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ニート陰陽師が異世界に召喚されました  作者: 若槻 幸仁
ウィザーシュタット 厄災龍カタストロフ編 
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ウィザーシュタット 厄災龍カタストロフ編 4

     5


 イルゼ視点


 遂に勝利を得た。

 青龍と朱雀が倒れ、カタストロフは轟くような咆哮と共にその威容を見せ付ける。

 空気の振動はいくらか収まり、圧迫するような感覚が少し緩和する。

 だが……、


 青龍が急に目を開き、カタストロフに向かって接近する。

 そして、口を大きく開いた。

 カタストロフはそれを迎え撃つが、何秒か送れる。

 そして、青龍の牙は、手綱に一直線に向かっていく。


「誰か、止めろ!!」


 私は叫ぶ。

 だが、間に合わない。

 ガラスの割れるような音と共に、手綱が引き裂かれた。


 瞬間、これまでの比ではないほどの大きさの咆哮がその場を満たした。

 空気が、地面が、天が、震えた。

 

 カタストロフの目が赤い光を帯びる。

 すぐさま、満身創痍の青龍を掴み取り、その首にかぶりつく。


 魔力が吸い取られている様子は無い……。

 青龍も満身創痍なようで、力なく身体を震わせている。


 そのまま、カタストロフは青龍を両手で掴むと、噛み砕いた。

 そして、そのまま咀嚼し、ゴクリと飲み込む。

 だが、それで飽き足らず、まだ青龍を食い続ける。


 私は、凄惨な光景にただ見入っていた。


 カタストロフは、次に朱雀に向かっていく。

 水面下で、最悪な事態が進行している。

 まずい。

 とめなくては。

 だが、カタストロフを倒せる戦力など、こちらにあろうはずも無い。

 

 朱雀が、抵抗する間もなくどんどん食われていく。

 その度に、カタストロフが発光していく。


「二体の力を、吸い取った?」


 絶望に近い予測が、私の中で組み立てられていく……。


 カタストロフは、ゆっくりと王宮、つまり私達がいる方向に向き直った。

 

 赤くたぎった眼光……。

 憎悪に近い感情を感じる。


 そして、カタストロフは大きく息を吸い込んだ。

 その口から、黒い炎が漏れ出ている。

 破滅の息吹だ。

 

 誰もが、全ての破滅を思い浮かべた事だろう。


 だが、そうはならなかった。


 黒い炎が放たれる。

 その瞬間、四色の光がそれを阻んだ。

 ウィザーシュタット全体を、オーロラのような光が包んでいるのだ。

 赤、青、緑、黄色の光。

 黒い炎を受け止め、光を散らしていく。

 

 一体、何がその現象を起こしているのか?

 私には分からなかった。

 そして数秒後、カタストロフの攻撃は収まったがその光は収まらない。


「何が?」


 現実を、受け止められない。


「四方結界に似ているな」


「四方結界?」


 ハルアキの言葉に、私が首を傾げると彼は「ああ」と答えて説明を始める。


「四つの方角に何か特定の力を持つものを据え置くことで、それぞれの属性の力を循環させ、結界を作る」


「特定の力を持つもの?」


「ああ、恐らくは……」


 ハルアキは城壁の外に張られた結界に触れた後、振り返った。

 その視線の先に、私も目を向ける。

 その先には、四人の天使がいた。


「人の子らよ、封じられていた我々を解放してくれてありがとう」


 緑色の天使が頭を下げる。

 儚げで、しかし優しそうな表情の女性の姿天使だ。


「私からも感謝しよう」


 もう一人、赤い天使も軽く頭を下げる。

 峻厳な表情、気性がやや荒そうな男の姿の天使だ。


「ハルアキ、この街は私達が守ります。

 その間に、あのまがつ龍を倒してください」


 青い天使が言う。


「リェール、どれほど抑えておける?」


 ハルアキは、その天使に質問した。


「三十分です」


「分かった」


 そう言って、ハルアキは刀を担いだ。


「奴は、四神を食って、妖魔の力を手に入れているみたいだな」


「そんな、じゃあ、魔法は効かないどころか、吸い取られてしまうのか?」


「そうなるな。

 アンタ達は、防壁を強化する魔術を使って出来る限り防壁にダメージがいないようにしてくれ。

 俺は、アイツと一緒にあのでかい龍を倒しに行く」


 そう言って、ハルアキは黒髪の綺麗な女性へと視線を向けた。

 女性は、決意したような表情で頷いていた。


「しかし、魔法が効かないとは言え、術者二人だけでは」


「あいつが四神を食ってくれたのは、ある意味不幸中の幸いだった。

 俺のこの刀は、妖魔を切り裂く剣。

 普通のカタストロフにアンタ達が魔法攻撃をぶつけたとしても、倒せるかは分からない。

だが、この刀は破魔の刀。

 妖魔であれば、どんなに強くても切り裂く事が出来る。

 安心しろよ、俺が何とかする」


 ハルアキは、刀を二三度振って、もう一度肩に担いだ。


 私はハルアキの雰囲気が何となく変わっているのに気付いた。

 サーシャを死なせてしまったことは聞いたが、それが彼の心境に何か変化をもたらしたのだろうか?


「おい、何をぼーっとしてる?」


 そう言って、ハルアキは私に視線を向けた。


「ああ、済まない。

 命令を出そう」


「そうしてくれ」


 ハルアキは私から視線を逸らして、カタストロフを見つめた。


「さあ、やろうかデカブツ、三枚に下ろしてやる」


 直後、ハルアキはリュウの背中に乗ってカタストロフに向かって行った。


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