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第1話:希望の舟 1/6

1話から改稿中。

  〔どこかの研究室〕


 灰色の金属の壁に、中央に空いたガラス窓。その先には羊がいた。


「羊くん。こんにちは。いないいないBaaa!」


 白衣を着た男が、両手両足を縛られ大の字に張り付けられた羊をガラス越しにのぞき込んだ。すると羊が返事をするように口を大きく開けて「メェーッ!」と力強く鳴いた。


「よし、いいぞ。足枷を外してみよう」


 男は張り切った様子で目の前のコンソールに手を伸ばしたが、その手は何者かにさえぎられた。


「まだ早いのでは」


 手をたどり、目線をあげると、そこには白衣を着た銀髪に赤い目をもつ女がおり、腕を掴んでいる。


「そんな悠長なことしてられるか。早くしないとこいつ、進化しちまうよ」


 男は指を一本ずつ力ずくでほどき、コンソールのボタンを押した。ガラスの向こうで足枷が外れた。台から滑り落ちた羊は、のそりと二本足で立ち上がる。


「もちろん胃のクリスタルは抜いてある。レーザーは撃てない!」


 男は大げさな身振りを交えながら大層嬉しそうに笑った。


「あれは地球にいた羊とは違うの。シープよ? あなたはシープをなんだと思っているの?」


「羊だよ」


 男のふざけた答えにため息をつく女。


「私は先に帰るわ」


「ご自由に、これからが最高だってのに」


 女は男の脇を抜けて足早に部屋を出ていった。


「残念。なあ、羊くん」


 自動ドアがスライドして閉まるのを見届けた男が振り返り、シープに問いかけた。


 ガラスのむこうで首をかしげて「メェ」と一鳴き。おもむろに口を開けた。


 開いた口から見える喉の奥がオレンジ色の光おびはじめた。シープという生き物は体内に持つクリスタルによってレーザーを撃てるのだ。


「奴を撃て!」


 男がシープを指して叫んだ。ドアの横で待機していた警備員が走り寄るなり、機関銃を構えてシープを撃った。


 警備員とシープ。1人と1匹の間を挟む強化ガラスが(あだ)となり、威力の落ちた弾丸は弾力ある皮膚を貫通できなかった。


 男は警備員がシープに気を取られている背後で、我先にとドアに駆け寄り、ドアを開けようと奮闘していた。しかし、ドアは押そうが引こうが開かない。


「あいつ、鍵かけたな!」


 男が舌打ちした。背後で警備員の悲鳴が聞こえた。振り返るとガラスの向こうで口をひらいたシープ、喉が激しく発光、眩しさに目を瞑った。


 凄まじい轟音がして男は壁際に吹き飛ばされた。目を開けるとあれほど綺麗だった研究室は見る影もなかった。焼けた機材が火花を散らし、部屋には煙が充満している。


 煙の向こうから歩み寄る影。


 男は警備員かと思ったが、手前に佇む焦げた肉の匂いをだす下半身だけの死体を見て

 影の正体を知り、恐怖を覚えた。


「違うんだ。僕は!僕は君と仲良くなりたいんだ!」


 男はありきたりな命乞いをしながら腰を抜かし、手を使って後ずさる。


 煙の中から姿を現したシープは割れた強化ガラスの窓から抜け出して男に詰め寄り首をかしげる。


 男は床に落ちていたメスを取り、顎元に突き当てた。


「ハハッ!引っかかった〜!」


 バカにしたように笑う男。メスを手離した瞬間、皮膚の弾力で飛んでいった。唖然とする男。


「なんだよ、切れないのか。電気メスを使うべきだった」


 男が諦めたように笑うと、シープは首をかしげて毛に覆われた背中をぱっくりと開く。そこには第二の口があった。


 口内から七本の触手が伸びて、鋭い先端が男を向いた。そしてお返しと言わんばかりに触手を前後させて滅多刺しにする。


 散らばる肉片。原型をとどめないほどグチャグチャにすると、シープは空を向いて雄叫びを上げた。



 そのころ、全面白一色の清潔感ある通路を歩いていた女は、通路に反響する鳴き声を聞いて笑った。そして白衣のポケットから取り出したリモコンを操作。


 通路に隔壁をおろした。

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