何もかも考えすぎだ
そして、鼻歌を歌いながら夕食の最後の一品を作っていた頃。
コンコン、とあまり響きの良くない扉を叩く音が耳に届いた。
「紅茶~、今行くから待ってて~」
私は紅茶に届く様に返事をし、コンロの火を止めて玄関へと向かった。
ガチャリ、と扉の鍵を開けゆっくりの開いた。
私の視界に紅茶が写り混んだのと同時に、紅茶は口を開いた。
「あ、ごめん。こんな時間にさ…本当ごめんっ!」
「な…何…?そんなに謝ることじゃないから…まぁ、外寒いでしょ?もうすぐ夕飯できるから、入って」
紅茶が予想以上に大きな声だったので、正直少しびっくりしていたが、私は平然と紅茶を家に招き入れた。
ただ、紅茶は何故、こんなにも明るいのだろうか。
家の中に紅茶を招き入れる最中、そう思った。
別に、紅茶は元から明るい性格なので、そう考えること自体おかしいことなのだが、そういうことじゃない。
いつもとは違う明るさを、紅茶は纏っていた。
ただ、何かがおかしいのだ。
その笑顔が一瞬、恐怖だと思える程に。
「…?月見?ぼーっとして、どうかしたの?」
…これ以上考えても紅茶に心配をかけるだけだ。やめよう。
「ううん、特に何も考えてなかっただけ。ごめん、すぐ用意するから」
疑問は増えるばかりだが、待たせるのは悪い。
私ははや歩きでキッチンに向かい、急いで残りの作業をした。
そうだよね、全部私の考えすぎだよね。
紅茶なんだから、何も心配はいらないよ。