記憶と勇者の結婚
「本当か!?」
勇者さんは目を輝かせ私を見た
私も消えた記憶が気になる
もし、戻るのなら戻って欲しい
「魔術師グラディウスに会いに行く。ゼロ案内してくれないか?」
勇者さんがゼロにいうと
「いいですよ。でも条件があります」
「サラサ姫と結婚して下さい」
!!??
勇者さんは顔を曇らせ静かにゼロを睨む
あーさっき誤解を解いて、和解したと思ったのにまた険悪なムードになった
「・・・・・自分で探す」
「無理ですよ。魔術師グラディウスは王家直属魔術師、アキラでもそう簡単に逢うことは出来ません」
魔法使いゼロはエル王子をみる
王子は頷き
「俺としてもアキラにはサラサと結婚して欲しいと思っているが」
だから、私の記憶を取り戻す事には協力出来ませんって事かな
「そうか・・・・・俺は魔王を倒した、これ以上俺に用はないだろう?もう自由にさせてもらう」
再び、勇者さんは私の腕を掴み部屋を出た
部屋を出てすぐサラサ姫が現れた
姫が悲しくも愛おしそうに勇者さんを見つめているが
勇者さんは無視をして通りすぎた
少し、心が苦しくなる
勇者さんは馬で来たらしく、それに乗って町に帰った
家に帰ると父が待っていた
「ご無沙汰してます。お聞きしたい事がありまして」
勇者さんに挨拶に軽く頷き家の中に案内した
お父さんは私にお茶の準備を頼み勇者さんとダイニングテーブルの席についた
「魔王を倒したそうだね。カリンの為かい?」
「はい・・・・・」
勇者さんは何か覚悟をした様に鋭い眼差しで父を見つめた
「お伺いしたいのですが、魔術師グラディウスをご存じでしょうか?」
そうだ。元王国近衛騎士団隊長の父ならどこにいるか知っているかも!
私は急いでお茶の準備を済ませ、テーブルについた
「あぁ。知っている・・・・・が」
父はお茶をすすりながら答える
「魔術師グライディウスがカリンの記憶を奪った可能性があります。もし、そうなら記憶を取り戻す事も出来るかもしれない」
「・・・・・その通りだ。記憶を奪ったのはグラディウスだ。その場に私もいたのだから」
父は静かに語りだした
「君とカリンが召喚されて、先に目を覚ましたのはカリンだった。隣で眠っている君を心配していてね。グラディウスが記憶を消し監禁したんだ。だが数日後、グラディウスはカリンを自分に嫁にすると言い出してね」
私は驚き固まった
嫁ですって?
グラなんちゃら、人の記憶を勝手に奪ってなんて奴だ!
「私は反対したよ・・・・・只でさえ巻き込んでしまったのに。だから、カリンを連れ去った」
勇者さんが唇を噛み締め怒りで暗い表情になる
私は自分よりも勇者さんが心配になってきた
このままグラなんちゃらって人に会ったら殺しかねない気がする
それでも、記憶を取り戻す為に会わなければ
「お父さん、その人何処に行けば会えるの?」
悲しそうな目で私をみて、父は静かに目を閉じ考える
「庶民にはとても会える所ではない。王家宮奥の魔術の間だ」
はぁっとため息をついた
「・・・・・なら、俺が姫と結婚すれば逢えるのですね?」
私は目を見開き勇者さんをみた
勇者さんは真剣な表情で父を見つめている
勇者さんが私の記憶の為に姫と結婚
なにか違う気がする
「わ、私そこまでして記憶欲しくないです!!」
必死に否定した
「俺が欲しいんだ!!俺が忘れて欲しくないんだ」
勇者さんは私を見つめ、俯いた
拳は強く握り小刻みに震えている
感情を押し殺した声で
「俺が守れなかったんだ・・・・・」
っとつぶやいた
勇者さんは席を立ち、黙って帰って行った
私はなんて声を掛けていいのか解らずそのまま見送った
私は勇者さんに愛されていたのだろう
胸が苦しい・・・・・