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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

別の世界ではただの日常です

廃品回収車

作者: 茅野榛人

「こちらは、廃品回収車でございます。ご家庭にございます、ご不要になった家電製品や家具を、全て回収致します。大きなもの、小さなものでも、構いません。分からない事がおありでしたら、お気軽にご相談下さいませ」

 新居に引っ越してから、初めて聞く廃品回収車のアナウンスだ。


「こちらは、廃品回収車です。ご家庭にございます、ご不要になった時計や洗濯機等の家電製品や家具を、全て回収致します。大きなもの、小さなもの、破損しているものでも、構いません。分からないことがおありでしたら、お気軽にご相談下さいませ」

 昨日と同じ廃品回収車のアナウンスに思えたが、少しだけ違う。

 昨日は言っていなかった、『時計や洗濯機等の』と言う言葉が入っている。

 何故変えたのだろうか……。

 

 翌日、起きて驚愕した。

 家に設置してあった時計と洗濯機が盗まれてしまったのだ。

 ただ、時計と洗濯機と言う組み合わせに、どこか聞き覚えがあるような気がした。

 そうだ……昨日の廃品回収車のアナウンスだ……。

 しかし僕は偶然だと思い、警察に盗難届を出した。


「こちらは、廃品回収車でございます。ご家庭にございます、ご不要になった扇風機や箪笥等の家電製品や家具を、全て回収致します。大きなもの、小さなもの、破損しているものでも、構いません。分からない事がおありでしたら、お気軽にご相談下さいませ」

 また聞こえてきた。

 最近やたらと僕の家の近くを廃品回収車が走る。

 更にアナウンスの一部がまた変わっている。


 翌日、また盗まれた。

 今度は箪笥だ。

 しかし箪笥と聞いて、僕は思い出した。

 昨日の廃品回収車のアナウンスで、箪笥と言っていた……。

 しかし昨日のアナウンスでは箪笥の他にもう一つ、扇風機も言っていた。

 家にはエアーコンディショナーが設置されているので、扇風機は襖の奥にしまってあるのだが……。

 念の為、扇風機を確認しようと襖を開けると、扇風機だけ盗まれていた。

 不気味だった。

 襖には扇風機だけが入っているという訳では無いのだ。

 扇風機を取り出す為には、扇風機の周りにある物を全て取り出す必要がある。

 しかし動かされたり、荒らされた痕跡は一切無かった。

 綺麗に扇風機だけ、消え失せていた。

 不気味と言えば、廃品回収車のアナウンスで言っていた家電製品が盗まれていると言う事実も気になる。

 最初は偶然だと思ったが、二回連続で起こると、流石に気になって来る。

 この後、また廃品回収車が来るのだろうか……。


「こちらは、廃品回収車でございます。ご家庭にございます、ご不要になったテレビやテーブル等の家電製品や家具を、全て回収致します。大きなもの、小さなもの、破損しているものでも、構いません。分からない事がおありでしたら、お気軽にご相談下さいませ」

 また来た……。

 何故アナウンスを変えるのだろうか……。

 今度はしっかりと戸締りをしよう。


 翌日……防犯対策も空しく、家に置いてあったテレビとテーブルが盗まれた。

 しかしこれではっきりした。

 廃品回収車のアナウンスで言っている家電製品が、盗まれると言うルールだ。

 今度は寝る時にカメラを仕掛けよう。

 恐らくこの後、廃品回収車が来る。


「こちらは、廃品回収車でございます。ご家庭にございます、ご不要になった空気清浄機やソファ等の家電製品や家具を、全て回収致します。大きなもの、小さなもの、破損しているものでも、構いません。分からない事がおありでしたら、お気軽にご相談下さいませ」

 やはり来た。

 内心喜んだ。

 空気清浄機は前の家で長年使用しており、調子が悪く、ソファも長年使用しており、ボロボロになり、そろそろ買い替えようかと考えていた為、囮に使うには丁度良いと思ったのだ。

 僕は空気清浄機とソファを映すように、暗所でも撮影が可能なカメラをセットし、寝る前に録画を始めることにした。


 翌日、空気清浄機とソファが盗まれた。

 カメラを確認すると、録画は成功していた。

 録画を止めて、映像を確認した。

 しかし深夜帯には一切動きが無かった。

 時間を進め、部屋が明るくなるも、まだ動きが無い。

 もう少しで今日の起床時間だ。

 一体どう言う事なのだろうか……。

 そう思っていた時だった。

 突然、画面に動きがあった。

 空気清浄機とソファがバラバラに分解され、空中に浮き、廊下に向かい始めたのだ。

 玄関扉の開く音と、突風が吹いているような音と、微かに誰かの声のような音が聞こえ、部品が全て飛んで行った後、玄関扉の閉まる音が聞こえた。

 今日は殆ど風が吹いていないのに、どうして突風の音が……。

 この出来事は、僕が起床するたった一分前に起きた出来事だった。

 映像に映っていた光景は、合成でない限り有り得ない光景だ。

 しかし映像を調べてみても、合成を施した痕跡は無かったのだ。

 ただ気になった所があった。

 突風の音に紛れて微かに聞こえている声のような音だ。

 耳を澄ませて良く聞いてみても、言葉を聞き取る事は出来なかった。

 まるで、まだ誰も聞いたことの無い言語を喋っているような、そんな風に聞こえる。

 犯人は……一体何者なのだ……。


「こちらは、廃品回収車でございます。ご家庭にございます、ご不要になった加湿器やベッド等の家電製品や家具を、全て回収致します。大きなもの、小さなもの、破損しているものでも、構いません。分からない事がおありでしたら、お気軽にご相談下さいませ」

 今度こそ……真相を突き止めてやる……。


 翌日の午前四時、僕は廊下で待機をした。

 待機をしてから一時間半が経過した頃、事は起きた。

 加湿器とベッドの部品がこちらに迫って来る。

 僕はその部品を一つだけ掴んだのだが、引っ張られる力が物凄く強く、直ぐに手から離れてしまった。

 部品は玄関の方に飛んで行った。

 玄関扉が開くと、その先には自分の知っている光景では無い、謎の光景が広がっており、突風の音が大音量で耳に届いた。

 僕は恐怖よりも、好奇心が勝り、飛んでくる部品が体を傷つけながらも、玄関の先に広がっている世界に飛び込んだ。


「しかし本当に大丈夫か?」

「大丈夫大丈夫、だってバレてないもん」

「うわー!」

「あー! やば!」

「おい何やってんだよ! 住民入って来ちゃったよ!」

「や……やべ……と……取り敢えず……縛ろう」

「はあ……だからあの家だけに、廃品回収車のアナウンスを流して、盗むものを予告するのには反対だったんだ!」

「ごめん……ついスリル味わいたくってさ……」

「もう……どうするんだよ……」

「こっちの星の世界を見られた以上……殺すしかない……」

「はあ……」

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