第2話 魔法を使う狐耳少女
もう一度意識をはっきりさせると、少女はまだ赤面したままだった。今にも泣き出しそうなほど震えている。
少女は巫女服を着ていて、ここは日本なんだと考えたが、そんな期待も一瞬で破られた。なんと彼女の頭の上にもう一対の狐耳が生えている。さらに、その腰のあたりにはふさふさとしたとても柔らかそうな狐の尻尾も生えている。
訂正。ここはファンタジー世界だ。
そういえば少女に謝らなければならない。
「えっと、すんませんでした」
「わざとですか?」
「違います。不可抗力です」
「許したくはないですが、どうやらその通りのようですね。許してあげます」
そういいつつも、やっぱりまだ怒っているらしい。頬を可愛らしく膨らませてそっぽを向いている。こっちなんか向いてくれさえしない。可愛いのになぁちくしょう。
「ありがとうございます」
けど、ここは俺が悪いからということでひたすら下手に出るしかない。
「そうだ、名前を教えてください。一応保護したんですから。それくらいは教えてくださってもいいですよね?」
「まあ、確かに。俺は竹田亮輔。リョースケって呼んでくれ」
「私はリナといいます。ところで、ここがどこだかわかりますか?」
確か教えられたと思うが、その直前にもう一回ねたから覚えてない。
「いや、まったく知らん。けど、ここは日本でも京都でもないんだな?」
「日本?京都?何ですかそれ。お菓子ですか?」
やはり知らないようだ。ここは異世界なんだな。
トンネルを抜けると、そこは雪国であった。ではなく、何かに吸い込まれると、そこは異世界だった、ということか。
「地名だよ。どうやら俺は異世界に飛ばされたらしい。要するに異邦人?」
「その日本というところから来たんですか?」
「そうさ。あそこには君みたいな獣人は存在しない。基本的には人間と普通の動物しかいない」
「ずいぶんとのどかな世界なんですね。魔獣に命の危険を晒す必要がないなんて」
「ま、そうなんだけどな。常に安全って訳じゃないしな。俺のいた世界には魔獣はいなくても一番危険なのは人間だし」
「どういうことですか?」
首をかしげているという事はここでは人間はそこまで強くはないということだろうか。
「あそこでは人間は最も高い知能を持っていて、科学の力によってその場所の地形や環境まで変えることができるんだ。だから、その地域に住む動物たちは住処を変えざるを得なくなる。だから、一番恐ろしいのは人間なんだよ」
「科学?魔法はないのですか?魔法があってもこの世界で人間という種族は一部を除いて一番弱い種族ですけどね」
さすが異世界。地球とは全っ然環境が違うぜ!しかも魔法なんてアニメや漫画、小説の中でしか見たことないのに、それを生で見れるチャンスがあるのか!これはテンション上がるな。
「君は魔法を使えるのか?」
「リナでいいです。使えますよ。狐族は生まれてすぐに火炎魔法を使えるように契約されますから。見たいですか?」
見てみたい。今できるというのならすごく見てみたい。
「見たい!」
「わかりました。行きます。――炎よ、我を導く火となれ。Fire Light<灯火>」
「おおー!」
ちょっとイメージとは違うけど、すごい!
「これは初歩中の初歩ですけど、すごいものはもっとすごいんですよ」
「俺にも使えるかな?」
「それはどうかわかりませんが、適性さえ解ればできるんじゃないでしょうか?確か魔道書があったと思うのでお師匠に使っていいか聞いてみるので、ちょっと待っててくださいね」