第二章 鈴の音 第二幕
「行くところが無いんなら、しばらくは置いてあげてもいいわ」
意味有り気に鈴華が言う。
「た・だ・し」
予想通りの言葉が出てきた
「言っとくが、金なら無いぞ」
「そんなの見れば解るわよ」
失礼なことを言われたが、流すことにする
「あの子(来夏)のそばに居てあげて」
寂しげな眼差しを来夏の居るであろう部屋に向ける
「あなたのこと気に入ったみたいだから、
少しでもあの子が笑ってくれるなら・・・」
「任せておけ」
その言葉を遮るように響也は言った。
「お待たせぇ~っ」
嬉しそうに駆けてくる来夏
「いってらっしゃい」
そそくさと奥へと消えていく鈴華
「つばめ」
肩に止まったつばめに、つぶやく。
「アイツの、鈴華のこと好きか?」
「うん」
迷いもなく答える
「じゃ、アイツのこと頼む」
優しく撫でながら言葉を続ける
「どしたの?急に??」
「しばらくは、ココに居ることになるからな」
「ホントに!?やったぁ~♡」
つばめと来夏、二人同時に喜びの声を上げる
その笑顔を見られるのなら
ココに居るのも悪くはない。
響也は、そう思いながら軽く微笑んでいた。
響也達は、どことなく街を観て回ることにした
小規模ながらもこの街は、結構賑やかで
どこか懐かしい活気に溢れる街だった。
セミの鳴き声に混じりながら街のざわめきが行き交う
響也は、ふと空を見上げる
『ちりん』
その小さな音に目を向けると
そこには、ひとりの少女が同じように空を眺めている
「確か、昨日も同じような事なかったか・・・?」
軽く首を傾げて考える
「・・・・・・」
いつの間にか少女の視線は響也に向けられていた
「よう」
それに応えて言葉をかける
「たしか、昨日もそこで空を見ていたよな?」
が、少女の視線は空に戻る
「なにか見えるのか?」
負けじと少女に尋ねる
「飛行機雲・・・・」
ポツリとつぶやく
空に目をやると、確かに飛行機雲が流れていくのが見える
「空、好きか?」
空を眺めたまま響也は、少女に尋ねる
「別に・・・」
またしてもポツリとつぶやく
目線を少女に戻すが
その姿は、そこに無かった。
「・・・む?」
独り立ち尽くす響也
『ちりん』
さっきも聴こえた小さな音
そこは一面の草原
その中に佇んでいる
「ここは・・・?」
思わず眼をこすってもう一度確かめてみる
むせるような熱気に包まれた街中の光景
セミの鳴き声に包まれ響也は佇んでいた。
「なんだ・・・今のは?」
一瞬の光景に困惑する
だが、そこはセミの鳴き声がこだまする
小さな田舎街だった