失恋?と怒り
騎士ってなんか好き
もう少しで魔術の間
心臓をドキドキさせてコソコソ隠れながらも
何とかたどり着けそうだ
ふっと周りを見ると
色とりどりの花が咲き乱れる美しい庭園が広がる
流石王家の生活エリアっといった所だ
そこの中心にあるベンチに腰を掛けている二人の姿が目についた
遠くだが、しっかりとその姿がわかる
勇者さんとサラサ姫だ
離れた所に数人の護衛と侍女が待機している
二人は仲睦まじく微笑み合い何かを話している
私はなぜかその光景から目が離せなくなっていた
そして・・・・・
二人の距離が縮まり
口づけをした瞬間
血の気が引いた感覚に襲われ眩暈が起きた
私は何をやっているのだろう
ふっと疑問が浮かぶ
さっきまでの昂揚感とはかけ離れ脱力感が襲ってくる
二人から目を逸らし魔術の間まであと少しの通路で壁を背中につけペタリと座った
さっきまで感じなかった騎士の服装は重く兜は鬱陶しく感じる
俯き暫く考えた
何でショック受けてるんだろう
勇者さんの事別に好きって訳じゃないし
前の世界の記憶もないし
勇者さんが幸せになるのならコレでいいじゃない
でも、勇者さんが私の記憶を戻す為に王族になる偽装結婚の可能性も
ここで私がウジウジしてても何もならない
そう結論づけ、重たい体を動かし魔術の間に向かった
コンコン
扉をノックしても返事がないので中に入ってみる
「誰かいませんかー?・・・・・・・」
誰もいない
鍵も掛かっていない
まさかの魔術師グラディウスは留守!?
がっくしと肩を落とす
そうですよね、魔術の間に行ったら絶対会えるなんて、そんな都合良くないですよね
トボトボと部屋の奥に進むと紫色の扉があった
少し気になって扉の中を覗くと床一面に魔法陣のようなものが書かれている部屋
なんだろう?不思議な感覚に襲われる
ゆっくりと魔法陣の中に入る
すると床が仄かに光りだす
これは、なんだかヤバい気がします!
私は急いで魔法陣から出ようとしたが遅かった
視界は光に包まれ
次の瞬間気を失った
ふわふわ
目を覚ますと見覚えのない天袋が視界に入る
あまりにふわふわなベット
寝心地悪すぎですっと思いながら辺りを見回す
今までに見た事がない豪華な部屋
騎士の鎧は脱がされてインナーのシャツと短パンだけになっている
サラシは付いているみたいです・・・・・
ムクッと起き上がりベットから降りる
体が怠い
本当に怠い
しかし、早く帰らないと騎士の少年と神官シルクが困るだろうと思い
部屋を見回し鎧を探した
すると扉が開き誰かが入ってきた
そこには見覚えのある黄金の髪をなびかせデカい図体のイケメン?王子
エル王子だ
その後ろに短髪の黒髪に黒い瞳、恰好は紺色のローブに金色の刺繍がされている魔術師風の男性が立っていた
もしかして・・・・・
「まさかこんなに早く此処まで来るとはな」
エル王子が呆れてるというか表情で私を見てため息をついた
魔術師はフッと笑う
「あ、あの!もしかして魔術師グラディウスさんですか!?」
私は王子のことなんか無視して魔術師風の男性をみて聞いた
「ああ、そうですよ。記憶の事ですよね?」
面白いものを見るその瞳は黒く揺らいでいる
「はい!戻してください!」
真剣な眼差しで魔術師グライディウスに詰め寄ると彼は首を傾け
おかしいなーっといった表情を浮かべた
「もう戻ってないですか?」
「え?」
私は頭の中で記憶を思い起こす
・・・・・・・ない
勇者さんとの夫婦だった記憶ないです
「ないですよ?」
疑いの目で魔術師を見ると魔術師は考え込む
「貴方が勝手に入って発動させた魔法陣は記憶を呼び起こす魔法だったのですが」
記憶を起こす魔法陣?
「エル王子に頼まれましてね」
私はエル王子を見ると顔を背け赤くなっている姿
「べ、別にお前の為じゃなくアキラの為に・・・・お前が勝手に来るから予定が狂ったではないか!」
そうか、王子は最初から私を魔術師に会わせる手筈だったのか
なんだかんだでいい奴だなー
しかし、記憶戻ってません
「もう戻らなくてもいいじゃないですか?私の妻になるわけだし」
「てめぇ・・・・・・・」
「・・・・・・・」
黒い魔術師グラディウスがにっこりして私に言った
こいつ・・・
私とエル王子頭に青筋を浮べながら睨んだ
「だって気になるじゃないですか?他の世界の人間とこちらの世界の人間の子供がどうなるか!沢山子供を作って研究したいじゃないですか?」
黒い瞳はうっとりとして私を見る
その言葉を聞いた瞬間、頭の血管がおそらく切れた(本当に切れたら死にますが)
右手に思いっきり力を込めて
バチン!!!
魔術師グラディウスの左頬をビンタしたのだ
左手でよろめいている魔術師の胸倉を掴み
「研究だぁ?人の記憶と人生勝手に奪ってふざけるな!!」
完璧に切れている私は顔を真っ赤にして魔術師に怒鳴りあげた
魔術師は左頬を腫らし目を見開き固まっている
エル王子は焦ったように私を止めに入った
怒りが収まらない私はもう一発叩こうと暴れる
「ちょ、まってって!抑えてー」
エル王子の力に敵うわけもなく両腕を掴まれ魔術師から引き離される
「記憶を返せ!!!元の世界に・・・・」
元の世界に帰せっと言おうと思った瞬間、お父さんの顔が浮かんだ
私は元の世界に帰りたいのか?それとも
涙が出てきた自分がどうしたいのか解からない
この世界での3年間の記憶しかないので前の記憶が必要なのかすら解らなくなる
魔術師グラディウスは魔術で若返ってるって噂ですよーイイナー