第六章 関西 ―Kansai―
第六章 関西 ―Kansai―
「・・・吐きそう・・・・・・」
「・・・我慢しろ・・・・・・
言われると本当に吐いてしまいそうになる。
「二号機は一号機と三号機より二倍以上足が速い。
ま、やみくもに追っかけても無駄だってことだな」
「城ヶ咲研究員。やつは聞いていませんが」
「そうだろうと思ったさ」
一号機はすでに走り出していた。
「二つ目の交差点を左・・・・・・か。
気付いていない今なら追いつける!」
一号機は相変わらずの均衡感でなおも速度を上げる。
「見ーっけた!」
二号機は一号機と対して変わりがなかったが、両腕がついていた。
「脚部の損壊はまだ許す。
搭乗室だけは絶対に壊すな」
「もらった!」
一号機と二号機の差があと数メートルと迫った。
しかし、二号機が振り向く。
一号機は後退する余地も無しに二号機へと突っ込む。
二号機は迫り来る一号機を受け止め、遥か前方へと投げた。
「なおっ!」
一号機が後転しながらビルにぶつかった。
ビルが倒壊し、一号機に直撃する。
「神上!」
「大丈夫だ。MWFUWはそんなに柔じゃない」
一号機が瓦礫の中から姿を表した。
「ったく、俺のやつより最新型だからっていい気になりやがって!」
二号機が一号機に向かって二回腕をあげた。
挑発には見えなかったが、それ以外の何物でもなかった。
「・・・なめやがって!」
一号機は二号機へと猛進をしかける。
しかし、二の舞に過ぎなかった。
「感情で動くってのも禁止するわけじゃないが、もうちょっと冷静になったらどうだ?
まず、はっきりした話、足でも近距離でも一号機、三号機共に二号機には敵わない。
機銃で狙うのもありだが、お前の腕だと脚部以外も損害させてダメにしちまうだろうしな。
ミサイルのピンポイントも無理だ」
「じゃあどうしろって言うんだよ!」
「そこは若者なりの柔軟な思考で考えてくれ」
「ったく・・・・・・」
一号機はまた二号機への猛進を開始する。
二度あることは三度・・・無かった。
一号機は振り上げる二号機の腕をかわし、横から蹴りを入れた。
二号機が轟音とともにビルへと倒れこむ。
一号機が機銃を発射したが脚部には当たらなかった。
「搭乗室の損壊率が二割オーバーだぞ」
「わかってる!」
一号機は二号機の脚部を踏み潰そうとするが受け止められて逆側に返される。
一号機に二度目のビル直撃が炸裂した。
「くっ・・・・・・」
二号機は一号機がひるんでいる隙に走って逃げ出した。
「待ちやがれ!」
「神上・・・・・・」
「お前がその言葉で呼ぶな!気持ち悪い!」
「根性さえあればどうにかなるという信念をそろそろ曲げたらいいんじゃないのか?
もう少し柔軟に考えてくれよ。むやみに追いかけたところで燃料切れになる以外に止まる方法は無いんだ。
もっとも、そこまで追いかけたら一号機の燃料のほうがもたないけどな」
「どうすればいいんだ?一体」
それでも一号機は二号機の追尾をやめない。
「神上!」
「剣崎か?」
「妻と別居中の四十代壮年男性と一緒にするな!」
「そうなのか?」
「さっき聞いた」
「お前、あいつのこと敬ってんの?下げずんでんの?」
「国家研究員としては敬っているが、一男性としては下げずんでいる」
「・・・聞くことも無かったか」
「本人が聞いているの知ってるくせにそういうこと言うのやめろ。
・・・事実だが」
「神上!俺のいるところに二号機を来させろ!」
彼が反論した。
「三号機なら二号機をどうにかできるのか?」
「そういうことだ!ただ、俺の姿を消すからな。場所は覚えておけよ!」
「姿を消す?どうやって?」
「いいから黙ってやれ!」
「・・・・・・」
一号機は二号機の行く手を機銃で制限しながら、
三号機のいる場所へと導いていく。
レーダーから三号機の姿が消えた。
「本当に消えやがった・・・・・・
何の案があるのか知らないが、やるしかないか!」
一号機が二号機を三号機がいた場所へと導いていく。
「・・・煙・・・・・・?」
三号機がレーダーに復帰したとき、目の前にも三号機はいた。
「そういうことか・・・・・・」
三号機が腕部を攻撃する。
二号機の唯一の攻撃手段が失われた。
立ち往生する二号機をよそに一号機と三号機は二号機の脚部を破壊した。
「Mission Complete」
「・・・いいとこ取りが。
とりあえずどうするんだ?」
「二号機を足止めすることがお前らの任務じゃないだろ?持ってこい」
「ったく・・・・・・」
一号機が二号機に近づく。
が、急停止した。
「どうやって?」
「・・・そうだったな。わかった。医療班を派遣する。搭乗員も気絶しているようだしな」
「そういえば、搭乗員って誰よ」
「星名美月73・65・72の微妙なやつだ」
「そこだけしっかりしてるなよ。しかも女か」
「さすがに男四人でこれからやってくってのはきついもんがあるだろ。
それに通常語じゃなさそうだし」
「通常語じゃない?どういう意味だ?」
「星名は関西人だ」