第170話 後年インタビュー:光バンドの中心となった、とある女性バイオリニスト
【後年インタビュー:光バンドの中心となった、とある女性バイオリニスト】
————大空光さんのライブについて、率直な感想を教えてください。
正直に言うと……めちゃくちゃ大変でした。
何が起きるか分からないし、仲間たちと何度も練習して、準備して、想定して備えても、それを軽々と越えてくるんですよ。
本番でお客さんが入った瞬間、たぶん無意識なんでしょうけど、一気に“本気モード”に切り替わる。そこからの輝きが、また桁外れで….
————それは、いわゆる「天才」だと思いますか?
この言葉、裏の努力を全部消してしまう感じがあって、正直あまり使いたくないんですが…彼は、紛れもなく「天才」でしたね。
「こんな人間、存在するんだな……」って何度も繰り返し思ったのは、たぶん、人生最初で最後だと思います。
————光バンドの内部は、どんな雰囲気だったのでしょうか。
オーディションが終わったとき、"このままじゃ置いていかれる" って、全員がはっきり自覚してたんです。
それで、バンドのみんなで話し合いました。
“得意分野をお互い持ち寄ろう”って。
「これはこう弾く」
「このジャンルだと、ノリはこうなる」
「この音の置き方、覚えておいた方がいい」
そんな感じで、教え合って、混ざり合っていきました。
————かなりハードだったのでは?
ええ、正直きつかったです。
でも、異分野が混ざった瞬間って、成長スピードが異常なんですね。
昨日できなかったことが、今日できる。今日理解できなかった感覚が、明日には身体に入ってる。
あの期間、全員、ものすごい勢いで伸びてたと思います。
————光さんについていける感覚は、ありましたか?
最初は、全然です。
「ついていく」なんて言葉、使うのもおこがましい。
でも、ある時から変わりました。
光さんが何か言い出しても、「来たな」って思える。
遥さんが翻訳する前に、「この辺だろうな」って選択肢が浮かぶ。
完全に同じ景色は見えなくても、“どこに行こうとしているか”は、分かるようになってきた。
あれは……初めて、「同じステージに立ってる」って思えた瞬間でした。
————ライブで演奏する際、意識していたことはありますか?
“光さんなら、何が起きても即興で何とかしてくれる”
……それは共演したみんなが一度は思うことだし、多分事実だったとも思います。
でも、そこに甘えないようにしようっていうのは、バンドメンバー全員でずっと言い合ってました。
油断すると、彼が背負うものが、また一つ増えてしまう。
マリさんからも「光は、なるべく自由に飛ばせてあげたい」って、よく言われてましたね。
光さんを自由にしたときの、あの輝きは、チームのみんなで“背負わせすぎない”ようにしていたからこそ、生まれていたものだと思います。
————振り返ってみて、光バンドでの時間はどんなものでしたか?
人生の中では、本当に短い期間でした。でも……なんだか、文化祭みたいでしたね。
全員が必死で、全員が本気で、全員が「今が一番楽しい」って思ってた。
大変で、眠くて、余裕なんてなくて。
それでも、あんなに楽しかった時間は、他にないと思います。
光バンドの一員でいられたことは、本当に幸運だったし、今でも誇りに思っています。
……ほんっとーーーに大変でしたけどね。(笑)




