王子と私
うおー
それから数日後
サラサ姫と勇者の結婚が決まったと国中が騒ぎ出した
婚礼儀式は1か月後と急な展開
私は毎日の仕事をしながら
心は上の空だった
家ではボーとする時間が増え、食堂での注文ミス連続
自分では何もする事が出来ない
その事にイライラする
そんなある日
「・・・・・・・なんです?」
家で洗濯物を干していると
村の商人風に変装をしたエル王子が現れた
私はこの非協力的で憎むべき国家の王子の顔をみると吐き気がしてきた
「そ、そんな露骨に嫌な顔するなよ・・・・・」
流石の嫌味王子もタジタジだ
相当酷い顔をしていたのだろう
「お忍びで村に来たので、様子を見に来ただけだ」
「また偽物じゃないですか?」
私は目を細め軽蔑の目でみるとプチッと洗濯物に視線を戻し、干す作業を再開した
「な!ばか、違う!ゼロとは品が違うだろう!」
品ねー
パンパンと洗濯物を干していく
「・・・・・アキラの結婚の話聞いたか?」
私は洗濯物を干す手を止めて、チラッと王子をみる
王子はフッとどこか優しげな表情を変えた
「・・・・・」
なにも答えたくない
こいつらのせいだし
私はふんっと顔を背けた
「お前・・・・・こっちはこれでも申し訳ないと思っているんだ」
エル王子は申し訳ないと思っているのか
確かにすみませんっていった表情を少し浮かべている
す・こ・しですよ!!
「もしお前が望むのなら、内密に城に入れてやる事が出来る」
「え?」
城に?
「最下層の侍女程度だが、俺が口添えをして入れなくはない。少しでもアキラの傍にいたいのなら・・・・・」
勇者さんの傍に
でも私はこのまま町にいて、いつか誰かと結婚して幸せになるって
思ってたのに・・・・
少し考えて、フッと笑えてきた
私はただ待つだけが嫌だったのだ
自分で何も出来ないのが苦しかったのだ
「エル王子、お願いします!」
父には後から了解を得よう
「・・・・・お前たちホント愛し合ってるんだな」
呆れた顔で私をみると
「は?別に勇者さんの傍にいたいとかじゃないですよ?」
何言ってるの?って顔で王子を見返す
「・・・・・・・」
王子は開いた口をパクパクさせながら残念な顔でこちらを見ていたが明日迎えを寄こすと帰って行った
お忍びで様子を見に来ただけにしては、結構重大な話でしたよ?
エル王子は実はいい奴かもっと少し思った
父に城に行くことを話すと案の定反対された
が、私も強情な性格
ここ2年で父はコレと決めたら曲げない私の性格を知っている
「何か困った事があれば、神官シルクを頼れ」
っと、父から青い封筒を預かった
次の日、早朝に迎えがきた
小さな馬車に士官風の男性が乗っている
私はさほど大きくないカバンを持って馬車に乗った
父は悩ましい顔を浮かべて私を見送った
馬車の中で簡単な説明があった
城では、下働きの住み込みで働く侍女らしく
レグナルド家の末女という身分らしい
ある程度身分がないと城では働けないらしく、王子が手配してくれたとかなんとか
連れて行かれたのは侍女の寮だった
「侍女長のベルザです。よろしく」
かなり怖そうなお局様が私を迎えてくれました
「カリン・レグナルドと申します。よろしくお願いします」
覚えたての名前を間違えず言えました
それから、建物内を簡単に案内され
侍女の服装に着替えさせられ早速仕事です
下働きなので、掃除や雑務ばかり
普段とやってる事が対して変わらないのでそんなに大変ではないです
煌びやかな城の中
不思議な感覚になるなー
「ほら!ボーとしてたら侍女長に目をつれられるよ!」
私より身長の低い可愛らしいワインレッドの瞳の侍女にコソっと話掛けられた
彼女はマリリンと言って、今年の頭に侍女に入ったらしい
とても人懐っこくて18歳の可愛いお友達が出来ました
若いっていいなー
お城の侍女になり数日がたった
他の侍女さんともそこそこ仲良くなり少しずつ城の中の情報を集めた
私の目的は魔術師グラディウスに会って記憶を戻してもらう事
私の為に姫と結婚を決めた勇者さんには悪いが
ただ待っているなんて出来ない
流石に最下層の侍女は王家が生活するエリアに簡単には入れそうにない
その奥に魔術の間があるらしい
ダメもとで神官シルクさんに頼んでみるか
そう思って父から預かった青い封筒をもって神官シルクがいる神殿の間に行く事にした