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-Prologue-

 何故、ここに居るのだろう?

 どうして、俺はここでこうして、動けないのだろう。

 体が熱い。必死に動かそうとしても、力が入らない。


 ここは、どこだったのだろうか。

 違う、ここは俺が大好きな世界。

 家も、外も、ほんの少し遠くの学校も、大好きな……大好きな……。


 声がする。どこからともなく、声が聞こえる。

 知っている声だ。確か、ずっと一緒に遊んでいた子の声。でも、揺らめく火のずっとずっと向こう側から聞こえるような気がする。

 燃える世界。燃え尽きて行く世界。そこから発せられる狂気の叫びが、俺を飲み込む前に、嘲笑うために聞かせた幻聴なのかも知れない。

 そんな風に思っていると、目の前の瓦礫を壊して大人が飛び込んで来る。俺の体を拾い上げて、火の手が回り切る前に自らが抉じ開けた出口へと走る。そうして俺は、炎の中から、黒煙と青空という、非常に色合いとしては美しくない外へと、助け出された。

 大丈夫か? という声がする。俺は咳き込みながら、自分でも驚くほどに空気を吸い込めない喉から、小さく、なにかを呟く。けれど大人はそれを聞き取ることは出来なかったらしく、担架に乗せられて、救急車で病院へと運ばれた。



『ねぇ、ノスタリアさ……じゃなかった。ノスタ君? 聞こえているかな?』

「……はい。聞こえていますが」

『嘘。さっきの話、ちゃんと聞いていたとは思えない』

「……すみません、少し……思い出したくもないことを、思い出していました」

『私たちのギルドでの初めての『ヘクス争奪戦』だから、緊張しているのかな』

「そういうわけじゃないんですが」

 真っ赤な、真っ赤な火が俺を包み込むような、そんな感覚に陥っていた。過去に囚われているからだろうか。それとも、“この世界”で、現実と相違ないほどに燃え盛る炎を目にしてしまったからだろうか。

『だから言ったんすよ。初心者を初っ端に『ヘクス争奪戦』に放り込むのは無茶だって』

『言っても、今回の『ヘクス争奪戦』の前提条件はArmorをエースとして、一機放り込むことだから仕方無いっちゃ仕方無いだろうさ』

『それでなんで初心者を入れる必要があるの? ギルドメンバーの誰かをArmorに乗せれば安定すると思うのに』


『まぁまぁ、みんなそう初心者に厳しく言わない』


『初心者に一番厳しいのはファニポケさんっしょ? さっきも言ったっすけど、初心者はまず対人戦やミッションでこのゲームに色々と慣れないと駄目なんすよ。なのに『ヘクス争奪戦』って。鬼っすか?』

『今回はヤバいのが二人。辛うじて一人、出ていないだけマシなんだけどな』

『それでも、こっちが背負うリスクの方が大きいわ。でも、ギルドマスターのファニポケさんの人選だし、文句は言うだけで、あとはなるようになれって感じだけどね』


『やってくれると思うんだよね、この子。最初に付き添って幾つか初心者用のミッションを受けて、機体の動きを遠くから眺めていたんだけど、そこに光る物があったから』


『期待の新人、ってやつっすか?』

『そんだけ言わせるのなら、僕たちも見ることにしよう。まぁ、ともあれこれはゲームだから、楽しむことを一番に考えて行こう』

『アンタがそれを言っても、誰も付いて行かないから』


『では、明るく楽しく、戦場で機体をボッコボコに、或いはボッコボコにされに行きましょうか』


 そんな風に気楽に物事を言い合えるのは、“この世界”が一定のルールに則って作り上げられているゲームだから。


 『Armor Knight』。俺たちプレイヤーは自身がゲームによって与えられた機体に武装を載せて、戦い合う。

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