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第四章 冷徹 ―Cook-headedness―

第四章 冷徹 ―Cook-headedness―


 モニターに映し出されたのは六脚で背中に砲台を二基つけているものだった。

「へー。こういうのか。俺のやつよりかっこよさそうだな。

 そういえば、三号機って言ってたが、そうすると二号機はなんなんだ?

 一号機と三号機があって二号機が無いわけはないだろ」

「それが、二号機は実はお前より早くテストに引っ掛かったんだがな、

 そいつがものすごいヘタレであっという間に大破したもんだから、

 一から作り直し中なんだ。といっても今日には出来上がるらしいが。

 そいつの名前は・・・長谷川航平・・・だったかな」

「・・・どこかで聞いたことのある名前だな」

「気のせいだ。決して作者にいれろと頼まれたからいれてやったんじゃない」

「作者って誰だよ」

 彼は無視して会話を続ける。

「三号機の搭乗者は・・・と」

 彼の目はモニターではなくパソコンの画面を見ていた。

「ものすごい数だな」

「当たり前だろ。ここに住んでいる全員の名前が書いてあるんだから。

 そういえば搭乗者の顔を見るのを忘れてたな」

 彼は再びモニターへと視線を移す。

「・・・ほう、結構イケメンじゃないか」

「・・・まあな」

「さてと、写真照合・・・っと・・・・・・」

 パソコンが自動的に検索を開始する。

「名前は剣崎龍牙(けんざきりゅうが)、歳は十八、性別男、お前と違って高卒だな」

「・・・悪かったな」

「学歴は・・・出ました!オール5!」

「なんだと!」

「ま、俺と同じくらいか」

 彼は疑いの目を彼に向ける。

「・・・国家研究員になったんだから当たり前だろ」

「・・・おっさんマフィアの――」

「違う」

「じゃあ政治家の――」

「違う」

「じゃあ金持ちの――」

「違う。

 俺は両親が国家研究員っていう立派なサラブレッドです」

「・・・本当なんだか」

「国家研究員に面接は無いからな」

「それなら合点がいく」

 ようやく彼が行動を開始した。

「・・・遅いな」

「三号機は高火力型だからな。足の速さは関係ない」

「二号機の速さって――」

「テストが来るまで教えない」

 彼は手を合掌し、頭の上にあげて姿勢を低くした。

「そこをなんとか!」

「やだねったら、やだね」

「古っ!」

 彼が少し嫌な顔をする。

「まだ現存してるぞ」

「そういう問題じゃないんだよ。流行ってやつだ」

「はいはい、どうせ私は流行に乗り遅れていく壮年Aですよーだ」

 別のモニターが近くに彼らがいることを伝える。

「俺って出なくていいのか?」

「当たり前だろテストなんだから。

 お前が出て行ったら子供の入試に親が付き添ってやるようなもんだ」

「親って言ったってたかだか二回の戦闘経験しかないけどな」

 彼が一番近くにいた彼らにレーザー砲を発射した。

「レーザーかよ!」

「言っただろ?高火力って。

 それにしてもいいな、こいつは無口で。

 お前の時は独り言ぶつぶつぶつぶつ言いまくってるからストレス溜まりまくりだったぞ」

「・・・それは悪うござんした」

 彼は彼らに向かってミサイルを発射した。

「もう使い方覚えたか」

「そんな悠長なこと言ってられるのか?」

 彼はレーダーのモニターを指差す。

 数限り無い点がうごめいていた。

「三号機なら抜け出せるな。一号機だと無理だが」

「なんで俺は無理なんだよ」

 彼はなぜか足を組んだ。

「一号機の最強武器は搭乗室後部から出る極太レーザーだ。

 あれだと一方向には抜群だが広範囲となると話は別だ。

 三号機は全ランチャーからのミサイルとレーザーの乱舞。

 ミサイルの数は最大で三百五十近く搭載可能だったはずだから確実にやれるな。

 使えればの話だが」

 彼は両手を使って彼らにロックをかけ始めた。

「ずいぶんとトントン拍子だな」

「まあいいじゃないか。手間が省ける」

 辺りを煙が覆い、目視が不可能になった。

「上上ってとこか」

 レーダーモニターの点は全て無くなっていた。

「ちょっと待てよ。三号機も写らないぞ」

「たぶんお前と同じ様に飛んできたやつらにぶつかって操縦室だけになったんだろ」

 彼は疑問に思った。

「俺が操縦室だけになって気絶しなかったらどうしたつもりなんだ?」

「・・・誘拐、かな」

「あいつの場合でもか?」

「そういうことになるだろうな」

 彼は小さい声でこうぼやいた。

「・・・計画性無さ過ぎ」


 彼が運ばれてきてから約二時間が経った。

「そろそろ起きてくるところなんじゃないのか?」

「そうだな。起こしに行ってくるか」


 彼は運ばれてきた初日とは大違いでノックした。

「許可する」

「許可するって・・・・・・」

 彼は扉を開けた。

「やー、おは――」

 と言う暇も無く、彼は彼に背負い投げされた。

 彼の背中に電撃が走る。

「お、お前・・・・・・」

「俺の名前はお前ではない。剣崎龍牙だ」

「さっき許可するって言ったくせに・・・・・・

 それに初対面の男にいきなり背負い投げって・・・・・・」

「許可したのは部屋に入る権利だ。俺の体に触れる権利じゃない。

 それに、俺は初対面であろうが、女であろうが不審な奴には容赦しない。

 ましてやそれが、俺を拉致した犯人に近いと思われる人物ならな」

 彼は背中をさすりながら立ち上がった。

「ここの床は畳じゃないんだぞ」

「受身を取らなかったお前が悪い。ちゃんと受身さえ取っていればすぐに反撃できたはずだ」

 彼は一つ溜め息をついた。

「・・・俺、神上渉」

「証拠となる物は」

「・・・そんなもんねーよ」

「なら信用できないな」

「名前ぐらい信用しろよ」

 彼はなんとか椅子に座った。

「お前のような偽名らしい偽名など、とうに信用できん」

「偽名じゃねえよ!それに剣崎龍牙ってなんだよ!剣豪みたいな名前しやがって」

「その通りだ。俺の家は鎌倉時代から続く剣崎家だからな。

 無論、鎌倉から江戸にかけての先祖は全て武士だ」

「とりあえず、信用してくれないか?」

 彼は彼を睨んだような目つきで見た。

「わかった。通称、神上渉ということにしておいてやろう」

「・・・どうもその立場上ですよー目線が気に食わないんだよな」

「実際そうだろうが」

「はいはい」

 彼は彼にみぞおちをくらわせた。

「なっ・・・かっ・・・・・・」

「はいは一回だ」

 彼は白目を剥き出しにして気絶した。

「強すぎるのも罪だな」


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