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有志による大空光曲コンサート

◆最初の年


翌年の春。

あの日、光が公園のスタインウェイを弾いたことを覚えていた地元の音楽仲間やファンたちが、そっと声を掛け合った。


「またここで、光くんの曲を弾いて集まろうよ」


それは宣伝もなく、身内のような数十人が集まっただけの小さな会だった。

芝生にパイプ椅子を並べ、順番に光の曲を弾く。

演奏の合間には「すごかったね」「あのときの音、忘れられないね」と笑いながら語り合った。


資金面ではすでに光のクラファンで当面の維持費が確保されていた。

だからこの集まりは“お金のため”ではなく、“あの日をもう一度味わうため”。

けれど自然と寄付箱も置かれ、集まったわずかな金額はすべてピアノの保全に充てられた。


光本人はいなかった。

それでもピアノの周りには、不思議なあたたかさが漂っていた。



◆広がっていく年中行事


数年も経つと、その集まりは「毎年の恒例行事」になった。


三年目。

観客は数百人に膨れ上がり、芝生にはシートを広げて座る家族連れ。

近くの商店街が屋台を並べ、地元グルメを売り出す。

公園全体が、音楽と祭りが混ざり合ったような空気に包まれた。


五年目。

SNSでの配信が始まり、遠方からもファンが集まる。

「光曲限定フェス」として話題になり、若手ピアニストや学生が「自分も弾きたい」と応募してくるようになった。

寄付箱に入れられたお金は、今も調律費や次のピアノ保全に回されていた。


十年を過ぎるころには、国内外から名だたる音楽家が出演を希望するほどになっていた。

ジャズにアレンジする者、クラシックに書き換える者、オーケストラに組み直す者。

「光の曲をどう解釈するか」が一種の挑戦の場になっていた。



◆文化的な評価


やがて新聞や評論家たちも取り上げるようになる。


全国紙の文化面にはこう記された。

「音楽が“ピアノを残す力”となった稀有な事例。

単なる演奏活動ではなく、楽器そのものを未来に繋げる試みとして高く評価される」


音楽評論誌はこう評した。

「芸術と寄付がこれほど自然に結びついた例は少ない。

この仕組みはチャリティ文化のモデルケースとして、国際的に注目されている」


地元紙は誇らしげに書いた。

「一台のピアノが町を変えた。

毎年数万人を呼ぶイベントとなり、地域経済にも波及効果をもたらしている」



◆十数年後


やがてこのコンサートは、世界配信される国際的なイベントにまで成長した。

クラシック界の大物ピアニスト、ショパンコンクール入賞者さえも出演し、

「大空光の曲だけを演奏する」という一大行事として確立したのだ。


それでも舞台は変わらない。

いつも、公園のスタインウェイの前。

そこに座る人は年ごとに変わっても、ピアノは静かに人々を迎え続けていた。



◆その頃、光は…


毎年のイベントがニュースになる時期、光は別の街でふらりとストリートピアノを弾いていた。

特別な意識もなく、「弾きたいから弾く」だけの、肩の力が抜けた姿勢。

それがまた新しい“聖地”を生むきっかけになる。


その横で、書類を抱えて頭を抱えるマリ姐に、光は無邪気に言った。


「なんか、毎年めっちゃ盛り上がるよね」

「……なんであなたはそんなに他人事なんですか」

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