夢の、痕跡。
しっとりと濡れているーー枕元。
乾いた空気と、溢れる咳。
「げほっげほっ」
思わず口を両手で塞いだ。
舌先に覚えた仄かな苦味の正体とともに。
たぶん、気づかぬうちに噛んでしまっていたのだろう。
拭った手の甲には、うっすらと滲む、不透明な朱色。
喉の奥が怯え、ひりひりとした。
辺りを見渡してはおもむろに掴んだペットボトル。
ごっきゅ、ごっきゅ、ごっきゅ、ごくん。
ぷはーーー。
思い出したくもないし、思い出せやしない。
鏡の前に立ち尽くし、目の下の隈が酷かった。