5話 チート
薪割り百本、意外と楽だったな。最初積み上げられた薪の数終わるのかとか思ってたけど、案外楽だった。というか、体力が異常なクラスで有り余ってるんだが。もう後三百は余裕でいけるぞ。受験生の体力って、こんなに有り余るのかな。
それでも、指定されたのは百本だったから、そこまでにして、じーさんに伝えに行くことにする。
「じーさん、薪割り終わったぞ」
「なんと、随分と早く終わったのう。まさか十本で終わったというわけではあるまいな?」
「おいおい、俺は頼まれたりしたことは殺人とか、法に触れるもの以外は全部こなす男だぜ?そんな手抜きをする訳がないじゃないか」
「だが、普通はもっとかかるのだ。あの種類の木はものすごく硬い性質でな、あの斧も魔力で強化しなければ折れるほどのものなのだ。それで強化していても、普通のようには割れぬはずなのだ」
「なら見てみろよ。ちゃんと割れてるし、今ならもう少し上乗せして割ってもいいぜ?」
「ふむ、ならば見せてもらおうではないか」
じーさんを薪割り場に連れて行くと、そこに積み上げられた薪を見て、相当驚かれた。そんなにすごいことしたのか?俺。
「すまんが、もう一本割ってくれんか?」
じーさんがもう一本薪を投げてよこす。
「おう、それくらいならお安い御用だぜ!」
ということで、もう一度薪を一刀の元に二つにする。ついでにもう十本ほど割っておいた。
「馬鹿な、こんな簡単に割れるはずがない。そんなやわな薪ではないはずだ。もしかして……」
と、じーさんが驚いて何かぶつぶつ言っているのでしばらくその場で待機。
そのうち、あの木を思いっきり殴ってみろといわれた。じーさんが示した木はものすごく固そうな大木。殴ったら痛そうだなあ。それに、あの木、桜の木に似ているが、きっと何か違うのかもしれない。なんせ、異世界だし。けど、春になれば花見とかもできんのかね。できるなら楽しみだなあ。あー、団子食べたい。
そんなことを考えながら、大木を思いっきり殴る。
バキバキバキッとものすごい音を立てて大木が倒れる。
…………俺、なんかSUGEEEE!!
これが小説でよく見る異世界召喚チートってやつか。
だが、これはすごすぎるだろ。
と、感動したところで、これ、近所迷惑にならないかな?そう思って振り返ると、じーさんと、大木が倒れる音を聞いてあわてて駆けつけてきたリナがあ然とした顔でこちらを見ていた。え?俺そんなにすごいことしたの?