第一章 あの空の下で 第一幕
自分にとって初めての作品をリメイク
別のブログで掲載していたものを、移転しました。
古臭い部分も多いですが
心の隅にでも残ってくれたら・・・
ぐぅぅぅぅ・・・
唐突にそんな音が鳴る。
別に寝ているわけじゃない
腹が減っている
ただ、それだけのことだ。
ぐぅぅぅぅ・・・
再び腹が鳴る
しかし、それを満足させる術はない。
理由はシンプル
『金がない』
まったくもって全然ない
この場所に、たどり着くまでに底を付いた。
ぐぅぅぅぅ・・・
そんな事情も、お構いなしに腹が鳴る
噴水の飛沫が太陽をきらめかせて虹を描く
ただ、漠然と横になって、その空を仰ぎ見ていた
俺は、旅をしている
それはずっと昔から
何の為に・・・?
そんなことなんて考えたこともなかった。
俺は旅をしている
いつからだろう・・・?
ふと、目の前が暗くなる
「あのぅ・・・」
一人の女の子が、恐る恐る覗き込んできた。
「もしかして、お休み中でしたか?」
『腹が減っている』
口には出さずに沈黙で応える
沈黙を終わらせたのは向こうの方だった
「ごはん・・・」
その言葉に反応して即座に体を起こす
瞬間、火花が散った
「きゃん!?」
「ぐはっ!?」
お互いに激しく頭部をぶつけた
「・・・・・なにをする?」
「・・・・・いたい」
お互いの目に涙が浮かぶ
「わたし、悪くないと思う・・・」
オデコをさすりながら訴えてくる。
「で?ごはんが俺を呼んでるんじゃないのか?」
既に、食う気満々だ。
「ずっと、ぐう、ぐうっていってたから・・・」
気にしてくれたのだろう
確かに俺は、ここでずっと
ぐうぐういっていた。
言っていたのは『俺の腹の虫』のほうなのだが
「これ・・・」
何かを差し出してきた
「バレーなら向こうでやってくれ」
それを見て言った
「ちがう、おにぎり・・・」
確かに、不格好ではあったが
よく見ると『おにぎり』と、言えなくもなかった
(サイズがデカいことを除けば、だが)
さらにそれを突き出してくる
「甘くて、きっと美味しいいよ」
はにかみながらつぶやく
ありがたく頂くことにする。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
何とも言えない味が口に拡がっていく
「美味しい・・・?」
どうにかそれを飲み込んで言った
「甘いぞ・・・・これ?」
「お砂糖、いっぱい入れたの」
自信たっぷりに言う
「普通、入れるのは塩だろ!?」
思わず涙目で訴える
「甘いほうが美味しいと思って・・・」
そのまま残念そうにうつむいてしまった
一気に残りを口に押し込んで
その『甘い』おにぎりを完食した。
脳裏には海の向こうで、
にこやかに手を振っているオッサンが見えた・・・
「味はともかく、ありがとな」
しょぼくれる頭に手を載せて声を掛けてやる
満面の笑顔で、そのまま走り出す
「また、造ってくるからね!」
手を振りながらやがて遠くに見えなくなっていった
俺は、口の中に広がる甘さを噛み締めながら
ただ、見送ることしかできなかった・・・