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森での出会い

 時は過ぎ、この村に来てもう3ヶ月になっていた。俺は正式に村民として認められ、自由にできる裁量が増えた。森仕事も一人で行うものについては、任されている。思うに精霊祭から村人といっきに打ち解けた感がある。腕相撲や飲み比べが印象深かったらしい。


 今日は一人で森仕事だ。この森はコルトの森と呼ばれていて、クィールとエルフが共存しており、外部から容易く侵入されないようにエルフによる結界が張られている。

(チラッ)

 クィールは戦闘力は高いが、大規模な戦争などには向いてない戦い方なので個人として外に出て行くものは居るが、村は森の中にあるのだ。

(コソコソ)

エルフは殆どその姿を見せない。シャールテさんはかなり特別らしい。

ウルッグは森の外に国がある。彼らは結束が強く集団での戦いにも秀でているので、人族と渡り合うことができるのだ。

(ソォーーー)

 そして、この森の例外中の例外『ギィ』だ。それが何なのか誰も知らない。とにかく森で仕事をしていて『ギィ…』という声? 音? が聞こえたらその日はもう仕事を止めて森を出ろと強く言われた。


 ロットンさんから森の事を教わった事を思い出しつつ、薬草とキノコの採集。作業は順調だ、順調なのだが…さっきからのコレが問題なのだ…。

(じーーーーー)

 こちらの様子を伺っているエルフ少女?(見た目では年齢がわからない)がいるのだ、しかもこれは…自分の姿は見えていないと思い込んでいる…。

 最初はかなり警戒していたようだが、今では大胆に俺の採集している様子を眺めてくるようになった。気が付いていないフリをするのも結構大変なんだよな…。


だいたい、エルフには精霊がついてるんじゃないのか? いいのかこんなんで? 教えてやら無くていいのか?!


「ふ~」

 額の汗をぬぐい、立ち上がる。

「ひゃっ!」

 立ち上がった俺に驚いて、コテンと腰を抜かすエルフ。あわてて口を押さえているが遅い。

「ん~?」

 気づかなかったフリをしながら思った。今日はもう帰ろう、ギィが来たって言おう。

完全にとばっちりなギィだが、案外こういう理由で生まれた存在なのかもしれない?


見るとは無しにエルフを観察してみると、歳は見た目どおりなら14才~16才といったところか、髪は銀色だった。エルフにも髪色に種類があるのかな? 帰ったらシャールテさんに聞いてみよう。


「さあて、きょうはもうかえるかー」

 本来言わなくてもいいのだろうけれと、何となく口にだしてみる。それを聞いた銀髪のエルフは寂しそうな表情を浮べ、立ち上がって手を振っていた。

 うーん、悪い子では無いんだろうけど…。


 その後、家に戻った俺はシャールテさんに森で見たエルフについての話をしてみる。

「銀髪のエルフもいるんですねー。シャールテさんとロッテしか見たこと無かったから、皆金髪なのかと思ってましたよ」


「え? いつ? それどこで見たの?」

 ずずいと、こちらに近寄ってくるシャールテさん。意外にも強い関心を示すシャールテさんにちょっと驚く。

「それがですね…」

「そう、森でそんなことが…」

 シャールテさんも唖然としている。


「まあ、そうそう会うことも無いでしょうけど」

「う~ん、どうかしら?」

 どうしたんだろう? シャールテさんは明らかに心当たりがあるようだ。

「銀髪のエルフについて知ってるなら教えてもらえませんか?」

「そうね…ロッテが寝た後でもいいかしら?」

「わかりました」

 ロッテにさえ知られないほうが良い話なのか…。なんだか厄介な事態に巻き込まれて居そうな予感がする。


 その夜、ロッテが眠りについた後、シャールテさんとテーブルにつく。銀髪エルフについて聞くためだ。

「銀髪のエルフについてなんだけど、まずエルフにとって銀色の髪がどういうものか説明するわね」

「銀色の髪のエルフには、精霊の加護が無いと言われているの。それはエルフの里では凄く肩身の狭い思いをする原因になるわ。そして銀髪の子は15才になると里から追い出されるの」

「そんな…追い出すなんて」

「エルフも15才となれば森で生きる分には一人でも何とかならなくもないわ」

「それにしたって酷い話です、多分あの子寂しいんだと思いますよ」

 エルフが排他的、純血主義というのは聞いてはいたがここまでとは。こんな話はロッテに聞かせたくないのも頷ける。


「それで、その子がツアールさんに見えてないと思ったのは、多分エルフの里の結界から出た影響を良くわかっていないのだと思う」

「エルフの里の結界は森の結界とは違うんですか?」

「それを詳しく言うわけにはいかないの、ごめんなさい」

 頭を下げるシャールテさんだが、それはエルフ一族の秘密だろうから仕方ないことだ。

「いえ、シャールテさんが謝ることではないですよ」


「でもそれだと、あの子は他の人にも見つかる可能性があるということですね?」

「うーん、それが不思議なのよねぇ」

 左手を頬に当て、小首を傾げるシャールテさん。


「不思議というと?」

「普通エルフは森の中なら、精霊の力や結界がなくても人と出会わない様にする事位簡単に出来るはずなの、なのに自分から近寄って来るなんて…」

 確かに、姿が見えてないと思うのと態々近寄って来るのはまた別の話だ。俺の何かがあの子の興味を引いた? 俺はあの時薬草とキノコ採集をしていただけだが…。


「理由はわからないけれど、またツアールさんの所へ現れるかもしれないわ」

「ふーむ、俺は見てないフリを続けるべきでしょうか?」


「思い切って話しかけてみたら?」

 ちょっと面白そうなシャールテさん。


「え、いいんですか?」

「エルフは見つかってはいけないという決まりがあるわけではないのよ、ただ向こうはビックリするでしょうけどね」

「森で一人きりよりもお友達が出来たほうが、その子にとっても良いと思うの」

 そう言われ、あの別れ際の寂しそうな顔がチラッと頭を横切る。


「わかりました、もし次会ったら話しかけてみることにします」

話しかけてみるだけなら問題ないだろう。

この時の俺はそう安易に考えていたのだった…。

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