22.見つけてみせる
アナト王国、城下町。
古びた酒屋の奥には個室があり、後ろ暗い密約が交わされるのにはうってつけだ。
ローブ深くかぶった体格のよい男が、その個室で一人待っている。
酒を頼むでもなく、ただこの部屋でこれから起こる出来事のことだけに集中している。
しばらくすると、フードを被った細身の男が怪しげな笑みを浮かべながら、部屋に入ってきた。
「へへ、お待たせしやした、デルフィスのダンナぁ。ダンナが探してた情報を集めてきやしたぜ」
「ご苦労、先に情報だ」
「あいよ。まったく、魔法のように人が消えた情報なんて、夜逃げと区別つけるの大変だったんすよ」
男から渡された書類に目を通す。男の口ぶりの割に資料はよくまとめられている。
うさん臭そうなこの男は金さえ払えばきっちり仕事をしてくれるので、情報収集から汚い仕事までいろいろと任せている。
書類を読み終えたデルフィスは金貨の入った袋を男に投げた。
「いいだろう。いつも助かるよ」
「へへっ、まいどあり……しっかし、どうしたんですかい、急にこんな依頼なんて。もしかして、ダンナのご執心だった消えたあの娘が……」
男が「あの娘」、と口にした瞬間、デルフィスの瞳が闇をまとったように暗くなる。男はゾッとして、一歩二歩と後ずさりをした。
「そうだよ、彼女がいなくなってしまってね。その娘の父親が不思議なことを言うものだから、その調査さ」
「そ、そうすか……でも、興味深いっすね。ダンナの言っていた霧で不思議な城に迷い込んだって経験をした人間が何人かいるなんて、しかも、みーんな同じようにもてなされて帰ってきてるんですね」
「ふむ、年齢も出身もばらばら……人に共通点はなし、迷い込んだ場所は王都と町を結ぶ道、時期は一番古くて約10か月前……共通点は霧が出ていたこと。彼女の父親もあの道で霧のでた日に迷い込んだといっていたし、これが鍵となるだろうが……天候が鍵とは不安定だな。人を張らせるか……また、必要になったら連絡する」
デルフィスは話が終わるとすぐに個室から立ち去った。
本気で魔法のように消えてしまったという人を探し出そうとするデルフィスに、言いえぬ狂気を感じつつも単なる雇い主と雇い人の関係から逸脱するようなことがなければ、金に糸目はつけないし、いい雇い主だ。
(いやはや、触らぬ神に何とやらだねぇ……)
男はもらったばかりの金で、酒を注文した。




