あっという間にぐっちゃぐちゃ
◆寝坊とカオス配信
その朝、いつもなら布団を叩いて「起きて」と声をかけてくれる雪の姿がなかった。
光は昼近くまで眠り込み、練習も準備も吹っ飛んでいた。
「うわ、やば……!」
慌ててパジャマのまま機材をつけ、ドタバタと配信を開始する。
カメラは角度が低く、顔が半分暗く映っている。
マイクも設定を外したままで音が割れていた。
コメント欄が瞬く間にざわつく。
『顔暗いよ!』
『音ガビガビw』
『雪ちゃん今日いない?』
『てかパジャマだよ!!』
光は自分の服を見下ろし、苦笑して肩をすくめた。
「……熱出てるらしくてさー。いないと、準備も服もぜんぶぐちゃぐちゃだな」
ファンは呆れるよりも、むしろ納得して笑っていた。
『分かってたw』
『正直に言うの可愛い』
『早く戻ってきて雪ちゃん!』
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◆雪の視点
布団の中でスマホを抱え、雪はその配信を見ていた。
カメラの角度も音もボロボロで、光のパジャマ姿まで全国配信されている。
「……ほんとに、私いないとダメなんだ」
熱のせいで重い体を抱えながらも、胸の奥がじんと温かくなる。
母性と誇らしさが混ざり合ったような感覚だった。
(……それにしても、パジャマのまま配信って……)
小さく吹き出しそうになり、慌てて布団に顔を埋める。
そのまま思い出してはニマニマしてしまい、余計に熱が上がる気がした。
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◆光のお見舞い
数日後。
チャイムが鳴り、家族に導かれて寝室のドアが開く。
「雪……大丈夫?」
低くなった声が、静かな部屋に落ちる。胸が跳ねた。
光は紙袋を下げてベッドの横に座り、わざと明るく言った。
「ジュースとか果物、買ってきた」
雪は布団にくるまり、わざと寝たふりをした。
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◆寝たふりと告白
光は眠っていると思ったのか、小さな声でぽつりと漏らした。
「雪がいないと、時間もご飯も配信も、ぜんぶぐちゃぐちゃになる。
……俺はやっぱり雪が必要なんだな」
(……なにそれ、告白みたいじゃん)
胸の奥が熱くなって、口元が勝手に緩む。
にやけた頬が布団からのぞいた瞬間、光が言った。
「……雪、起きてるだろ」
雪はびくっとして布団をかぶり直す。
「……起きてない」
「顔に出てる」
観念して顔を出すと、光は困ったように笑って手を伸ばし、額に触れた。
「……まだ熱あるな」
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◆頭ポンポン
雪は力を振り絞って、掠れ声で言った。
「……頑張って、早く治す」
光は首を振り、低い声で返す。
「頑張らなくていいから、早く治せよ」
そう言って、優しく頭をポンポンと叩いた。
布団の中で雪は顔を真っ赤にして、(……これじゃ眠れない)と胸の奥で呟いた。
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◆翌日
結局その夜はほとんど眠れなかった。
心臓がどきどきして、布団の中で何度も寝返りを打った。
――そのせいか、風邪はもう一日長引いた。
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◆ナレーション
「――声は大人びても、生活は子どものまま。
雪がいないと何もできない光。
そして、そんな光の“必要とされる言葉”に胸を高鳴らせ、眠れなくなる雪。
二人の依存は、ますます強固なものとなっていった」
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