君の視線
目は口ほどに物を言う
教室で意中の君を追う
遠慮はない
遠慮無く追える理由は残念だ、君と視線が合うことは無いからだ
君に意識されていないのが分かるので辛いような、目で追えるのが嬉しいような
いつから好きだったは分からないけど、意識したのは最近だ
一度自分の気持ちに気がついてしまえば、気になってしかたがない
些細なことに一喜一憂してしまう
振り向いてもらうために何が必要か考えてしまう
いつもと同じなのに教室が明るくも綺麗にもみえてしまう
一緒の教室にいるというだけで、鼓動が早くなる
これが恋なんだなぁ、と
鼓動が早くなる感情とは別に、頭の片隅で妙に冷静に自分をみている気もする
わたしの中身はくちゃくちゃだ
整理されていない自分の部屋や鞄の中身と一緒だ
それでもはじめての恋はどうしようもなく心地良く
君に振り向いてもらえるかという不安にも同時にさいなまれた
目は口ほどに物を言う
追いかける視線に他のみんなが気がつくことはない
気配が消せるという訳ではない
最近、幸運なことに席替えで窓際、一番後ろになったからだ
日焼けに悩むところかもしれないが、恋の前には些細な事、というか日焼けという考えてすら浮かんですら来なかった
でもこの席替えは幸運じゃなかった
君の視線に気がついたからだ
プリントを後ろに回す度
君が振り返る度に
君の視線に
気がついてしまった
君はいつも時計回りに振り返る
右利きだから?
そうじゃない
わたしとは反対側、廊下側の後ろの席をみるためだ
そこにいるのはきっと君の意中の彼女
恋に気がついた時とは違うけれど同じように胸が締め付けられた
呼吸が浅い気がする
落ち着けわたし
呼吸を整えろ
深く吐けば、深く空気が入ってくるんだ
数十秒前に恋敵に勝手に認定された彼女を観察することにする
クラスメイとの彼女はかわいくて綺麗で、それなりに社交的で、話せば面白い
敵をつくらないタイプで普通の女の子だ
わたしからみてもイイコだ
恋敵としては十二分にツヨイ
だが、まだだ、恋は始まったばかりで何も進んではいないんだ
諦める時間帯じゃない
そして再度気がついた
彼女も君をみてる
何回も
君に気がつかれないように
その表情はきっと君をみるときのわたしと一緒だ
君の視線と彼女の視線は絡まない
君が振り返る度に、彼女が視線をふせるから
絡まないけれど気がつかないけれど
視線が交差している事実に胸が苦しんだ
目は口ほどに物を言うのだ
君の目が
彼女の目が
恋を語っていた
ちぇ!教えてなんかやらないんだから
教室に吹き込んだ風が窓際のカーテンを巻き上げて
わたしの視線を遮った