第二章 鈴の音 第四幕
「か、帰れた・・・・」
あれからさらに数時間、彼女が指し示した先を頼りに
響也はようやく見知った場所へとたどり着くことができた。
辺りはすっかり静かになっていて
鈴虫の鈴鳴だけが聴こえている
鳥居の先にある玄関をくぐり、やっとたどり着いた寝床への
安堵感を噛み締める。
「帰ったぞ・・・」
空腹のあまりに足取りがふらつく
「あ!帰ってきた!!」
奥の方から足音と共に聞こえる声
そして、体に走る衝撃
「よかった!よかったよぉ~!!」
来夏が勢いよく抱きついてきた
「大げさだ」
「だって・・・だって、途中でいなくなるんだもん・・・」
目に涙を貯めながら、ぐずる
そんな来夏の頭を撫でながら言ってやる
「言ったろ、しばらくはここに居るってな」
まるで、子供をあやす親の気分だ
かぱーーーーーん!!
「ぐはっっ!?」
乾いた音と共に、目の前が真っ白になる
「今まで、どこほっつき歩いていたのよ!?」
鈴華が腕組みをしながら立っていた
「いや・・・ちょっと道に迷ってだな・・・」
こっちの言い訳も聴かずに
鈴華は言葉を続ける
「せっかくのご飯が無駄になるでしょうが!」
よく見ると、飛んできたのはしゃもじだった
「とっとと食べちゃってよね!」
「鈴ちゃんも心配してたんだからね」
来夏の肩に乗っていたつばめが呆れたように非難する
「悪かったな・・・・」
彼女たちの後ろを歩きながら
少しばかり反省する
遅くなった夕飯を終えて
一人居間に寝転んで響也は考えていた
『目に映るものが全てだとは限らない』
昼間、そして森で迷った時に出会った少女の言葉
「『心は解っている』か・・・」
彼女の言葉をつぶやく
俺は、何かを探しているのか・・・?
物心ついた時に俺はすでに旅をしていたはずだ
何の為に
それすら思い出すこともできないほど
俺は旅を続けている。
俺の旅に終わりはあるのだろうか・・・・?
『ちりん』
鈴の音が聴こえた気がした
だが、それも風に流され消えていく
『今はただ、流れていくだけ』
「そんなの俺はごめんだ・・・」
誰に言うでもなくつぶやいた
静まり返る部屋を
空に浮かぶ満月が、見つめるように光り輝いていた。