転移
テンポ良くたのしい異世界の物語が作りたくて始めた小説ですの>υ<
書きたいシーンから書いているので順番は気にしないでくださいませ
エルダーン歴509年の陸の月七日
その世界に一人の少女が降り立った。
「さて、私を呼んだのは貴方ですか?」
6ヶ月前、ある日の朝。
舞屋 凉太は端末から流れるポップなメロディーと、ポケットの中で振動する目覚まし機能で目を覚ました。
しかしそこに見慣れた天井は無く、子瑠璃のキス顔が視界いっぱいに覆っていた。
「っどぅおぅ!?」「ふみゃっ!!」
凉太は奇声を上げながら跳ね起きた。
妹の子瑠璃を、跡が残らないよう気を付け吹き飛ばしながら。
「おにぃっ!いくらなんでも吹き飛ばすのはなくない!?」
書棚にぶつかってお尻を突き出す形で倒れていた子瑠璃は、がばっと起きて抗議する。ちなみに白色だった。
「いや、寝ている人になにかしようとする方がなくないか?」
「何って、目覚めのキスに決まっているでしょ?」
「それで僕のファーストキスを奪わないで…」
こんな可愛い妹がキスで起こそうとするのを止めようとするなんて…などと不穏な言葉をぶつぶつ呟きながら抗議する子瑠璃に言い返したらきょとんと首をかしげ、当たり前のように言ってくる。
「…もうないのに、ヘンなおにぃ」
「んんんんん!?気のせいかなっ既にファーストなキッスを奪われているように聞こえたのだけど!!?」
「舌も入れて…」
「えぇなにディープなの!?」
「熱烈に抱きしめ合ったのに…」
「うわぁぁああ!!寝てるときになんてことしてたのっ!!?」
「まぁ、嘘ですけど。ところで今日はなにするの?」
「どこまでが嘘なのか教えてっ!!僕の貞操は無事!?」
自分の体を両手で抱きしめくねくねしながらのたまう妹の高度なギャグセンスで凉太は冷や汗をながした。
「じ…冗談は置いといて、そうだなぁ…。今日はもやしの特売日だからそれと、あと卵がお一人様80円になるから二人で買いに行こうか」
そう…実はこの二人、貧乏なのである。ものすごく。
「今すぐ美味しいものを好きなだけ食べられる世界に行きたい…」
「まぁまぁ、転移魔法を使えるようになるまでの辛抱だよ」
この世界では魔法は表に出ておらず、人前で使おうものならすぐに迫害されるのがオチだった。
よって、二人は特売で食いつなぎながらどうにか魔法で転移できないか、壁や床いっぱいに魔法陣を描いて試行錯誤しているのだ。
(――――、―――――!!!)
ふと、凉太は何か聞こえた気がした。
「なぁ子瑠璃、なんか言ったか?」
「ん?おにぃが喋ったんじゃないの?」
特売戦争に向かう支度をしていた凉太と子瑠璃は謎の声に首を傾げて辺りを見回した。
と、その時
パァーーー!!!!
魔法陣が輝き出し、徐々に二人を取り込んでいく。
「「目が…、目がぁぁあっ!!!」」
光が収縮し、元の部屋の状態に戻った時、某大佐の叫びを上げた二人の姿はどこにも見あたらなかった。
この日二人は転移した。
また見てねっ