見上げれば
今回の話ね、自分ですごく気に入ってるんだよね。
◆お役御免の寂しさ
公式サイトが稼働しはじめ、整理された情報が日々更新されるようになったこの半年間――非公式アカウントのフォロワー数は目に見えて減っていった。
演奏曲リスト、アーカイブ対応表、譜面リンク。
かつて「#こっちが公式」と呼ばれた場所は、もはや不要になりつつあった。
管理人は、パソコンの画面を見つめて小さく呟いた。
「……もう私はお役御免かな。ちょっと寂しいけど……これがあるべき姿だよね」
整理の使命を果たした達成感と同時に、静かに居場所を失う切なさがあった。
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◆マリ姐の提案と光の言葉
そんな折、マリ姐は別室で腕を組み、思案していた。
「……あの非公式アカウントの人、ここまでやってくれたんだから、報酬を払って公式に取り込むのが一番よね」
すぐにでもコンタクトを取り、お金で解決しようとしたその瞬間。
光が首を横に振った。
「お金が欲しくてやっていた人じゃないと思う」
マリ姐は思わず黙り込む。
「カフェで話してくれたマリ姐と、きっと同じ気持ちなんだと思うな。
“混乱を整理して、みんなが楽しめるようにしたい”って。
だから、その人への対応は……ちょっと2、3日待ってくれる?」
光の瞳にはまっすぐな確信があった。
マリ姐は反論できず、ただ小さく息を吐いて頷いた。
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◆光からの贈り物
その夜。
光はピアノに向かい、柔らかな旋律を紡いでいく。いつものように10分で仕上げるのではなく、一晩かけて丁寧に、一曲を作っていった。
「見上げれば」------
今までありがとう、あなたが守ってくれていたおかげで
やっと空へ羽ばたけそうです
離れたと思っていても
見上げれば、どこまでも飛んだ私が見えるはず
私も、あなたを見ています
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最後に光はカメラへ顔を上げ、柔らかく笑った。
「非公式アカウントさん、ありがとう。これからも、ちゃんと見ててね」
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◆変わるアカウント
しばらくして、ファンが気づいた。
「大空光 非公式アカウント」という名前が――
「元・大空光 非公式アカウント」に変わっていたのだ。
アカウント詳細にはただ一つのリンクが残されていた。
→ 動画『見上げれば』
公開されたのは――ピアノ弾き語りの演奏部分だけだった。
演奏動画のコメント欄には、数えきれない「ありがとう」の声が並んだ。
『今までありがとう! あの対応表がなかったら、配信追えなくて途中で心折れてたと思う』
『めちゃ使ってた! 学校から帰ってきて「どの曲が何分から始まるか」調べるの、全部ここで助けられてた』
『超助かってました!譜面リンクのおかげで文化祭で光くんの曲を弾けたのは一生の思い出です!』
『ここがあったおかげで、友だちに光くんを勧められました!』
『まとめがなかったら自分じゃ絶対把握できなかった。推し活を支えてくれてありがとう』
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◆ファンの声
『よかったねぇ……こんなの泣く』
『光、神対応すぎる』
『一生ついてく』
『公式に吸収されても“元・非公式アカウント”って形で残るの熱い』
『今まで頑張ってたのに非公式アカさん、フォロワー減ってくの可哀想だし寂しいって思ってた。報われててほんと嬉しい』
ファンは温かい言葉でアカウントの卒業を見送り、涙と笑顔でタイムラインを埋め尽くした。
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◆雪のひそやかな笑み
――その映像を撮影したのは雪だった。
公開された「見上げれば」を確認し、最後のメッセージ部分がカットされているのに気づく。
「……公開するのは弾き語り部分だけなんだ。ふふっ。そうだよね。メッセージは、あなただけの宝物かな」
そう呟き、雪はカメラに残っていた録画データを静かに消した。
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ナレーション
「――役目を終えた非公式アカウント。
だが、光が贈った『見上げれば』は、その存在を永遠のものに変えた。
彼を守ってきた証は消えない。
見上げれば、そこにある。いつまでも」
この話、気に入ってるからぜひ評価入れてもらえたら嬉しいです〜〜〜
頑張っていた人は、やっぱり報われてほしいよね。
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