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第八章 本能 ―Instinct―

 第八章 本能 ―Instinct―


「暇だな。すこぶる」

 あれから1週間以上彼らは来ていなかった。

「だから言っただろ?しばらくは来ないって」

「おっちゃん。しばらく来いへんからってこれじゃあ生き地獄や。

 こんなところに缶詰にされて服も買えへんし。

 ブルーブラッドとは呼ばれたくないんや」

「ブルーブラッド?青い血?」

 彼女が説明をはじめる。

「ブルーブラッドっちゅうのはな、臆病者がチキンって言われるのと同種類のものなんや。

 由来は、肌が白すぎる人って手首とかに青く血管が浮き出るやろ?

 そのことを称してろくろく外に出ずに中で過ごしているいわばお嬢様のことをブルーブラッドっていうんや」

「はー」

「ひー」

「ふー」

「へー」

「ほー」

「余分な三人はどっから来たんや」

 全員がほぼ同時にコーヒーをすする。

「お前ら、本当にいいのか?砂糖そんなに少なくて」

「俺は1個で十分だ」

「私はブラックが好きなので」

「うちも本当はもっと入れたいんやけど少し出てきたからな」

 彼は彼女にちょっかいを出す。

「いつもなんじゃないのか?」

 彼女は机にコーヒーカップを叩きつけた。

「じゃがしい!美しい人っちゅうのはな、常に周りと自分のことに気を掛けているや。

 せやから、ほんのささいなことでも気にして微調整を重ねていくもんなんや」

「お前は『微』調整じゃないんじゃないのか?」

「じゃがしい!」

 またほぼ全員同時にコーヒーをすする。

「ところでおっさん、四号機とか開発しないのか?」

「んー・・・・・・

 水中型とか空中型とか地底型とか考えるにはいろいろあるが、今のところは無い。

 ま、今のところは三機で十分だろ」

 彼女がコーヒーカップから目を離し、空気を見ながら言った。

「四号機かー。今度はイケメンがいいなー」

「イケメンならいるだろ。ここに」

「ここにも」

「はい例外―」

 彼女は即座に否定した。

「しかし、俺は賛成だな。

 こいつよりもっと可憐という言葉が似合う女とかさ」

「かっちーん。うちじゃ不服なんか〜?」

「万に一つも満足しておりません」

「勝負や渉!今度こそ決着つけたる!」

 二人は格納庫へと向かった。

 パソコンのモニターに格納庫が映し出される。

「しかし、二人とも暇人だな。毎日毎日勝負勝負って・・・・・・」

「ですが、まんざら無意味というわけでもなさそうです。

 日々、彼らは成長していますし」

「お前は成長しなくていいのか?」

「私は結構です。

 それよりも終わらせていいですか?毎日だと見飽きます」

「そうだな。

 ふとんがふっとんだ」

 二号機がかなり大げさにずっこけた。

「通信を使ってないのにどこまで地獄耳なんだか」

「やはり、大阪人の本能・・・でしょうか」

 二号機から通信が入る。

「龍牙!またお前か!」

「いいや。今度は城ヶ咲研究員だ」

「どっちでもええ!こっちこい!」

 二号機は通信を切った。

「別に無理に付き合う必要ないぞ」

「見ているよりは、しているほうがよっぽど暇ではありません」

「そうか」


「来たか龍牙!」

「お望み通りだ」

 二号機は姿勢をかがめて突撃する。

 二本の腕が三号機の脚部の付け根をとらえる。

 が、三号機が動くはずも無い。

 三号機は右前足を二号機に向かって打ち付ける。

 二号機が起き上がるその前に三号機は後足を使って仁王立ちをし、全体重を二号機にぶつける。

 が、それであっけなく踏みつけられて動けなくなる二号機では無い。

 とっさの判断で自動プログラムより早く二号機を起立させた。

「力士対ボクサーみたいな感じだな」

 二号機は空振りした三号機の頭部に強烈なアッパーをお見舞いする。

 三号機の頭部が宙を舞う。

「・・・おいおい」

 三号機は余韻に浸っている二号機に右前足を軸にしての回し蹴りをくらわせる。

 二号機が素早く壁に叩きつけられる。

 三号機は二号機がまだ起立していない状態を狙って再度のしかかりをくらわせる。

 が、全ては彼女の思う通りだった。

 二号機は三号機が仁王立ちしている間に屈伸運動を利用して三号機へと跳びかかる。

 三号機の腹部は見事に空を向いてしまった。

 二号機は両後足と両中足を押さえた。

「勝負あり・・・やな」

「・・・負けには負けた。

 だが、三号機の頭部を吹っ飛ばしてどうする」

「あ・・・・・・」

 彼女はようやくその事態に気付いた。

「三号機の頭部は武器も搭載していないし、俺も乗る場所じゃない。

 だが、お前らにとってはそこが全てだ。

 よく考えることだな。

 負け犬の遠吠えにしか聞こえないかもしれないが」

「そうやな・・・すんまへん」

「いや」

 三号機は頭部と胸部の連結部分から部品を撒き散らしながら立ち上がった。

「城ヶ咲研究員」

「大丈夫だ。それくらいなら五分もかからない。

 頭部の話だが、まあ、MWFUW同士で戦うというの今の状況ではほぼありえないからな。星名もあんまり気にすること無いだろ」

「気にするて。もしかしたら遊びのつもりやのに1人殺してしまうところやったんから」

「ドンマイとしかいいようがないな」

「おおきに」


 が、二、三分後には元の彼女へ戻っていた。

「結局のところ、おっちゃんは何をしている人なん?

 国家研究員っちゅうことはのぞいて」

「首都防衛ってところか。

 もっとも、MWFUWの原型を考え出したのは別のやつだけどな」

「別のやつって?」

「同期だ。実験に失敗して死んだが」

「・・・すんまへん」

 彼は全く嫌なことをいった顔一つしていなかった。

「一日に二回も謝るなんて星名らしくないぞ」

「そやね」

 彼は彼女の質問に続けて言った。

「MWFUWの原型ってどんなのだ?」

「AllSpeceTimeRiotBattleWeapon」

「は?」

「AllSpeceTimeRiotBattleWeapon。

 全時空機動戦闘兵器の略だ。どうやらそいつは略語の文字をいじくって、

 アストラビューと呼ばせたかったそうだが」

 彼はコーヒーをすすった。

「アストラビューか。MWFUWよりはるかに呼びやすいな。

 でも全時空機動ってところが引っ掛かるんだが」

「なんでも、この世界の裏にはUnderWorldっていうこの世界なのにこの世界じゃないこの世界があって――」

「この世界じゃないこの世界ってどういうことだよ」

「つまりは両面同じのコイントスの裏と表だと思えばいい。

 ・・・あったら実用価値が無さそうだが。

 UnderWorldで起きたことはOnWorld・・・つまりこの世界にも起きるって寸法だ。

 で、なんかそこに無人兵器とは比べ物にならないような生物が出てきてこの世界に影響が出すぎたからそいつらをやっつけるためにアストラビューは作られたんだそうだ。

 その生物も六機のアストラビューによって全滅させられたそうだが」

 彼は一息つくとまたコーヒーをすすった。

「ほぉ〜。トゥールも国家研究員もまだまだ捨てたもんじゃねえな」

「アストラビューのほうは人型でMWFUWは二脚型なんだけどな」

「うち、人型の方がよかった」

「馬鹿だな。人型の方が無駄に材料費が増えるんだ。

 まあ、確かに二脚型よりこけたときに起き上がりやすいとか、別型でも気軽に武器交換ができるとかいいところはあるけどよ」

「ほぉ〜」

 全員がすすったコーヒーの音は、

 敵襲警報によってかきけされた。

「敵襲!」

「・・・大型戦闘機一隻・・・そこから今も随時無人兵器が投入されている・・・・・・

 やつらも俺達を完全に叩きのめそうと思ったわけか」

 三人はすでに格納庫へと行っていた。

「今回は尋常に無い。兵装ビルも全棟起動させる。

 絶対に守りきれ。この町を。トゥールを・・・・・・」

「おっさん、がらにもなくそう言うこというなよな」

「城ヶ咲研究員にその言葉は似合いません」

「そうやでおっちゃん」

 彼は一呼吸おいた。

「準備完了したか」

「完了しました」

「OK!」

「いつでもどうぞ」

「MWFUW一号機、二号機、三号機、射出!」


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