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彼と彼

作者: 八久斗

「……勝負あったな」

短刀を突き付けた男が呟いた。

その声には、何の感情もこもってはいない。

ただただ、機械的な言動。


「……名を……聞こうか……」

突き付けられた側の男が呟いた。

その声には、微塵の怯えも悲しみも含まれてはいない。

諦観か達観か、男はじっと相手を見つめていた。



「……第4部隊隊員、キルト」

相手の命を握った男はそう言った。

彼はこの街の治安維持部隊の人間だった。

凶悪犯を討伐するのが、2年前に任ぜられた彼の仕事だった。


「……キルト、か……その名前、胸に刻んでおこう……」

命を握られた男はそう言った。

彼はこの町を震撼させている連続殺人犯だった。

毎日1人を殺すのが、2週間前から彼の仕事になっていた。



「……他に言い残すことはあるか……?」

路地裏での乱闘を制した男はそう訊いた。

被害者の中に、彼の知り合いは1人として存在しなかった。

だから、これは復讐でもなんでもなく、仕事の一環に過ぎなかった。


「……いや、何も」

追い込まれた男はそう答えた。

彼は今日、人を殺す現場を目撃された。

少々運が悪かったなと、彼は溜息をつき、ゆっくりと眼を瞑った。



小さな、低い、断末魔が、漏れた。



「……」

相手を切り殺した男は何も言わなかった。

刃先からは、血が滴り落ちていた。

衣服は返り血で真っ赤に染まっていた。


「……」

切り殺された男は何も言えなかった。

その目は、大きく見開かれていた。

衣服は自らの血で真っ赤に染まっていた。



生き残った男は死体を担ぎ上げた。

既に生きていない男の体は人目の付かないところへと運ばれていった。





翌日、男の死体が発見された。

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― 新着の感想 ―
[一言] もう少し長い話でも良い気がします この話の続きとかできるともう少し読みたいです
[一言] 八久斗さん、はじめまして。 この治安維持部隊の存在っていうのが謎に包まれていますねェ・・・ 最後の部分「翌日、男の死体が発見された」ということだと、彼(キルト)の仕事は“闇”とか“裏”のたぐ…
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