二人で組み立て&配信準備完了
開けても開けても、中から新しい機材が出てくる。
モニターにスタンド、ケーブル、マイク……見たことのない機材ばかりで、床はあっという間に埋め尽くされた。
「雪ー!これ、どっちが電源ケーブルだと思う?」
「……説明書、読んだほうがいいと思う」
か細く返す声は、結局光にかき消される。
「読むより繋げた方が早い!」
もう止まらない。
モニターが傾いて、私は慌てて支えた。
ケーブルが絡まって、二人で引っ張り合う。
部屋中がドタバタして、私の心臓まで騒がしくなる。
光は子供みたいに目を輝かせている。
汗をかきながら机の下に潜り込み、コードを差し込もうと腕を伸ばす。
その筋がぴんと浮き出していて、思わず見とれてしまう。
シャツの裾から覗いた腰のあたりに視線が吸い寄せられて、慌てて顔を逸らした。
「よし、ついた!」
頭をぶつけて「いてて」と笑いながら出てくる光。
――やっぱり生活力はない。
呆れかけたのに、胸の奥はむしろ熱くなる。
「雪、そっちの棚にあるスタンド!」
「……これ?」
差し出すと、光が腕を伸ばして受け取る。
シャツの裾がめくれて、引き締まったお腹とおへそがちらりとのぞいた。
どくん、と心臓が脈打つ。
――どうして。今までなら気にも留めなかったのに。
「サンキュ!」
無邪気に笑って受け取る光。
眩しさに直視できなくて、私はそっと視線を伏せた。
組み立てが進むごとに部屋の形が変わっていく。
モニターが並び、マイクが立ち、椅子がセッティングされる。
そこに座る光の姿を想像するだけで、胸がどきどきと波打つ。
「――これで、俺の舞台ができる」
笑顔でそう言った横顔に、また心臓が跳ねた。
「……次は、アカウント……?」
控えめに声をかけると、光が振り返って笑う。
「そうそう!一緒に作ろうぜ!」
気づけば、椅子を引き寄せて隣に座っていた。
肩が触れ合う距離で、画面を覗き込む。
「名前は……光、でいいよね」
「……うん。シンプル、だし」
アイコン用の写真は、私がスマホで撮った。
机に座り、少し照れたようにピースをする光。
「なんか子どもっぽいなぁ」
「……だって、子どもだから」
小さな声で答えて、気恥ずかしくてつい俯く。
それでも、二人で同時に笑いがこぼれた。
アカウントが完成した瞬間、光は深呼吸をする。
「……ここからだ」
その横顔は、さっきまでケーブルと格闘していた時よりもずっと頼もしく見えた。
私は小さく笑みを浮かべる。
「……私も、楽しみ」
画面には、まだフォロワーも視聴者もゼロの真新しい配信ページ。
けれど――ここからすべてが始まる。




