増え続ける曲と芽生える疑惑
◆最初の驚き
ある日、光がSNSに上げた一つの動画。
そこには、リクエストでも耳コピでもない――完全なオリジナルのピアノ曲があった。
『今日、めっちゃいい天気だったからそれをテーマに弾いてみた』
軽いコメントと共に投稿されたその曲は、即座に話題になった。
『え!? この子、作曲できるの!?』
『即興だけじゃなくてオリジナルまで!?』
『天才の次元が違う……』
“リクエストに応える天才少年”から、“作曲もする少年”へ。
評価は一段と跳ね上がった。
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◆次の驚き
しかし驚きはそれだけで終わらなかった。
ピアノ曲は、ほぼ毎日のように投稿された。
多い日は一日に三曲。
まるで呼吸のように音楽が生まれていく。
『投稿ペースおかしいwww』
『1日3曲とか人間やめてる』
『プロ作曲家でも無理だよこの速度』
ファンは笑い混じりに驚愕していた。
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◆さらに広がるジャンル
やがて数日に一度は、ピアノではない新曲も投稿されるようになった。
壮大なオーケストラ。
ギターが唸るロックバンド風。
スウィングのジャズトリオ。
民族音楽や和楽器を思わせる旋律。
演奏を聴いていた雪と母は、顔を見合わせて感嘆の息を漏らす。
「……ほんとに、光ひとりではできない音楽になったわね」
母がつぶやく。
「うん。光の頭の中で鳴っている音を“翻訳してくれる人”がいるから、形になるんだね」
雪も小さく微笑んだ。
家族の目から見ても、それはもう子どもの遊びではなかった。
確かに“誰かと共に作り上げる音楽”へと進化していた。
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◆ファンの声
『ちょっと待って、ジャンル無限に増えてない?』
『この年齢でオーケストラもロックもジャズも民族音楽もやるの!?』
『#即興王子 ジャンルチート説』
光の曲は日ごとに増え、世界が広がっていった。
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◆その間の配信
一方で、配信は相変わらず続いていた。
コメントでリクエストされた曲を次々に弾き、知らない曲も一度聴いただけで弾きこなす。
『やっぱリクエスト配信神すぎる』
『知らない曲を即再現ってどういう脳みそしてんの』
だが――作曲の姿を配信で見せることは一度もなかった。
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◆芽生える疑問
SNSや掲示板に、こんな声が増え始める。
『でも作曲してるとこ、配信では見ないよね』
『リクエスト配信は神なんだけど、オリジナルは裏で誰か作ってるんじゃ?』
『ほんとに本人がやってるの?』
熱狂とともに、静かに“疑念”が芽生えはじめていた。
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ナレーション
「――“作曲できるの!?”から始まった驚きは、“速すぎる投稿ペース”“ジャンルの広がり”へと続き、やがて一つの疑問を呼んだ。
即興王子は、確かに演奏の天才だ。
だが――作曲の現場は、誰も見ていない」
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