襲撃者×襲撃者
文章力がなかなか上達しないなぁ…
そしてなかなかバトル回に入れない
裸パーカーは無性にエロスを感じます。
『おぇっ、がり勉リンクがまた本読んでるー!』
『…………なんだよ。うるさいからあっち行って――って、あっ、ちょっと!』
『ふーん……なにこれ、文字ばっかで気持ち悪っ! こんなつまらないの、何が面白いの?』
『返せ……って、おい! 放り投げるな! 苦労してて手に入れたんだぞこれ!』
『ねぇねぇ、それよりもさリンク! メイリスさんの買い物ついていって《どーりぃー》見たってホント!?』
『はぁ? 俺が見たのは《放浪蟲》で《月狂蟲》じゃないよ』
『一緒でしょ』
『全然違うよ! 前にも説明したろ!? ……あのさぁ、フォル。君はもっと本読んで知識を付けなよ……』
『そんなの何の役にも立たないわ! 敵をやっつける力の方が大事よ! 本ばっか読んでかまけてるリンクとは違って、私は魔力や魔術の訓練をマザーと毎日してるんだから!』
『よく言うよ。この前も魔術の加減を間違えてマザーの本棚燃やし――いでででででででで!』
『うるさいうるさい! 生意気言ってると、どーりぃーがワラワラいっぱい襲ってきたときに助けてあげないわよ!』
『だから大量に湧いてくるのは放浪蟲なんだって! それに君の魔術の腕じゃあ、あいつらに食われるよりも先に命の危険が――って!? ストップストップ! なんで魔導書を起動してんだよ!? シャレにならない――マザー! 助けてマザーーーーーーーーーーーー!!!!』
――――…………
フォルトゥナが目を開ける。
部屋の中が暗い。
いつの間にか寝入ってしまってしたらしい。
「…………夢……」
嫌な夢を見た。
思い出したくもない、あいつの顔。
その隣に立っていたまだ幼い自分――。
「くそっ!」
怒りがこみ上げ、思わず手が届く範囲にあった物を壁に投げつけた。
「もう、最悪……」
バラバラになって床に落ちている目覚まし時計に視線を落とし、顔を両手で覆う。
イライラして、無性に体が熱い。
ベッドから立ち上がると、服を全て脱ぎ捨てる。
シャワーを浴びても、さっぱりしない。
服も着ずに、盗んできた酒しか入っていない冷蔵庫を開ける。
「……また、どこからか調達しないと」
まだ残っている酒瓶を取り出し、一気に飲み干す。
バレたらまたマザーに怒られるな、と思いながら、空になった酒瓶を流しに捨てる。
コン、コン……。
フォルトゥナは突然響いた自室の扉がノックされる音に、体をビクッとさせた。
壁にかけた時計は夜中の二時を指している。
こんな時間に訪問者? もしかして、目覚まし時計を壁に叩き付けた音が煩くて、隣の部屋の住人が文句を言いに来た?
どちらも名前は思えていないが、確か右隣はチャラチャラした男、左隣は老婆だ。
孤児院とは勝手にフォルトゥナ達が名乗っているだけで、このアパートの入居者のほとんどは孤児ではないし、マザー・ヘレナの活動とは全く関係ない。管理人であるマザー・ヘレナが、孤児を受け入れていくつかの部屋に住まわせているにすぎない。
フォルトゥナとある程度面識のある住人は、その荒れ様に理解を示してくれている。だが、最近ここに越してきたばかりの二人とは面識が全くと言っていいほどない。
「……メンドくさっ」
思わず舌打ちが漏れる。
たまたま目に付いたパーカーを、歩きながら裸体の上から着る。
適当に言い訳して謝って、さっさと帰ってもらおう。
「ごめんなさい、夜中に音立てちゃって――」
扉を開ける。
次の瞬間、腹部に衝撃。
吹っ飛ばされ、体が部屋の奥の壁に叩きつけられた。
「がはっ……!?」
衝撃で息が詰まる。
地面に崩れ落ち、激しく咳き込んだ。
「不用心なことだ」
壊された扉の向こうに、立つ人影。
眼帯をした禿げ頭の男――その右手からは煙が上がっていた。
魔術による攻撃。
フォルトゥナは痛みに耐えながら、手首に身に着けた魔導書を起動しようとするが、
「…………っ!?」
起動しない。手首のリングが変化しない。
「無駄だよ、君の魔導書は今封じられている。彼によってね」
壊されたドアを跨いでさらに二人の人影が、部屋の中に入ってくる。
一人はフードを目深に被った小柄の人物。
そしてその後ろからもう一人、
「あーあー、もったいねぇ」
オールバックのノリが軽そうな男が、大男を詰る。
「せっかくの美人なのに。もうちょい丁重に扱えよ。使い道が他に色々あんだろ?」
「我々はこの女を『殺せ』としか命令されていない。ならば殺す以外の選択肢を考える必要があるか? ウルフ、私は貴様のような任務にいい加減な人間とは違うのだ」
「へいへい、あんたの忠犬ぶりにはゲロが出るほど尊敬してますよ」
「あんた達、一体何者なの……!?」
フォルトゥナが三人の訪問者を睨み上げる。
会話の内容からしてこの三人の訪問者は、自分を殺しに来たのは間違いない。
「答える義理はない」
禿げ頭の男が切り捨てる。
殺人の請負ぐらい、ムーンライトシティではよくある話だ。だが、ろくに魔術も扱えないただの少女に、三人がかりでくるなんて聞いたことがない。禿げ頭の男の一撃を受けただけでろくに立ち上がることもできず、吐き気を堪えるのに精一杯なら、なおさらだ。
「誰かと間違えてない? 恨みを買った覚えはたくさんあるけれど、殺されるほどでもないわ。それに私は三人も必要なほどの大物じゃないわよ」
「いいね! 聡明で素晴らしい指摘だお嬢ちゃん」
ウルフと呼ばれたノリの軽そうな男が、背を向ける。
「というわけで、あとは頑張ってちょうだい。俺は帰るから――」
「待て、馬鹿者」
そそくさと退散しようとするその背中を、禿げ頭が威圧して止める。
「貴様、任務放棄でまたママから罰を受けたいのか?」
「分かった、分かったよ。ったく……クソ真面目な馬鹿と組むと大変だぜ。なぁ?」
ウルフがフードの仲間に尋ねるが
「………」
無言。
「…………えぇ……? シカト……?」
「そいつはいつもそうだ」
「なんでまた、こんな変人の集まりと組まされちまったんだか……そういや、ヘドックの馬鹿は?」
「見張りだ。お前と違って目を離してもサボる心配がないからな」
ヘドック。もう一人いるのか。
ただでさえ絶望的な状況が、この上なく悪くなる。
魔導書が起動できなければ、魔術は使えない。魔術なしで四人の暗殺者の相手を? 不可能だ。
魔力による肉体強化だけでもある程度抵抗はできるだろうが、所詮は素人。廊下に出ることも叶わないだろう。
こうなったら隙を見て、重症覚悟で窓から飛び降りるしか――
「ちょっと、いいか?」
ウルフの背後に、血まみれの巨漢がヌッと現れる。
「おっ、噂をすれば。よぉ、ヘドック」
フォルトゥナは彼の両手にぶら下がっている物を見て、息を呑む。
切断面から血が滴り落ちる生首だ。髪を掴まれ、まるで振り子のようにぶらぶら揺れている。
「なんだよ、そいつら?」
「巡回してた、やつら。こっち来たから、俺、殺した」
「巡回……? あぁ、統治局の奴らか。そういやこの周辺でチラホラ見かけたな」
「俺、殺した。二人、殺した。二人、殺した。二人……でも足りないもっと殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい」
「お、おい……?」
「殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺殺殺殺殺殺殺殺したい殺したいんですおかあさまでもだめっだめだめだめだめだめだめだめあれあれあれあれあれれれれれれれれれれれれれれれれそこにいるじゃん目の前に首首首首首首首首がっまんいやいや我慢する必要ないよおいしくおいしくおいしく美しい命を斬り落として差し上げましょうつまりはごめんでぇええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!??」
次の瞬間、ヘドックの拳が、フードの暗殺者を床にめり込ませた。
「…………は?」
その場にいた誰もが固まる。
今こいつは何をした? 何をしている? 仲間を攻撃?
「ごぺっ! ぶべっ!? ぼびょぉっ!?」
振り下ろされた拳と床の間で押しつぶされるフードの暗殺者は、体中の骨が砕ける嫌な音を響かせながら、自らが吐き出した血だまりに沈む。
「あああああああああああああごめんねごめんねすまりんこ今すぐ楽にしてやるからああああああああああああああぁぁぁっっっ!!!!!」
自分で攻撃しておきながら大粒の涙を零しながら泣き叫ぶヘドックは、両手の生首を放り捨てると、腰に差していた鉈を手に取る。
「っ……! 血迷ったかヘドック何をしてぽぎょおぉぉっ!?」
止めに入ろうとした禿げ頭の男を、鉈が一刀両断する。
「あははははははっはごめんよほんとごめんよおおおおおおおおおおおおおぉぉっなんでなんでなんんでえええええええっっ!!!やめたいけどやめだくないいいいいぁいぁいぃ! 殺したくないけどごろじだいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃっっ!!!」
切断面から臓物を零しながら崩れ落ちる。
「オイオイオイオイ! ふざけんなよ、なんだよこりゃ……!」
ウルフは目前に迫った鉈を、身を引いて間一髪で避ける。
だが
「…………あ?」
追撃を避けきれず、胸を横一文字に斬られる。血を吹き出しながら、仲間たちと同じように血だまりに沈んでいく。
「あははははははははははわははははははははははうわあああああああああああぁぁっぁなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでえええぇぇっ!!!!!???」
フードの暗殺者の体に鉈を何度も何度も振り下ろし、狂ったように笑いながら泣き叫ぶ巨漢の男。
フォルトゥナは突然の仲間割れを、殺戮を、ただ茫然と眺めているしかなかった。
だが、頭は自分でも驚くほどに冷静だった。
理由は分からないが、暗殺者の数はこれで一人。そのうえ、フードの暗殺者が死んだことで魔導書が使えるようになった。
今こそが脱出の好機だ。
フォルトゥナが魔導書を起動させるために魔力を集中させる。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいみんなごめん殺したくなかったのに仲間なのになんでなんでなんでオレは悪い子おれは悪い子ママに怒られるごめんなさいごめんなさ――」
「じゃあ、悪い子には俺がお仕置きしてあげよう」
「ぶぴゅっ!?」
懺悔していたヘドックの首を、何かが背後から貫く。
「……え?」
フォルトゥナの眼前で、首と口から血を吹き出しながら崩れ落ちるヘドック。
フォルトゥナが攻撃したわけではない。まだ魔導書を起動していない。
なら、誰が……?
ヘドックの死体の背後から、人影がゆっくりと近づいてくる。
まさか……
「リ、リンク?――」
だが、その期待は裏切られた。
「どうも、今朝ぶりですね」
顔を上げたフォルトゥナを見下ろしていたのは、嘴のような装飾が施された奇怪な仮面だった。
全然グロくならなかった……(汗
次回は冒頭、ちょっとグロイというより痛い描写あります。骨がバキボキ。