現実での自分 その3
商人ギルドに登録のついでに胡椒を金貨十五枚で売ったその日、家に帰ってた俺は日本で金を稼ぐ手段を考えていた。
ベッドに腰掛け、テーブルの上につまれた十五枚の金貨を眺める。俺はなんとかして、金貨を表に出す方法はないかと考えていた。
(確定申告さえしなければ問題無い? いやいや、それは犯罪だから。ばれたら脱税だし)
俺はベッドから立ち上がり、ぐるぐると部屋の中を歩き回り始めた。
なにも案が浮かばないまま、五分、十分と時間だけがすぎてゆく。
そしてあっという間に三十分がすぎた。
足が疲れてきた俺は、ベッドに倒れ込んで枕に顔をうずめた。
(だめだ、全く方法が思い浮かばない)
悔しいが何度考えてみても、異世界という存在が証明できないところから得ている時点で、この金貨はほぼ売ることが出来ない。
(何か他の方法を考えるしか……)
そこで俺は一昨日アップした、ミーヤのプロモーションビデオの存在を思い出した。いずれは広告費でがっぽがっぽという夢を抱いて撮ったはいいものの、金貨に夢中になり過ぎで忘れていたものである。
(そういえば、あれはどうなったのだろう)
俺はいすに座り、パソコンの電源を入れた。そしてネットを立ち上げ、ミーヤの動画をアップしたサイトへととんだ。そしてログインすると、なんとチャンネルの登録者数が二人となっていた。
テンションが上がった俺が早速動画の情報を確認すると、視聴者数は二桁だけれど高評価が二件ついていた。
また更に、『すごい、クオリティですね、感動しました……。』というコメントが一件ついていた。
ちなみに俺は動画のタイトルを『超絶クオリティ! 猫耳美少女アイドルミーヤ』とし、サムネイルにはベッドに座る猫耳美少女ミーヤの写真を使った。一応念のため、動画の説明欄には猫耳としっぽはCGであると断っている。
あとチャンネルの自己紹介には、『日本のアニメが大好きなフランス在住のクリエーターです。よろしくお願いいたします!』と書いた。ちなみに国の設定も、フランスにしている。
(ふむ、よく分からないけれど、滑り出しとしては良いのかな? なんにせよ、こういうのはこまめにアップしないとな……)
いずれにせよ、上手くいったとしても儲けがでるのはかなり先であろう。
(というか、次の撮影はどうしよう……)
まったく何も考えていなかったが、上げるなら早めに上げたほうが良いであろう。
(……いや、それは後回しだ。今は、そう言ういつ儲かるか分からない不確かなものじゃなくて、確実に今儲かることがほしい……)
俺は諦めきれず、新しいタブを開いて大手検索サイトで『異世界、換金』という言葉を打ち込んだ。すると異世界の物をいかにして地球で換金するか、というまさしくなページが一番上に表示された。
そのページをクリックして、読むこと五分。
色々と書き込まれてはいたが、結論はどれも俺と同じで、大々的に繰り返せばいずれ警察に御厄介になるというものだった。
しかしそのページの趣旨とは少し異なるものの、魔法を覚えてそれにより儲けてはどうか、という書き込みがあった。
(そうか、魔法か……)
例えば未来予知を覚えられれば、宝くじなり競馬なりで大儲けするなどはたやすいだろう。確かミーヤは魔法はあると言っていたけれど、そんな都合のいい魔法はあるのだろうか。そもそも俺に覚えられるのか。
(そういえば、ミーヤは魔道具というものがあるって言ってたな……)
俺はミーヤがシャワーを見て、魔道具という言葉を使っていたことを思い出した。つまり魔法を覚えられなくても、そのような道具が異世界には存在するということである。
(とりあえず、これからの異世界での方針は、魔法を覚えられないか試してみることと、こっちで儲けられそうな魔道具を見つけることだな)
しかしそれも時間がかかりそうだし、上手くいくかさえ分からない。
もっと、全然労力がかからず、すぐに堅実にお金が手に入るような仕事はないだろうか。
………まじめに働いているサラリーマンに聞かれたら殺されそうな注文である。
再びベッドに横になり、枕に顔をうずめて考える。
異世界の物を現実で換金するのはとりあえず諦めた。
他の方法で、異世界を使って現実世界のお金を稼ぐ方法は……
その時、俺の脳裏にある考えが浮かんだ。
(そうだ、これなら……)
俺はベッドから跳び起きて、パソコンの前にかじりつき、あることについて調べ始めた。
そして、すぐに調べ終わった。そんなに多くは稼げなくても、それなりにはなりそうである。
とりあえず大学卒業までは大丈夫だろう。俺は安堵の溜息を吐いた。
(とりあえず明日、雇った従業員について確認してみないとな……)
これについてはもう今日できることは何もない。
俺は開いていたページを消した。
パソコンの画面に、アップロードしたミーヤの動画のページが映る。
(ああ、金策といえばこっちもなんとかしないと……)
俺はパソコンの画面を見てそう思った。
動画の更新速度はきっと早いに越したことはないだろう。
(とはいえ、どうしよう。同じような動画を上げても意味ないし……。猫耳美少女にやらせてみたいこと……、メイド……ニーソ……スク水)
時計を見ると、針は五時過ぎを指していた。
時間にはまだ余裕がある。
(よし、コスプレショップにでも行ってみるか)
俺は久々に日本でも有数のオタクの聖地にむかうことを決めた。
家を出て電車に乗った俺は、スマートフォンでコスプレショップの住所について調べた。すると有名なビルのニ階にもコスプレショップであることが分かった。高校時代はよく唯一の友達と学校をずる休みして行ったものなのだけれど、コスプレには興味がなかったので忘れていた。
その店のホームページで店内の様子の写真を見てみる。すると、アニメキャラのコスプレ衣装が豊富なようだった。
(ああ、アニメのコスプレもありかな……)
俺はそんなことを考えながら電車に揺られていた。
電車から地下鉄に乗り換え、聖地についたのは六時過ぎだった。
人が雑多な電気街に降り立った俺は、久々にその空気を感じていた。アニメのキャラクターが描かれた看板や店内に並んだグッズを外から見ていると、非常に懐かしい気分になった。
俺はスマートフォンで調べた店に入り、ニ階のコスプレショップのフロアに上がった。
そこにはたくさんのコスプレ衣装の他に、キャラクターのウィッグやその他関連クッズが並んであった。
また、思いのほか女性用のコスプレ衣装、つまり男性キャラの衣装も豊富に売られている。そのせいか同年代か年下の女性客が何人かいて、正直居心地はあまりよくなかった。
俺は有名なキャラクターの衣装が飾られたウィンドウの前に立った。知っている衣装がいくつもある。昔ほどどっぷりははまっていないが、今でも有名どころのアニメなら見ているので分かった。
(あ、そういえば、服のサイズでいくつなんだろう)
よく考えれば、ミーヤの服のサイズをよく知らない。一番小さいサイズので大丈夫なのだろうか……。
俺が悩んでいると、隣から声が聞こえた。
「あれ、もしかして一郎」
下の名前を呼ばれたので声のした方を向くと、そこには一人の男が立っていた。
一瞬誰だろうと怪訝に思った俺だったけれど、顔を見て気付いた。そこにいたのは、高校時代の唯一の親友、井上優治だった。
「おお、優治!」
驚いた。高校卒業以来初めて見る優治は、高校のときとほとんど何も変わっていなかった。ぽっちゃりとしただるま体型もそのままであった。
優治が笑顔で近づいてきた。
「久しぶり、一郎。え、なに、こんなところで何やってんの?」
「え、いや、なんていうか、知り合いのコスプレ衣装を探しててさ……」
「あ、もしかして彼女とか?」
優治が笑顔で聞いてくる。もともと社交的な人間だったけれど、なんだか前にもまして明るくなったな、この男は。
「そんなわけないだろ」
俺は鼻で笑った。
「そうなのか、しかし久しぶりだよな。高校卒業以来か」
「ああ、確かに。しかし、こんなところで会うとはね。え、今でもよく来るの?」
「うん。結構ね」
優治と思い出話に花を咲かせていると、一人の女性が優治の後ろから近づいてきた。
「あれ、優ちゃん、その人は知り合い?」
鞄を肩から引き下げた小柄なその女性は、親しげに優治に声をかけてきた。
「ああ、美由希。うん、俺の高校時代の親友で、田中一郎」
「初めまして、田中さん」
「あ、初めまして」
美由希というらしいその女性は、にこやかにあいさつをしてきた。俺も会釈を返した。
「えっと、どちら様」
「ああ、彼女」
「優ちゃんの彼女の福田美由紀です」
え、マジですか。普通にかわいい。
俺は思わず言葉に詰まった。
「今もさ、美由希の買い物にちょっと付き合ってたんだよ」
「そうなんだ」
優治が美由希と下の名前を呼ぶたびに、背筋がぞわっとする。
「タナカさんは、ここで何の買い物をしているんですか?」
福田さんが俺に尋ねた。
「ああー、えっと、ちょっとコスプレ衣装を探していて」
「え、田中さん、コスプレするんですか!」
俺が答えると、福田さんがくいついた。
「あ、いや、俺じゃなくて。俺の知り合いに頼まれていて……」
「へー、その知り合いは男性ですか、女性ですか?」
「一応、女です」
「そうなんですか! ならその人は仲間ですね!」
何故かとても嬉しそうな福田さん。
「コスプレが好きなんだよ。美由希は」
優治が苦笑いしながら言った。
なるほど、同姓の仲間が見つかって福田さんは喜んでいるようである。
「今日も美由希のコスプレ衣装の買い物に付き合わされてます」
「だって楽しいよ、コスプレ」
優治が肩をすくめると、福田さんは優治の方を見てそう言った。
本当に楽しそうな二人。まぶしすぎます。
「そうなんだ」
俺は相槌を打つ。ここから逃げたくなってきた。
その時、福田さんがこちらを見てぱっと顔を輝かせた。
「そうだ、折角だから、田中さんも私たちと一緒に、回りませんか? 私、そのコスプレ好きな女の子の話も聞きたいですし」
福田さんの言葉に、俺は内心で超絶驚いた。
「えっと、あ、じゃあ、その、お願いします」
上手い断り方も見つからず、俺はへこりと頭を下げた。
それから三人で店内を回り始めた。
「ちなみにどんな衣装を探しているんですか?」
「あー、よく分からないんですよね。とりあえず似合うのって感じで……」
「え、どういう状況なのそれ」
優治が言った。
「なんていうか、その子はコスプレとかかわいい衣装が好きで、欲しがっていたから、とりあえずプレゼントで探してみようかなって……」
適当に嘘をついた。
「……それ、彼女じゃないの?」
「違うよ」
というかもし彼女だったら、俺が犯罪者として捕まる。
「田中さん、その人の写真とかはないですか」
福田さんが聞いてきた。
「あー、写真というか、一応動画ならあります……」
「え、見ていいですか」
俺は頷き、スマートフォンでミーヤの動画の再生ページを開いた。そして動画の再生ボタンを押して、二人に見せた。
ミーヤがカメラにむかって挨拶する。それを見た福田さんが、俺の手ごとスマートフォンをつかんだ。慌てて手をひっこめる俺。
「え、なにこの子。めちゃくちゃかわいい! しかも猫耳!」
興奮状態の福田さん。優治も驚いている。
「田中さん、このミーヤちゃんと知り合いなんですか!?」
「うん、まあ、一応」
「え、すごい!」
その後は、二人はミーヤの動画を最後まで食い入るように見つめていた。
「すごい……この娘ほぼノーメイクみたいなのに、超絶可愛い!」
「かわいいのもそうだし、この猫耳としっぽのクオリティどうなってんの!?」
興奮する二人から、とりあえずスマートフォンを返してもらった。
「猫耳としっぽはCGらしいよ」
「超絶リアルじゃん!」
まあ、本物だからね。
「田中さんは、ミーヤちゃんにコスプレ衣装をプレゼントするんですよね」
「うん、まあ、そのつもりです」
女の子にコスプレ衣装をプレゼントって、普通に考えるとちょっと変態っぽいな。まあ、男物の服を着せて動画撮影した時点で今更な話しか。
「というか、この子日本語めちゃくちゃ上手いけれど、外人じゃないの。どうやって知り合ったんだよ」
「えっと……大学のサークルで旅行に行って、そこで知り合った。ハーフらしいよ」
優治の質問に適当に答えた。
「それより、どんな衣装がいいかな」
これ以上根掘り葉掘りきかれると面倒なので、話を進める。
「そうですね……。田中さん、ミーヤちゃんの服のサイズはいくつですか?」
「ああ、それが良く分からなくて困ってたんですよね」
「……それだと少し厳しいと思いますよ。見た感じだと、まだ小さいですし、たぶん一番小さいサイズでも大きいんじゃないですかね」
そうか。やっぱり服のサイズは必要か。ならしかたない、コスプレはまた今度にしよう。
「そうですか。ならまた今度、本人に服のサイズを聞いてからまた買うことにします」
「え、会えるんですか!?」
「あー、電話で……」
「今、電話できますか!?」
「……いや、今は無理です」
俺がそう言うと、残念そうな顔をする福田さん。しかしすぐに復活した。
「でも、どんな衣装にするか、それは今決めてもいいと思います」
まあ、それは確かに。
「……もしかして、その衣装でミーヤちゃんは動画をまたアップするのか?」
優治が聞いてくる。
「まあ、それようにあげるつもり。そうだ。というか、どういう動画をアップすれば視聴回数が伸びるかな」
俺が尋ねると、優治ががっと俺の肩をつかんだ。
「一郎。久々に語りあう必要がありそうだな」
優治はにやりと笑って言った。
その後色々な衣装を見て回りった。福田さんはコスプレが本当に好きなようで、今はどのキャラのコスプレが人気だとか、ミーヤにはこのキャラのコスプレが似合うというのを、色々と教えてくれた。
あと、他にもミーヤについて色々と尋ねられた。
店を出た後も、まだしゃべり足りないということで、俺たちは近くのファーストフード店に入った。
俺はちょうどお腹が減っていたので、晩飯がてらそれなりの量を頼んだ。三人でトレーを持って、席に座った。
「猫耳美少女に似合う衣装と言えば?」
優治が問うた。
「絶対、紺のスクール水着にニーソです」
福田さんが力説する。
「激しく同意します」
頷く俺。
「え、いくらなんでも邪道じゃないそれ?」
優治、貴様は何も分かっていないな。
「バカめ」
「アホめ」
二人で優治を攻撃する。
「なんで、そこで気が合う……。というか邪道と言えばさっきの動画だけれど、あれ何でシャツが黒なんだ。そこは白だろう、常識的に考えて」
「あー、それはたぶん。白だと流石にアウトだと思ったんじゃないかな……」
白だと、下手をすると肌がすけかねないし。通報されても困る。
「しかし、ミーヤちゃんにプレゼントを上げようと思い立って、サイズも確認せずにすぐに買いに来るとか。一郎は相変わらずだよな」
「そうか?」
「そうだよ。高校生の時も学校来るなり一緒に、聖地に行こうなんてさそってきたりしてさ」
「ああ、そういえばそんなこともあったかな」
あの時は確か前日の夜、ネットで見たフィギアが欲しくなったのである。
「へー、田中さんってアクティブなんですね」
「いや、でも自分が興味ないことはとことん無関心な男だったけれどな」
それはね。だって興味がないから。
「でも行動的って言えば、優治のほうがよっぽどだと思うけれど」
同人即売会に売り手として参加するくらいだからな。
「あ、それは私も思います。アニ研でも有名ですからね。名物部長として」
「優治、アニ研の部長なんだ」
「まあね、それで美由希が副部長」
ほう、それはまた楽しいだろう。
「そういえば、田中さん。別に敬語いらないですよ。私年下なんで」
「……ああ、そうなんだ。ちなみにいくつ?」
敬語を抜くのは緊張する。
「二十一歳です」
「え、若いね。ということは……」
「美由希は今大学四年。ちなみに俺も大学四年生です」
優治が言った。
「どういうこと?」
「俺、ニ回ダブりました」
優治は笑いながら言った。マジかよ。
「一郎は今何してんの。もう社会人?」
「いや、今修士のニ回生」
「へー、すごいな博士にはあがるつもり?」
「いや、今年就職するつもり」
「そうなんですか。私も今年が就職活動で、気が重いです……」
福田さんはそう言って、一郎を恨めしそうな目で見た。
「優ちゃんがうらやましい……」
「え、どうして?」
「優ちゃん、ブログや同人で稼いでて、だから就職活動しないんですよ」
俺は驚いて、優治の顔を見た。優治は嬉しそうな顔をしていた。
「いや、大学に入ってからさ、個人ブログを初めて、そこに自分が作った同人誌とか、ゲームとか色々販売したら結構売れるようになってさ。それと並行してブログのPVもあがったんだよ。それらが楽しくて、大学時代はオタク活動とブログ活動で必死よ。おかげでニ回もダブったけれど」
「……すごいな、いくらくらい稼いでるの?」
「そうだな、平均五十万はいくかな」
マジかよ……。俺は驚きのあまり声を失った。
同人活動も高校時代は趣味の一環としてやっていたのに。
「私なんか、エントリーシート書くのにひーひー、言っているのに……」
優治を恨めしそうに見る福田さん。
俺は平常心を装っていた。
「でもさ、両親がさ、ブログとか同人なんてよく分からないもので稼いでいないで、ちゃんとした会社に勤めなさいってうるさくてさ。そんなことしている暇があったら、絶対記事を更新したり、同人誌を描いた方が金になるのに……」
「ああ……、まあ親としては会社に勤めてほしいんだろうな」
世間体的に。
「だからさ、もう最近では電話をすれば喧嘩よ。留年した時も烈火のごとく怒ってさ。家に金も入れてるし、学費だって自分で払ってるのにさ」
優治は不満げにそう言った。
俺はそんな優治がうらやましかった。
(俺も変な見栄張らないで、ランクを落としてでも優治と同じ大学に行っていれば、もっと楽しい毎日を過ごせたのかな……)
同じ大学に行っていればちゃんと友達もできて、研究者になりたいなんてかなわない夢を抱くこともなく、皆と就職活動の情報を共有したりできていたのだろうか。
それからも会話は色々とはずみ、ミーヤの話題になった。
「やっぱりさ、今のアイドルはかわいさや衣装も大事だけれど、それだけじゃもう駄目だと思うんだよね」
優治が言った。
「ほら、テレビでもアイドルがいろんな企画に挑戦してるだろ? お化け屋敷とかジェットコースターとかクイズとか。だから再生数を伸ばしたいのであれば、俺はああいうのも必要だと思う」
「なるほどね……」
確かに、そうかもしれない。
「ドッキリとかもいいんじゃない。ミーヤちゃんの私生活をのぞいちゃいます! みたいな」
福田さんが言った。
私生活か……。でも異世界だしな……。それも面白いか?
アイドル番組などを思い出しながら、三人で色々な企画について話し合った。
「そうだ、一郎。お願いがあるんだけれど」
そろそろお開きにしようかというころ、優治が言った。
「あのさ、ミーヤちゃんのあの動画なんだけれど、俺のブログで紹介してもいいかな」
予想外の提案だった。
「俺のブログさ、自分の作ったゲームとか同人とかの他に、毎日気になった情報とかを発信しているんだよ。そこでぜひ、あのすごいCG技術について、ブログで紹介させてもらいたいんだ」
「いや、全然いいと思うけれど。変なこと書かなければ、本人は別に気にしないと思うよ」
俺としては非常にありがたい。
優治は、ぱっと笑顔を浮かべた。
「本当か! ありがとう!」
そしてその場は、俺と福田さんとメールアドレスを交換してお開きとなった。ちなみに、俺のスマートフォンに家族以外の女性のアドレスが入ったのは初めてのことだった。