第二章 鈴の音 第一幕
燃えていた
空まで届かんばかりに、炎が天に登っていく
自分の手を見る
赤く染まった手には、小太刀があった
すべてが赤に染まる中
独りたたずんでいた
燃えていた
どこまでも赤く染まる
その空は高く遠い
手を伸ばす
そこに映るのは
赤く染まった自分の手だけだった
「・・・・や!」
「きょうや!」
女の子の声が聞こえる
「響也ってば!!」
誰だ・・・?
思い出そうとするが、どうも意識がはっきりしない
「ぐはっ!?」
突然、重い衝撃が俺の身体にのしかかってきた
暗い闇の中で必死にもがく
闇を振り払わんと足掻いた結果
辺りが一気に明るくなった
まぁ、包まった毛布を引っペがしただけだが・・・
「おはよぉ!」
女の子が俺の身体の上に乗っかっていた。
曖昧な記憶をたぐり寄せる
「確か突然襲いかかってきた女の子に、
水の中に突き落とされた上に
すんげぇ怖い女に、裸を見られたんだったな」
「う~っ
それじゃ、私が全部悪いみたいだよぉ・・・」
思考がそのまま口に出ていたようだが
概ね事実だ。
「で?」
「何の用だ?」
困った顔で、何やらつぶやいている来夏に訊ねる。
朝の光が眩しくてなんとも清々しい
さっきの夢なんか忘れるくらいだ
「さて、顔でも洗って飯にするか」
未だブツブツ言ってる来夏を尻目に、洗面所へ向かう
「あ、待ってよぉ~」
慌てて来夏も後につづく
「響也達はどこから来たの?」
ご飯を、ほおばりながら来夏が訪ねてきた
「遠く・・・ずっと遠くだ」
今朝の夢を思い出すようにつぶやく
「どんなところなの?」
「何もない
何もなくて、誰も居ないところだ」
「ずっと独りでいたの?」
悲しそうな瞳を向けてくる
「だから俺は、旅に出たんだ」
独りでずっと旅をしてきた
その旅の中で
いろんな出会いと別れを経験してきた
その中で『つばめ』と出会い
一緒に、ここまで出来たんだ。
そんな響也の想いを気にしてか
来夏が、こちらを覗き込むように見ていた
「今は、独りじゃないけどな」
言いながら、彼女の頭を軽く撫でてやる
安心したように、来夏が眼を細めて笑った。
そんなやり取りを、眺める鈴華の姿は
寂しそうに二人を見つめていた。