表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/18

第8話 守護者削除と特待生認定

「……というわけで、無事に遺跡の異常は解決しました。約束通り、試験免除の推薦状をいただけますね?」


 学園長室に戻った俺は、デスクの向こう側に座るマクシミリアン学園長に結果を報告した。

 遺跡のエントランスであっさりと防衛システム(魔獣)を削除デリートしてしまったので、実質の作業時間は5分ほど。まさに有能なデバッガーの鑑である。


「う、うむ……」


 しかし、学園長の顔色はなぜか優れなかった。

 彼は額に脂汗を浮かべ、震える手で羊皮紙の書類を差し出してきた。


「約束通り、君への『特待生認定』と『魔法省への推挙状』だ。……だが、アルマンド君」

「はい?」

「君は……本当に『人間』なのかね?」


 唐突な質問に、俺は首を傾げた。


「あの遺跡の守護者は、旧文明の『中枢防衛機構』の端末だ。あの装甲を物理的・魔力的に突破することは不可能に等しい」

 学園長はゴクリと唾を飲み込んだ。

「君の戦いを監視魔法で見させてもらったが……『突破』したのではない。君は装甲ごと、あの存在の『概念そのもの』を消し去った。あれは魔法の次元ではない。『世界のルール』を直に書き換える権限だ」


 ……鋭いな、この爺さん。

 まあ『世界の理』というと大げさだが、『環境管理AIへのシステム権限』と言い換えれば、当たらずとも遠からずだ。


「アルマンド君、君のその力は……いや、君という存在そのものが、この国にとって大きすぎる」

 学園長が深くため息をついた。

「すでに『アルマンド家の三男が、詠唱破棄で守護者を消し去った神の使徒である』という噂は、学園を超えて王城の貴族院にまで届いているのだ」


「えっ」


「王族も、お前というイレギュラーに注目し始めている。平穏に魔法省の事務官になるという君の夢は……恐らく、もう二度と叶うことはないだろう」


 俺は絶望的な宣告を受け、手にした推挙状を取り落としそうになった。

 嘘だろ。俺はただ、視界の隅に出た鬱陶しいエラーメッセージのYESを押しただけなのに。


「……だが、私にできるせめてもの恩返しとして、学園内では可能な限り君を保護しよう。王都の権力闘争に君が巻き込まれないようにな」

「が、学園長……っ!」


 いい人だ!

 このどうしようもない勘違いチキンレースの中で、唯一まともな大人がいた!


『ピコン』


 その時、俺の視界の右下に、新着メッセージのポップアップが表示された。


【System:新規管理者権限リクエストを受信】

【差出人:王都環境管理サブAI(呼称:気候神)】

【件名:王都地下・旧浄水プラント領域における重度システム感染の件】

【内容:致命的エラーによる魔素の逆流が発生中。早急な手動デバッグ(物理対応)を要求します。報酬:セキュリティクリティカルパッチ】


「……」


 俺は無言でポップアップをスワイプして消そうとしたが、消えなかった。

 どうやら『神々(AI)』の方も、俺という便利な【デバッグ用端末パシリ】を見つけてしまったらしい。


「どうした、アルマンド君? 急に顔色が悪くなったが」

「……いえ、なんでもありません」


 これ以上目立てば、本当に王都の権力闘争のド真ん中に引きずり出される。

 この『王都地下のデバッグ要請』は、なんとしても俺一人で、こっそりと、秘密裏に処理しなければならない。狂信者のエレナやレディスに見つかったら、またしても「神の奇跡!!」と叫ばれて大騒ぎになるからだ。


「よし……今日の放課後は、こっそり地下に潜ろう」

 俺は心に固く誓った。

 だが、この時の俺はパシリ……もといデバッガーとしての経験が浅すぎたのだ。

 システム側の『重度システム感染』というアラートが、どれほどヤバい状況を指しているのかを、俺は全く理解していなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ