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魔王の卵

あざーす!

いつもの朝、いつもの侍女寮の自分の部屋で目が覚める

その日は寝癖がうまく治らず朝からグラスを落とし割ってしまい、なんだかツイてないなーっと思っていた

そんな日の予感は大体的中する・・・・・

サラサ姫の所に行けば、昨日アキラと散々長話をして上機嫌だったのが一変

昨晩なにがあったから知らないが、かなり機嫌が悪く私に八つ当たりしてくる

これってパワハラってやつじゃないか?


「こんなドレス着たくないわ!新しいのが欲しいの!!仕立て屋をすぐに呼びなさい!」


呼んでもいいけど、すぐには来れませんよ・・・・・

私とアンさんがなんとかサラサ姫を宥めるとお茶の準備をすると言って一旦侍女室に下がる

アンさんが小声で


「サラサ姫、昨晩ゼロ様が相手してくれなくて拗ねてますの」


あーなるほど。いま巫女様と禁断の書物の検証?中だったな・・・・・

私が呆れていると、アンさんが紙に何やら書いてお金と一緒に私に渡した


「機嫌を直すには、お菓子しかないわ!お願い城下町に行って買ってきて!」


「え、あーでも・・・・・」


一応狙われてる身としては城下街に買い物に行くのはダメな気がするが、アンさんは真剣な顔で私の手を握りしめ


「大丈夫!ちょっとだけですもの。すぐに行って帰ってくればいいのよ!さぁ時間がないわ!」


いつものアンさんらしくない強引さで私は背中を押され侍女室から廊下に出された

紙に書かれた店を見ると確かにさほど遠くないし

走って行って帰ってくれば何とかなるかな?

今日がツイてない日なので、嫌な事は早く解決したい

そうだ!城の門番で休憩している誰かに頼んで買ってきてもらえばいいかも!

そう思ってしまった私が愚かだった・・・・・


いつもいるハズの休憩している城の門番がいない

なんでも、急用で呼び出しがあったとか

仕方ない・・・・・ちょっと行ってくるだけだし・・・・・

門番に止められたが、私はすぐ近くにあるお菓子屋さんに行った

城の門から200mと本当に近い場所にあるお菓子屋さんに入ると色とりどりのスイーツが並んでいる

どれも美味しそうだけど、アンさんから預かった紙に書かれたお菓子を注文した

店員さんは準備をすると小さなお菓子を笑顔で一つ私に差し出す


「新作の試食してをお願いします」


緑色のクリームにベリーが一つのったプチケーキとても美味しそうだった

私は喜んでそれを指でつまみ口の中に頬張る

蕩けるクリームに控えめの甘味が口の中に広がり、ベリーの甘酸っぱさが絡み小さな幸せを感じるが

次の瞬間、意識が途絶えた



目が覚めるとじめっとした空気に薄暗い建物の中で私は倒れていた

壊れかけの壁には植物が自由に茂り、天井も所々なく木々と青い空が少しだけ見える

まるで城のホールぐらいの大きさがある空間の奥に薄汚れた絨毯が続き半分朽ちている玉座があった

そして、それを見つめる魔術師の杖を持った黒いローブの人物

私はそれが誰だかすぐに理解できた


「魔術師グラディウス・・・・・」


今日は本当ツイてない。

私はゆっくりと起き上がり走って逃げようか考えるが、建物の外に青白い結界が見えて顔を曇らせる

カツン

グラディウスが魔術師の杖で床を叩くと床に魔法陣が浮かみ上がりオレンジ色に仄かに光り出した

私の両足が床に吸い付き動けなくなっていた


「わたしはね、ここであるお方と暮らしていたのだよ・・・・・」


背中を向けたまま、静かに語り出すグラディウスに何か違和感を感じながらも私は逃げようともがく

チャームを壊せばアキラが来てくれる!そう思いポケットに手を入れるが何も入っていない・・・・・


「これかい?今、君の夫を呼ばれると困るからね。勇者様には後で来てもらおう」


グラディウスは右手で花のチャームを見せびらかすように持っている

私もしかしてもの凄くヤバいような気がしてきた

グラディウスが振り向き仄かに光る魔法陣の中に入って私に近づく


「カリン、勇者召喚の時になぜ君も召喚されたのか解らない。だが、怒り苦しむ時の君の瞳があのお方に似ていると気が付いた時、何か運命を感じたんだよ・・・・・」


被っていたフードを脱ぎ、黒い短髪に黒い濁った瞳で私を射抜くように見つめ薄らと微笑むグラディウスに私は寒気と恐怖を感じる

何か他の事を考えないと恐怖に飲み込まれて気が狂いそうだった


「あのお方って?」


「・・・・・前の魔王様だよ。わたしはね、前の魔王様に拾われ仕えていたんだ」


魔王に仕える?人間が?

私の知っている限り、魔王は魔獣を率いて人間達を殺戮したり破壊する悪い王様だと認識している

そんな魔王にグラディウスが仕えていた?

私の疑問を悟ったようにグラディウスがクスリと笑う


「遠い昔、わたしは勇者の子孫で魔力があったので魔術師となり勇者召喚を伝承された。その時はまだ魔王が誕生していなく自由気ままな旅をしていたんだ。しかし、なんの運命か、人間の山賊に襲われ瀕死の状態で森で倒れていたわたしを拾い魔力を分け与えたのが、生まれたばかりのあのお方だった・・・・・はじめはいつ殺されるか解らない日々だったが傍に仕え強く神々しく成長する様を見続けわたしは・・・・あのお方の傍を離れられなくなっていたのだ」


どこか悲しく黒い瞳が揺らぐ


「しかし数年後、勇者召喚の噂を耳にし、予想通り勇者が現れあのお方が倒された。あのお方が倒される前私に魔力をあたえ強制的に転送させられたのだ。命を共にと願っていたのに・・・・・その時、魔王誕生の秘密を聞かせてくれた。魔王は勇者召喚時に卵としてこの世界に降臨し、長い年月をかけ不の気を蓄え孵化するのだと・・・・・私は次の魔王もあのお方が誕生するのだと思い勇者の子孫の記憶を消し。禁忌魔法をつかい長い年月待ち続けた・・・・・しかし、誕生したのはあのお方ではなかったのだ」


魔王の卵!?そんな、じゃあ、アキラが召喚されたときにすでに次の魔王の卵が・・・・・

顔を歪めるグラディウスは動けない私の身体に手をかざす


「だから・・・・・勇者(アキラ)を召喚して倒させた?」


「魔王の魔力は勇者でないと断ち切れない。そして、勇者の血縁でないと新しい勇者が召喚出来ない。あのお方も蘇らない・・・・・カリンわかるね?」


ゾクっ・・・・・・


「カリン、お前は私の為に現れたのだと・・・・・」



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