玲とひまり、初めての夜
2人きりの部屋、止まらない鼓動。
縮まりに縮まった2人の幸せな夜がこれから始まる。
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「胸の鼓動が止まらない」
玲ちゃんに触れ合ってわかった。
玲ちゃん緊張してる。耳も少し赤くなって。いつもクールな玲ちゃんが、今、私にだけ見せる表情。そんなの見せられたらついイタズラしてみたくなる。
玲がひまりに更に顔を近づけるとひまりは玲の耳元にそっと息を吹きかけた。
ヒャッ!
玲は咄嗟に耳元を隠すとひまりを睨んだ。
だが、らしくない甲高い声を出してしまったせいか、玲の顔は恥ずかしさのあまり赤面していた。
その慌てっぷりが少し面白くて思わず笑いがこぼれる。
「……お前、わざとだろ」
「えへへ、バレた?」
玲はため息をつきながらも、ひまりを改めて部屋に招き入れた。ひまりの手を引く玲の手はあれだけ冷たったのに今では暖かく、ちょっとだけ強く握っていた。
部屋の中はシンプルで無駄がなく、家具や壁紙もモノトーンで統一されていた。部屋の匂いも清潔感漂うほんとにいつもの玲らしい雰囲気。
ひまりはクッションソファにぽふんと座り、「玲ちゃんの部屋、落ち着くねぇ」と嬉しそうに微笑んだ。
「シャワー、先に入るか?」
玲はタオルとひまりの着替え用に普段来ているシャツとズボンを持って尋ねた。
「うんっ!玲ちゃんのシャンプー、どんな香りかな~」
「…やめろ…別に普通のやつだよ。」
それから少し時間がたって、湯気を纏ってひまりが部屋に入ってきた。
玲が貸したシャツを着たひまりにはやはり大きかったようでちょっとだけ裾が余っていた。だが、何故かそんなひまりに少し興奮した。
お風呂から上がったひまりのふわふわの髪がいつもよりしっとりしていて、頬も少し赤くなっていた。
玲はその姿に思わず目をそらしながら、「風邪引くなよ」と言ってドライヤーを手に取った。
「玲ちゃん、乾かしてくれるの?」
「黙って座れ」
子犬のように喜ぶひまりを黙って膝の上に座らせた。いつもはおしゃべりなひまりが、玲の膝の間に座ってじっとしている。
玲の指が髪を梳くたびに、ひまりの身体がわずかに震えているのがわかった。
「……玲ちゃん」
「ん?」
ひまりがゆっくりと振り向く。耳先と頬が少しだけ赤らんでいて、潤んだ瞳で見つめられて、玲の喉が少しだけ鳴る。
「今日……泊まってもいい?」
「もう泊まる気満々だろ」
「……うん。でも、違うの。玲ちゃんの隣で……寝たいの」
玲は一瞬、言葉を失った。
ひまりの声はふわふわしているのに、どこか芯があった。
だが、一応確認しなければならない。抑えられる気がしないから…。
「……俺が、止まらなくなったら?」
「止めないよ?」
ひまりの答えは、予想以上にあっさりしていた。
けれど、その頬がより真っ赤に染まり少しだけ唇を噛み締めているのを見て、玲は確信した。
(こいつ、本気だ)
玲はゆっくりとひまりの顎を持ち上げた。
「後悔するなよ」
「玲ちゃんとなら、後悔なんてするわけないよ」
ひまりの声が震えるのを感じながら、玲はゆっくりと唇を重ねた――。
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「玲とひまり、求め合う夜」
部屋の灯りは落とされ、カーテンの隙間から街の光がぼんやりと差し込んでいる。
玲の部屋は静かで、時計の針の音すら聞こえそうなほどだった。
けれど、ひまりの鼓動だけがやけにうるさく感じる。
玲に唇を重ねられた瞬間から、頭の中がふわふわして、まるで夢の中にいるようだった。
「……ひまり」
玲の低く甘い声が耳元で囁く。
名前を呼ばれるだけで、全身が熱くなる。
心臓が今にも弾けそうなほど、鼓動が早い。
「ん……玲、ちゃん……」
ベッドに押し倒され、玲の顔がすぐそばにある。
暗くてよく見えないはずなのに今ははっきり分かる。
いつもクールなその瞳は、今は少しだけ熱を帯びていて、まるで獲物を逃がさないように見つめているようだった。
「もう離さない」
その言葉に、ひまりの身体が小さく震える。
心のどこかでずっと待っていた瞬間だった。
玲の指がそっと髪を梳きながら、耳を少しだけ触り、そのまま優しく頬を撫でる。全てに玲の温かさとひまりへの気持ちが伝わる。
そしてもう一度、唇が重なった。
最初はそっと触れるだけのキスだったのに、次第に玲の求める気持ちが強くなり、深くなる。
深く絡み合うのが段々長くなり、少し息がしずらかったが、ずっと続けばいいと思っていた。
玲の触れるその熱に戸惑いながらも、ひまりは、玲の背中に腕を回し、しがみつくように抱きしめた。
「……玲ちゃん、すき……」
「俺も」
玲の声はいつもよりかすれていて、感情が滲んでいた。
また唇に熱が伝わる。激しいはずなのに優しい不思議なキス。でも、受け身のままではいたくないな。
ひまりが甘えるように玲に顔を埋めると、玲はくすっと笑って、さらに強く抱きしめた。
何かに触れたのか、更に勢いが増していった。
触れ合うたびに、互いの心がひとつになっていくのを感じる。気持ちいいところがどんどんバレていく。
必然と、声が漏れる。
だけど、玲ちゃんになら聞かれてもいいかな…。
この夜が終わらなければいいのに――そんなことを、ひまりはぼんやりと考えていた。
「俺のものになれ」
玲はそう言うと同時にネクタイを緩めながら、ひまりのシャツのボタンを丁寧に外していく。
ひまりも玲の服を脱がす。
そして、準備が整うと玲はひまりに重なるように抱きしめ、ひまりもそっと目を閉じた。
2人の長い幸せな夜はこれからである。
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