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第5話 見学席から無双介入

「本日の実技講習は、防御結界の展開だ」


 午後のグラウンド。

 魔法実技を担当する厳格な老教師、バルトロメウス先生が低い声で告げた。

 百人近い1年生が、ペアを組んで魔法の撃ち合いと防御の練習をするという実践的な授業だ。


「アッシュ・アルマンド」

「はい」

「お前は……今日も見学でいいな?」


 バルトロメウス先生が、どこか腫れ物に触るような視線を俺に向けてくる。

 以前なら「魔力ゼロの穀潰しめ」と暴言を吐かれていたところだが、最近の俺の『謎の力』の噂は教師陣の耳にも入っているらしい。


「はい、見学させていただきます」

「うむ。無理はするなよ」


 俺はグラウンドの隅にあるベンチに腰を下ろした。

 魔法が使えない俺にとって、実技の時間はただの休憩時間だ。

 これで魔法省の一般試験さえ受かれば、事務官への道が開けるのに……。


【System:局地的な魔素の乱れを多数検知。トレーニングモードの実行を確認】


 グラウンドのあちこちで、生徒たちが初級の火球や水弾を飛ばし合い、結界で防ぐ訓練が始まった。

 ポンポコと魔法が破裂する音が響く、のどかな(?)学園風景だ。


「ええいっ! 未熟者が! もっと魔素の練りを高めんか!」


 バルトロメウス先生の怒号が飛ぶ中、一つのペアの動きが俺の目に留まった。

 レディスと、別の貴族生徒のペアだ。

 レディスが結界を張り、相手がそこに攻撃魔法を撃ち込む訓練——のはずだったが。


「食らえっ! 『爆炎の槍』!」


 相手の生徒が、訓練にしては明らかに過剰な魔力を込めた炎の槍を放った。

 それに対するレディスの結界展開が、一瞬遅れた。


「しまった……!」


 レディスの顔が引きつる。初級の結界では、あの威力の炎槍は防ぎきれない。

 最悪、大火傷を負うコースだ。

 バルトロメウス先生も離れた場所にいて、カバーが間に合わない。


『警告:許容致傷レベルを超えるナノマシン凝集プロセス(Fire_Lv3)を検知』

『該当プロセスはユーザーの保護観察対象(フレンドリスト:レディス)への危害インシデントに該当』


「……フレンドリスト?」


 俺の視界に、またしても赤いアラートが表示された。

 どうやらこのシステム、頻繁に俺の周りにいる連中を勝手に『フレンド』として登録し、保護対象に設定するらしい。

 レディスなんていつの間に登録されたんだ。


『対象プロセスへ、強制終了パッチを適用しますか? [YES / NO]』


「……しゃあない」


 俺はため息をつきながら、頭の中で『YES』を選択した。


 ——シュンッ。


 レディスを直撃する寸前だった巨大な炎の槍が、まるでローソクの火を吹き消すように、音もなく空間から消失した。


「……え?」

「な、なに……?」


 当事者の二人だけでなく、周囲で訓練していた生徒たちも動きを止めた。

 魔力同士が衝突する音も、相殺の余波もない。

 ただ、絶対的な『無』がそこにあった。


「今のは……」


 生徒たちの視線が、一斉にグラウンドの隅——ベンチに座って欠伸を噛み殺している俺に向いた。


「またアッシュ様だ……」

「ベンチに座ったまま、指一本動かさずにあの威力の魔法を消滅させたぞ……」

「レディス様を庇うために、瞬時に無音の結界を……いや、『絶魔』を発動されたのだ!」


「ち、違うから! 俺はただシステムエラーを——」


「アッシュ様ぁぁっ!!」


 レディスがグラウンドの端から猛ダッシュで駆け寄ってきて、俺の目の前でズサーッとスライディング土下座を決めた。


「この愚かな私のために、斯様なる奇跡を……っ! やはりあなたは私にとっての光……!」

「うるさい、泥が跳ねるだろ!」


【System:新規タスク完了。周囲からの承認要求スコア(信仰心パラメータ)が上昇しました】


「お前もくだらないパラメータを計測するな!」


 頭痛を抱えながら、俺は天を仰いだ。

 この『YES』ボタン、便利だけど副作用(勘違い)が強すぎる。

 だが、俺のこの特異な能力を、学園上層部が放っておくはずもなかったのだ。


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