Magick.1
少し長めのファンタジーを書き溜めているので、読んでください^^
「ヌンクァム・ペリークルム・シネ・ペリークロー・ウィンケームス!」
「ダビト・デウス・ヒース・クォクェ・フィーネム!」
「お嬢様、朝から熱心ですね」
「あら、リグレット、朝のお散歩?」
少しパーマがかかった長い金髪。すらりと伸びた足と、それに釣り合う抜群のスタイル。彼女の名前は、テレジア=フォン=マルケス。由緒正しきマルケス家の長女で、この物語の主人公です。
そして、今彼女に話しかけた白猫。
間違ってませんよ、白猫が確かに話しかけているのですから。
正確に言うと、丁寧に白猫をかたどられた使い魔で、名前はリグレット=ミラ=ローゼス=ヴァン=ドレイク・・・これ以上は長いので、みんなリグレットと呼んでいます。
この、マナフロンティアと呼ばれる世界では、どうやら魔法が日常に溶け込んでいるみたいですね。
「リグレット、今日は街へ行くわよ」
「またですか?たまにはお休みしましょうよ。二週間休みなしじゃないですか」
「私達の助けを待ってる人がいる限りは、休んでなんかいられないわ」
「はぁ・・・分かりましたよ」
「それにしても、もっと暖かくならないですかね」
「何言ってるの?生まれた時からずっと同じような気温じゃない」
「いえね、昔は暖かくなったり寒くなったりすることがあったって街のおじいさんが言ってるの聞いたもんですから」
「『キテス』とかって呼んでたなあ」
「馬鹿なこと言ってないで、朝食の準備してくれる?」
「わかりましたよ、人・・・猫使いが荒いんだから・・・」
ぶつぶつ言いながらリグレットは、家の中に入っていきましたね。
あ、紹介が遅れました。私の名前は『スワロウ』と申します。
え?なんで、今ここにいるのか?
色々な事情がありまして。
どうぞ、私のことはお気になさらず、みなさん物語を楽しんでください。
おやおや、もうこんな時間だ。
もう一人の主人公の所に向かうとしますか。
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「赤、青、白・・・緑、黄、白・・・黒」
いかにも妖しげな雰囲気のお城の、北側のてっぺんの部屋。大きな机に何冊もの古びた本と紙を広げ、そこにペンを走らせながら一人ぶつぶつ言っているこの人が、もう一人の主人公。
ベルンシュタイン侯、ルートヴィヒ=ブルクハルト。
黒魔術にご執心の彼が最近凝っているのが、魔方陣を描く魔法薬の、新しい調合パターンの研究です。
「桃色、水色、肌色・・・違う。煉瓦色、灰色・・・」
彼もまた由緒ある家の生まれなのですが、お父上亡き後、受け継いだ財産のほとんどをこの黒魔術の研究に注ぎ込み、今や家計は火の車。
「ご主人様、朝ご飯の準備が調っております。どうぞ、温かいうちにお召し上がりください」
丁寧な口調で話し掛けたのは、ウィンザー。ウィンザーは、愛嬌のある顔をしたカエルの姿をしています。ルートヴィヒの親族や城の使用人達が、彼の浪費と研究への没頭ぶりに次々と愛想を尽かして離れていく中、唯一、忠実に付き従っているファミリアです。
まぁ、ファミリアの『しくみ』を考えれば、それも当然のことと言えなくもないですが。
「ご主人様」
「・・・あぁ、いたのか」
「何か用か?」
「朝食の準備が整っております。どうぞ、温かいうちにお召し上がりください」
「分かった」
おやおや、分かったと言いながら、また机に向き直ってしまいました。ウィンザー特製の、おいしいスープが冷めてしまいます。
「ここへ、お持ちしますね」
研究熱心で集中力抜群の主人を持った使い魔は、対応も優しく従順、そして臨機応変です。