渡した。書類を受け取った白鼠族の男は、書類を手にカウンターの奥へと消えていく。

 それから少しして、白鼠族の男は2枚のカードを持って戻ってきた。


「お待たせいたしました。こちらが、公開授業限定の学生証です」


 オレたちは白鼠族の男から、そのカードを受け取る。

 カードにはオレとライラの名前がそれぞれに書かれていて、オウル・オールド・スクールの校長のサインが入っていた。カードには『上記の者、公開授業においてのみ本学学生と同様に授業の受講を認める』と書かれている。


「これで図書館や食堂も利用できます。再発行はできませんので、無くさないように気を付けてください。なお、有効期限は発行日より半年になります」

「ありがとうございます!」

「それでは、本日11時より公開授業の受講者を対象とした説明会が開かれますので、そちらにも忘れず参加してください。説明会では、必要なもののご案内や図書館の利用案内もあります。詳しくはこちらをご覧ください」


 差し出された紙を、オレたちは手に取る。


「……それと、こちらもどうぞ」


 白鼠族の男はそこまで説明すると、2着の黒いアカデミックマントを差し出した。


「これは……アカデミックマント?」

「はい。学内にいる間は、学生と同じになります。学内にいる間だけでも結構なので、こちらを着用してください。貸し出しとなっておりますので、本学から離れる際にはご返却をお願いします」

「はい、わかりました!」


 すると、白鼠族の男が微笑んだ。


「それでは、本学でのひと時が、楽しいものとなることを願っております」


 オレとライラは、白鼠族の男にお礼を云って、学生課を後にした。




「それじゃ、俺たちはここまでだ」


 学生課から出ると、ダイスがオレたちから離れてそう云った。

 オレたちが首をかしげていると、ジムシィがダイスの隣に立つ。


「俺たちは、これから授業があるんだ。ビートとライラは、11時からの説明会に参加して、今日は終わりだ」

「じゃあな! また明日、一緒に授業を受けようぜ!」


 ジムシィが手を振り、ダイスと共に去っていった。

 オレとライラは、学生たちの波に消えていくダイスとジムシィを見送る。


「……ビートくん、これからどうしようか?」

「そうだなぁ……」


 オレは懐中時計を取り出した。

 現在の時刻は、10時30分。


「……ちょっと早いけど、今から説明会の場所に向かうか」

「うん! そうしよう!」


 ライラが2つ返事で頷き、オレの手を握った。

 オレたちは受け取った紙を見て、説明会の場所に向かった。


 校舎に入り、少し西に進んだところにある大きめの教室が、説明会の会場だった。


 会場となっている教室の中には、まだ誰もいない。


「そうだ! ビートくん、これ着てみようよ!」


 ライラがアカデミックマントを手にして云う。


「そうだな。学生証も貰ったし、学内にいる間は着てくれって云われたから、着ておこうか」


 オレは頷き、近くの机に荷物を置くとアカデミックマントを羽織った。

 ボタンを留めると、マントを羽織っただけなのにまるで自分がエリート出身のような気分になる。


 これでオレも、エリートの仲間入りだ。


 そう考えるとついつい、表情がニヤけてしまいそうになる。


「ビートくん、どう!?」


 ライラの言葉に反応し、オレはライラを見る。


「うん、よく似合っているよ」

「えへへ……ありがとう!」


 オレが褒めると、ライラは笑顔で尻尾を振る。

 マントから出た尻尾が左右にブンブンと揺れた。


 しばらくすると、オレたちと同じようにアカデミックマントを着た人が、続々と教室に入ってきた。ほぼ同じ年齢ばかりの正課の学生とは違い、公開授業を受講する人は、年齢もオレたちと同じくらいの人から高齢者まで様々だった。人族も獣人族もいる。学びたい気持ちを持つことに、年齢はや種族は関係ないのだろう。

 オレだって、まだまだ知りたいことはいっぱいある。


 11時になると、教室に1人の人族の男性が入ってきた。

 黒いローブに身を包んだ男性は、数人の学生をまるで騎士のように従えていた。オウル・オールド・スクールでは、偉い先生なのだろうかと、オレはその男性を見つめる。


「うおっほん!」


 騒がしかった教室の中が、男性の咳払いによって水を打ったように静かになった。男性の咳払いには、騒ぐことを一切許さないような、威圧感があった。

 オレに話しかけようとしていたライラも、咳払いを聞いて口を閉じてしまう。


「公開授業の受講を申請した諸君、オウル・オールド・スクールにようこそ!」


 男性は重厚感のある声で話し始めた。


「私は公開授業運営の責任者であり、オウル・オールド・スクールで教頭を務める人族のセブルスだ。これより、公開授業の概要や注意事項を説明するから、よく聞いておくように」


 こうして、セブルスという教頭から直々に、オレたちは公開授業の受講に必要なものや注意事項の説明を受けた。

 セブルス教頭の話は大切な内容ではあったが、長くて面白味が全くと云っていいほどなかった。



 説明会が終わる頃には、半分の人がウトウトしていた。

 オレとライラも、ウトウトしていたが、オレはなんとか1度も眠ることなく、セブルス教頭の話を最後まで聞いていた。




 説明会が終わると、その日はそれで解散になった。

 やることが無くなったオレとライラは、アカデミックマントを学生課の窓口に返却してから、オウル・オールド・スクールを後にした。


 どこにも立ち寄ることなく、オレたちは2等車の個室に戻ってきた。

 本当はホテルを予約したかったが、カルチェラタンにはホテルの数が少なく、しかもホテルの部屋はどこも満室でオレたちが宿泊できるホテルは無かった。


「授業があるかと思ったけど、無かったとは……少しガッカリ」


 オレはベッドに座り、少しだけ視線を落として床を見た。


「でもビートくん、明日は午前中にも午後にも、公開授業に指定されている授業がいくつもあるわよ」


 ライラが、説明会で配布された1週間の時間割を手に、オレに近づいてくる。

 オレはライラから時間割を受け取った。


「明日から、自由に授業に出て受けていこうよ」

「そうだな。明日は明日の風が吹く、だな」


 時間割を見て、オレはそう呟いてライラを見た。


「ライラは、どれを受ける?」

「ビートくんが受ける授業を、わたしも受けるわ」


 ライラはそう云って、オレの隣に座る。


「本当に、それでいいの?」

「どうして?」

「ライラが受けたいと思う授業は、この中にはないのか?」


 オレが時間割を指し示す。

 ライラは首を振った。


「じゃあ、わざわざオレと同じ授業を受けなくても、興味がある授業を受けたほうがいいんじゃないか?」

「ビートくん、忘れたの?」


 首をかしげるオレに向かって、ライラが云った。


「ビートくんのしたいことは、わたしのしたいこと。そして、ビートくんの受けたい授業が、わたしの受けたい授業ってこと!」


 そう云って、ライラが抱き着いてきた。


「わあっ!?」


 突然抱き着かれたオレは、そのままベッドに倒れこむ。


「ビートくんの隣は、わたしだけの場所なんだから!」

「ライラ、わかった。わかったよ!」


 ライラには、敵わないや。

 オレは今日も、そう思った。




 しばらくして、オレたちは夕食を食べてから、ベッドで眠ることにした。

 翌日から始まる公開授業への参加が待ち遠しいオレは、早く明日になることを祈りながら床に就いた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘、評価等お待ちしております!

次回更新は10月13日21時更新予定です!


本日から新章に入りました!

しばらくは学園回が続きます!

学生の頃を思い出しながら書いていますので、もしかしたらルトくんの実体験が反映されるかも!?

どうぞお楽しみに!


そしてな、な、なんと!!

1万PVを突破いたしました!!


まさかと思っていた、1万PV!!

ここまでこれたのも、読んでいただいた皆様のおかげです!

本当に、ありがとうございます!!


最後に、相変わらずで申し訳ありませんが、プロットが尽きかけております。

いえ、正確にはプロットのスピードに執筆のスピードが追いついていません。

なるべく休載しないように全力を尽くすつもりですので、どうか応援のほど、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ