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幼馴染みと大陸横断鉄道  作者: ルト
第11章
153/214

第151話 ライラ救出

 迫りくる強盗連合の構成員をRPKで薙ぎ倒しながら、オレは進んでいく。

 フルオートで次々に弾丸を発射し、強盗を薙ぎ倒していくRPKは、まさにゴミを掃き出す箒のようだった。


「くそっ、どこにいるんだ、ライラ!」


 オレはRPKを手に、次々と部屋を襲ってはライラを探していく。

 しかし、どこにもライラは見当たらなかった。


 このままじゃ、埒が明かない。

 嘘の情報を掴まされる危険もあるが、強盗連合の構成員を脅すかして聞き出したほうが早い。


「野郎!」

「!」


 オレは聞こえた声に反応して振り返り、すぐにRPKの引き金を引いた。

 連続で発射された弾丸の餌食になった強盗連合の構成員2人が、その場に倒れる。


 オレはそのまま、倒れた強盗に近づいた。

 1人は頭に弾丸を受けて即死していたが、もう1人は腹に食らったらしく、まだ生きていた。


「おい、お前、昨日捕まった獣人族の女がどこに連れていかれたか、知らないか?」

「ち……地下の……牢獄だ」

「そうか、わかった」


 もう、こいつは長くないだろう。

 オレはそっと、虫の息になっている強盗にRPKの銃口を向けた。


「今、楽にしてやるからな」


 その直後、銃声が轟いた。

 こんな姿は、ライラに見せちゃダメだな。


 オレは強盗の死体をその場に残して、地下の牢獄へと急いだ。




 しかし、地下の牢獄にライラはいなかった。


「くそっ! やっぱり嘘の情報を掴まされたか!!」


 オレは空っぽになった牢獄に向かって叫ぶ。

 覚悟はしていたが、余計な時間を食ってしまった。いや、ここにライラがいないと分かっただけでも、少なくとも収穫はあった。

 大急ぎで、ほかの場所を探そう!


「おーい、そこの若いの……!」

「えっ? ……うわっ!?」


 オレは声がしたほうを振り返り、驚く。

 牢獄の中に、大勢の男女が囚われていた。


 この人たちは、一体……?


「ーーそうだ!」


 オレはあることを思いついた。


「あの、ここの牢獄に獣人族の女が囚われていませんでした!?」

「今朝まで、ちょうど囚われていたよ。そこの、今は空っぽになっている牢獄にいた。確か銀狼族だとか、看守の男が話していたよ」


 囚われている男が答え、オレは目を見張った。

 ライラのことに、間違いはない。


「その銀狼族は、どこに連れていかれました!?」

「おそらく、2階の大広間のはずだ。若い女は、だいたいあそこに連れて行くと、看守が前に喋っていた」

「わかりました! ありがとうございます!」


 どうやら、行くところが決まった。

 2階にある大広間か。そこにライラが居るのなら、急がないと!


「後で必ず、あなたたちも助けます! それまでしばらく、待っていてください!」

「待ってくれ若いの! そこのロッカーの中に、看守が銀狼族から取り上げた武器があるはずだ」


 男の言葉に従い、オレはロッカーを開ける。


「これは……!」


 ロッカーの中に入っていたのは、ライラが持っているリボルバーだった。装填済みの予備の回転式弾倉まである。

 これがここにあるということは、今のライラは丸腰だ。


 オレは迷うことなく、ライラのリボルバーと予備の回転式弾倉を手にする。

 弾丸が全て装填されていることを確認すると、服の中に隠した。


「ありがとうございます! すぐに戻りますから!」

「待っているぞ!」


 オレは親指を立てると、再び地上へと戻った。

 向かう場所は、2階の大広間だ。


 大広間に向かい、オレはRPKを撃ちながら走り続けた。




「ライラ!」

「ビートくん!!」


 オレはライラに向かって叫び、ライラはそれに応えるようにオレの名前を叫ぶ。

 ライラはベッドに縛り付けられていた。そして、なぜかその後ろに見える祭壇。強盗はゲムアを除くと、ベッドを取り囲むようにして6人居た。


 強盗連合の奴らが、ライラに何をしようとしていたのか、オレはすぐに理解した。

 身体中が熱くなり、若干の吐き気を催す。

 怒りが全身を駆け抜けていくのを、オレは確かに感じ取っていた。


「ほらね、助けに来てくれるって云ったじゃない」


 ライラが、勝ち誇ったように云う。


「くっ……まさか侵入者って!?」


 ゲムアが目を見張る。


「ゲムア大佐……ライラを、返してもらうぞ!」


 オレはゲムアに銃口を向ける。

 しかし、ゲムアはすぐに部下の強盗たちに命令を出した。


「私は武装を整えてくる! それまでに奴を食い止めるか、もしくは殺害せよ!」

「イエッサー!」

「あっ、待てコラ!!」


 オレが慌てて後を追いかけようとするが、強盗がライラにナイフを向ける。


「動くな! この女の命が惜しかったら、動くんじゃねぇ!!」

「くっ……!」


 オレは要求を呑んだ。ライラの命には、代えられない。

 ゲムアはその間に、奥の部屋へと退却していった。昨日のような勇ましさは、そこにはない。


 ゲムアが完全に奥へと引っ込んでしまうと、強盗はオレに向き直った。


「おいガキ! この獣人女がどうなってもいいのか!?」

「よくないに決まっているだろ!!」

「なら、その銃を捨てろ!!」


 強盗は、オレにRPKを捨てるように要求してくる。

 確かに、この連射ができるRPKの存在は大きい。強盗たちにとってみれば、恐怖でしかないだろう。


 しかし、RPKを手放すことは――。


「おい、どうした!? この女を捨てるのか!? だったら、俺たちがもらっちまうぞ!?」

「……わかった!」


 オレはRPKを地面に置き、蹴飛ばした。

 ベッドの近くまで、RPKが滑っていく。仮にRPKを再び手にできたとしても、取りに行くまでの間に、オレは撃たれてしまうだろう。そしてライラは殺されてしまう。

 それに、今ここでRPKを撃ったら、強盗はもちろん皆殺しにできる。しかし、ライラに流れ弾が飛んでしまうかもしれない。ソードオフもあるが、ソードオフでは射程が短すぎて、有効な打撃を与えられない。つまり、今この状況ではオレの持っている銃はどれも、役には立たない。

 今のオレには、強盗の要求に従うしかない。


「フン、ここで俺を撃ってやるという気はないみたいだな」


 ライラにナイフを突きつけている強盗が、オレを嘲笑した。

 銃を捨てろ、と云ったのはお前じゃないか!

 そう思ったが、オレはその言葉を飲み込む。下手に刺激して、ライラに危害を加えられたらたまらない。


「度胸もクソもねぇな。さすがは畜生を妻に迎える男だ。その程度の奴ってことがよく分かったぜ」


 おい、今、ライラのことを何ていった?

 畜生だと?

 ライラを畜生呼ばわりしたな!?


 もう、許さない!

 ライラをさらったことで許す気など毛頭無かったが、ライラを畜生呼ばわりしたこいつだけは、誰がなんと云おうと絶対に許さない!!

 オレの妻を畜生呼ばわりすることは、オレの目の前でやってはいけないことだ。

 たとえ知らなかったものだとしても、それで罪が許されることはない!!


 オレはライラに目を向け、口を開いた。


「……ライラ、オレのこと、信じている?」

「ビートくんのことは、わたしはいつも信じているよ? だって、わたしの最愛の人だから」


 ライラは当たり前のことのように、そう答えた。ライラの瞳は全く淀みなく、オレを見つめている。

 さすがはライラだ。オレ自身よりも、オレを信じてくれている。

 本当に、ライラと結婚してよかった。


「……ありがとう、ライラ」


 オレはライラにそうお礼を云い、ポケットに手を入れる。

 そして、ポケットから1枚の銀貨を取り出した。


 グレーザーでライラと暮らしていた頃、何気なく銅貨をコップに投げ入れたら、入った。何度投げても、まるでコップに吸い寄せられるように、銅貨はコップに入った。

 それを見たライラは、何度もすごいすごいと云っていたな。

 もしかしたら、オレが射撃がうまいことと、何か関係があるのかもしれないな。


「おい! 貴様、何をしているんだ!?」

「おうおっさん、これやるよ。そらっ」


 オレはそう云って、銀貨をライラの隣にいる強盗に向かって投げた。

 飛んで行った銀貨が、強盗の顔に命中する。

 狙った通りだ!


「わっ!?」


 突然銀貨が顔に当たり、強盗は驚いて目を瞑る。

 よし、今だ!


 オレは身をかがめて走り出した。

 そしてそのまま、ライラの近くにいた強盗にタックルした。


「ぐあっ!?」


 オレのタックルで強盗は弾き飛ばされる。

 しかし、すぐに立ち上がった。


「やってくれたな……てめぇ!!」


 突き飛ばされた強盗が、ナイフを取り出した。


「来いよ! 銃が無くたって、オレは戦えるんだ!」

「やるじゃねぇか! 気に入った、お前は直々に殺してやる! おいお前ら! 手出しするんじゃねぇぞ!!」


 ナイフを手にした強盗は、周りにいた5人の強盗にそう叫んだ。

 その強盗から発せられたオーラにビックリしたのか、強盗たちは頷いた。


「ビートくん……!」

「ライラ、大丈夫だから」


 オレはライラにそう云って、強盗と対峙する。

 そうだ。オレには銃が無くても、生まれ持った武器がある。

 それをこれから、お見舞いしてやる!


 すると、強盗がナイフを手に向かってきた。

 だが、オレはまだ動かない。

 すぐに強盗との距離は、ゼロ距離になった。




「死ねええええ!!」


 強盗は絶叫しながら、オレにナイフを振りかざそうとする。

 オレはその場にしゃがみ込むと、ナイフの刃がオレの身体に突き立てるよりも早く、強盗の股間に自分の頭をぶつけた。


 ぐしゃり。

 そんな嫌な音が、オレの頭のほうで聞こえてきた。


「あがあ!!」


 強盗は激痛に悲鳴を上げると、その場で固まった。

 手からナイフが落ち、そのまま仰向けに倒れる。口からは泡を吹いていて、完全に意識を失っているようだった。


「どうだ! オレの最後の武器、石頭だ!!」


 久しぶりに、これを使ったな。

 最後に使ったのは、グレーザー孤児院に強盗が押し入ってきて、ライラを助けようとした時だったかな。

 いや、今はそんなことを考えている場合ではない!

 まだ残っている強盗が、5人はいる!


 だが、それもあまり問題はなさそうだ。


「や、やられたぞ!」

「くそう、命令に変更はなしだ! ぶっ殺せ!!」


 強盗たちが、武器を構える。


「ライラ、そのまま伏せてろ! 絶対にベッドから身体を起こそうとするな!」

「うん!」


 ライラにそう云うと、ライラはベッドの上でじっと身を固めた。

 オレは服の下に隠していたソードオフ……ではなく、リボルバーを取り出した。

 ソードオフは、すぐに弾丸が拡散する。ライラが目の前で伏せているのに、ソードオフを撃ったら巻き添えを食らってしまう。


 オレはリボルバーのハンマーを下すと、1人の強盗を撃った。


「ぐあっ!」


 強盗が倒れるよりも早く、すぐに次の強盗に銃口を向け、左手でハンマーを下しながら撃った。

 そしてさらに隣にいた強盗を同じように撃ち、すぐに大きくターンした。

 オレの背後にいた強盗たちを、リボルバーで残さず撃っていく。


「ぎゃっ!」

「あがっ!」

「うわっ!」

「があっ!」


 次々に断末魔の悲鳴を上げて、強盗たちは倒れていった。

 そして十秒足らずで決着がついた。

 大広間に、6人の強盗が倒れていた。


「ライラ!」


 強盗が動かなくなったことを確認すると、オレはすぐにライラに駆け寄った。

 強盗が落としたナイフで、ライラを縛っていたロープを切る。


「ビートくん!」


 自由になったライラは、すぐにベッドから起き上がってオレに抱き着いてくる。

 ほぼ1日ぶりに、オレはライラの体温を感じる。


「ライラ、ひどいことされなかった?」

「牢獄に入れられたけど、それ以外は何もされていないよ!」


 ライラがそう云い、オレは一安心する。

 なんとか、ひどいことをされる前に助け出せた。


「ありがとう、ビートくん! 絶対に助けに来てくれるって、信じてた!」

「ライラ……」

「信じてた……よ」


 そう云った直後、オレはライラが身体を震わせていることに気づいた。

 目には大粒の涙を浮かべ、ライラはそのまま泣き出した。


「ビートくん! 怖かったよぉ!!」


 ライラは声を上げながら泣き叫ぶ。


「ライラ、もう大丈夫だ。大丈夫だから……」


 オレはライラを抱きしめながら、そっと頭をなでる。

 泣き叫んでいたライラは、少しずつ落ち着きを取り戻していった。


「……ありがとう、ビートくん」

「ライラ、もうこんな危ないことはやめてくれよ?」


 オレはライラの目を見て、そう云う。


「今回はひどいことされなかったからよかったけど、もしもライラが殺されたりしたら、オレはこれからどうやって生きていけばいいんだ? もう、こんな無茶なことはしないでくれ……!」

「ビートくん……ごめんね」


 ライラはそう云って、オレの胸に顔をうずめてくる。

 顔を上げると、ライラは上を向き、目を閉じた。


 オレはゆっくりと、ライラの唇に、自分の唇を近づけていく。

 そしてオレたちは、キスをした。




 キスをしたとき、婚姻のネックレスがそっと触れ合って音を立てた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘、評価等お待ちしております!

次回更新は10月7日21時更新予定です!


なんと!9000アクセスを突破しました!

もうあと少しで、1万アクセスです!


読んでいただいた皆様、本当にありがとうございます!

まだまだ物語は続きます。

どうぞ最後まで、お付き合いいただきましたら嬉しいです!

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