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クールな彼女とふわふわな彼女

玲は退屈な日々を生き、ひまりは小さな幸せの中にいた。


そんな2人が、まるで正反対の人生を歩んでいた2人が、ある日出会う――。


そこから始まる、ゆるやかで温かく、時に激しい恋の物語。


「あのとき出会わなかったら、私は今も退屈な日々を生きていたかもしれない」


「あのとき出会わなかったら、私は今も同じ日常を繰り返していたかもしれない」


2人の人生は、出会いによって変わり始める。

クールな彼女とゆるふわな彼女の恋が今始まる。


「それまでの違った2人の人生」


---


何も変わらない日常。今日も都会には人が溢れかえる。温暖化だとか、過密とか関係なく。毎回毎回どうしてこうも人が溢れかえるのだろうか、しかも昨日とは違うメンツ。これで世界的に見ればこの国は人口は少ない方なのだから驚きだ…。


都会の喧騒の中、そんなことを思いつつ、玲はいつものように仕事をこなしていた。


昼間はクールなキャリアウーマンとして部下たちを指導し、夜は一人静かにコーヒーを飲む。もちろん、甘いやつは苦手だからブラックで。


日々は淡々と過ぎていく。


「玲さん、まだ仕事なさってたんですか?」


部下のひとりが心配そうに声をかけてくるが、玲は軽く視線を向け、またパソコンと向かい合う。


そうか…今日は社長から残業のし過ぎだから昼にあがれって言われてたっけ…。


「仕事が片付かないと落ち着かないからな」


時間はとうに12時を超え、ちょうど休憩に入るところだった。


そして彼女にはそう答えたが、実際のところ仕事にのめり込む理由は他にあった。


何かをしていないと、空虚さに飲み込まれそうになるから。夢とかやりたい事とか特に最後まで持たずに生きてきた結果がこれだった。


でも悲しいことに、一応それなりに稼げる一流企業に就職できて、この歳で周りと比べると資産は多い方だろう。だから特に不幸でもない。だが、特別に幸せなわけでもない。

そんなつまらないことを思いながら作業を続けた。


「……まぁ、こんなもんか」


ふと、時計を見ると、時刻は17時をすぎていた。定時で帰る人と結局同じ時間まで働いてしまった。

玲は目頭を軽く抑えると、軽くため息をつき、パソコンを閉じて椅子にかけていたスーツを手に取った。


今の時間は、一人でいつのも喫茶に行くか、それともコンビニで缶コーヒーを買って早く帰るか。


腕時計を見ながら溢れる人混みの中を進む。今朝と違い学生が多いような気がしたが、それでもうるさいことには変わり無かった。


だが、そんなある日、変わらない日常の中に、まさか自分の人生を変える存在が現れるとは思いもしなかった。



---



「うーん、今日のカフェラテも美味しい……これは完璧に新鮮な味っ!豆よくわかんないけどね」


お気に入りの小さなカフェの片隅で、ひまりはふわふわのクッションに身を預けながら、幸せそうに微笑んでいた。


ふわふわに整えた髪に、ふわふわのスカートに、ふわふわの気分。


特に大きな夢があるわけでもなく、ただ日々の小さな幸せを大切に生きていた。


友達とおしゃべりをしたり、お気に入りのカフェでのんびり過ごしたり、好きなスイーツを食べたり――。


そんな日々がひまりにとっての"幸せ"だった。


「でも、たまには……何か新しいことしてみようかなぁ」


漠然とそんなことを思う。


どこか遠くへ旅行するとか、新しい趣味を始めるとか……新しい出会いなんかもあったりして!


そんなことを考えながら、ふと目を上げると、カフェの窓の外にクールな雰囲気の女性が歩いているのが見えた。


凛とした雰囲気、どこか疲れているような、けれど強い意志を持った瞳。スーツ姿がよく似合い、モデルのような綺麗な姿勢で歩くその女性に視線が一瞬で釘付けになった。


「……なんか、かっこいい人、あれが大人の人って事なのかな…?」


ひまりは知らなかった。


このとき偶然目にしたその人こそが、自分の人生を大きく変えることになる人だということを――。



---



「雨とカフェラテと、君の笑顔」


ある日の帰りの出来事、急に冷たい雨が降った。秋が冬に変わる頃の雨だ、体に響いた。


玲は急遽、仕事帰りに雨宿りのため、いつものカフェに立ち寄った。


傘を持っていたのに、強く吹きつける風のせいでコートの肩口が少し濡れている。


「ブラックコーヒーを」


カウンターで短く注文し、いつもの窓際の席に腰を下ろす。


店内は静かで、雨音だけが響いている。いつも感じてた都会とはまるで正反対だった。玲は少しだけその静けさに浸りながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた。


そこへ、カラン、と扉を開く音。


「わっ、さ、寒い……!」


ふわふわの髪を揺らしながら、小さな影が店内に駆け込んできた。


玲は思わず視線を向ける。静かだったカフェに音が響く。


傘を忘れてしまったのか、女の子は全身びしょ濡れだった。


「すみません、タオルとか……ありますか?」


カフェの店員にそう聞くその姿は、どこかふわふわとした雰囲気を持っていて、玲は無意識にため息をついた。


(なんでこんな無防備なやつが、こんな雨の日に傘も持たずに歩いてるんだ……)


考えるよりも先に、玲の手は動いていた。


「使え」


「えっ?」


差し出されたハンカチを見て、びしょ濡れの女の子――ひまりは、驚いたように目を丸くする。


「いいんですか!? ありがとうございます~!」


ぱっと花が咲いたような笑顔。動作から表情までその女の子は騒がしかった。


玲はその笑顔を見て、一瞬視線をそらした。


(……こういうタイプ、苦手なんだけどな)


しかし、いつも感じていた感覚とはなんか違う、うまく説明できないが何かが気になってしまう。


何度も感謝しながら全身を拭く彼女を横目にブラックコーヒーを口に運んだ。

---


「悪くない味」



「お礼に、カフェラテ頼んであげますね!」


静かだった耳元に声が響いた。

濡れた服を拭き終わったひまりがいつの間にか隣の席に座り、勝手に店員にオーダーする。


困惑した。何だこの子は…?それにカフェオレは好きじゃない…


「いらない」


「え~、飲んでみてくださいよ! ブラックばっかりじゃ、人生つまんないですよ?」


玲は反論する気にもなれず、呆れた顔でため息をひとつ着くと、差し出されたカフェラテを仕方なく一口飲む。


「……意外と悪くない」


ひまりが満面の笑みで「でしょ!」と笑う。


確かにカフェオレは好きじゃないんだが…何故だろうこの時の味はそう思った。

そして玲は、そんなひまりの笑顔を見て、なんとなく悪くないと思ってしまった。


それから、玲は時々カフェラテを頼むようになった。


そんな些細な変化が、二人の距離を縮めるきっかけになった。



---


「カフェ仲間への道」


ある日、玲がいつもの席に座っていると、ひまりが「また会いましたね~!」と無邪気に話しかけてきた。


「玲ちゃん、もしかしてこのカフェ、常連さんですか?」


「……別に」


「私は最近よく来るんですよ~! ここ、落ち着くし、店員さんも優しいし!」


「そうか」


玲は適当に返しながらも、ひまりがすぐ隣の席に座ったことに少し戸惑う。


(この子……結構距離感近いな)


そんな玲の心境をよそに、ひまりは楽しそうに話し続ける。


「玲ちゃんって、いつもブラックコーヒーですよね。やっぱり苦いのが好きなんですか?」


「……苦くないと落ち着かない」


本当は眠気を覚ますために飲んでたらこれしか飲めなくなった…って言う必要は無いか。


「えぇ~、でもたまには甘いのもいいですよ? カフェラテ、また飲みません?」


「……別に」


「じゃあ、私が頼んであげますね!」


「勝手に決めるな」


それでも、玲はその日、またカフェラテを頼んだ。

笑顔で話しかけるひまりを見ながら飲むカフェオレはやはりちょっと苦手だった。だけど、静かだったカフェが段々と騒がしくなったことに気づかないくらいにはその時間は楽しかった。


---


「変わらないカフェの風景」


そんなやりとりを繰り返しながら、玲とひまりはいつの間にか「カフェ仲間」となっていた。


玲が先にカフェにいると、後からひまりがやってくる。


ひまりが先にいると、玲も何となくそこに座る。


「玲ちゃん、今日もカフェラテ?」


「……ああ」


「えへへ、ブラックじゃない玲ちゃんは、なんだか私の勝ちって感じがします!」


「バカか」


ひまりがいる時にブラック頼んだらどうせカフェオレにされるからだよ…とはさすがに言わなかった。


そんな、何気ない時間が続いていく。


玲にとって、このカフェは静かにコーヒーを飲む場所だった。


だけど、今ではふわふわしたひまりが隣にいて、くだらない話を聞かされる場所になっている。


(……悪くない)


玲はカフェラテを一口飲みながら、そう思うのだった。

このときの玲は自然と口角が上がっているのに気づかなかった。そして、カフェオレの味に慣れているということも。




---

「雨の日の約束」


そして、また雨の日。


ひまりは傘を忘れ、玲の隣の席に濡れたまま座り込んだ。


「また傘、忘れたのか」


「えへへ……」


玲は小さくため息をつきながら、自分の傘を差し出す。


「……帰り、一緒に行くぞ」


「えっ、いいんですか?」


「どうせまたびしょ濡れになるんだろ」


ひまりは、ぱっと笑顔を咲かせた。


「玲ちゃん、優しい~!」


玲は、少し顔を背けながらつぶやく。


「……バカか」


こうして、2人は仲良く帰り道を歩いた。時々、強引に中に入ろうとするひまりにオ押され玲の肩が濡れた。

だが、そんなことに気にしながらも、すっかり都会の騒音を気にする事は無くなった。






話に出てくる2人のキャラ設定をまとめてみました。良かったらどうぞ。

キャラ設定

かっこいい系のお姉さん(クールで頼れる)

名前:如月きさらぎ れい

年齢:24歳

身長:170cm

性格:

クールで落ち着いているが、面倒見がよく優しい

基本的に感情をあまり表に出さないが、好きな人には甘くなる

仕事もプライベートも完璧にこなす頼れるタイプ

コーヒーはブラックである


見た目:

黒髪ロングストレート 、時々ポニーテールをすることがある

切れ長の目+メイクはシンプルで洗練された雰囲気

黒系やモノトーンの服を好む(パンツスタイルやジャケットが多めだが、基本はスーツ姿が多い)


職業:一応、一流企業の中間管理職。仕事の貢献度が凄まじいため昇格が止まらない、キャリアウーマン。


ゆるふわ可愛い系の子(天真爛漫&癒し系)

名前:春野 ひまり(はるの ひまり)

年齢:20歳

身長:155cm


性格:

天然でマイペース、ふわふわした雰囲気

いつもニコニコしていて、人懐っこい

玲のことが大好きで、よく甘える

気づいたらカフェオレを飲んでる


見た目:

ふわふわのセミロング かボブ(明るめの茶髪 or ピンク系が多い。)

ぱっちりとした丸い目+ゆるめの前髪

ゆるっとしたワンピースやカーディガンをよく着る


職業/立場:大学生 で時々カフェ店員のバイトをしている(ほんわかした雰囲気に合う)


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